101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
心が開く瞬間(とき)
原作は連載コミック版を劇場鑑賞後に一気読み。
聴覚障害者といじめ等がテーマと言う本作が京アニに映画化される
と聞いた時から注目していました。
ですが、私は公開直前になって鑑賞に迷いが生じていました。
理由は8月末にネット上などを賑わしたニュース。
日テレ「24時間テレビ」の裏番組にて、NHK教育の障害者バラエティ『バリバラ』が、
"障害者と感動"について討論を展開。
それが「24時間テレビ」は障害者を道具にした
“感動ポルノ”の押し売りと批判する問題提起だと話題に。
元々、特にネット上なんかに根強く存在する、
社会的弱者は美化され、悲劇のヒロイン化され、公金を食いつぶしている……。
そんな濁流も巻き込みながら、ちょっとした突風が巻き起こりました。
自分も「24時間テレビ」は偽善では?と思う程度には歪んでいるので、
障害者を扱うお話は、障害者じゃない自分が
一方的に糾弾される気持ちになるのではないか?
との苦手意識や警戒感を抱きがち。
そんな天邪鬼(あまのじゃく)にとって、
あのニュースは本作鑑賞を逡巡させるのに十分な威力を持っていました。
公開後に目にした、あにこれの熱心なレビュー等に後押しされなければ、
スルーしていたかもしれません。
その点については本当に感謝しています。ありがとうございましたm(_ _)m
で、鑑賞してみたら、上記のためらいなど本当にくだらない杞憂だと、すぐに分かりました。
本作はちょっと健気な障害者を描いてみせて、
感動を巻き起こした気になっている凡作とは次元が違います。
「障害者だからって常に善人だとは限らないだろ?」
「いじめられた奴にだって問題はあるし、いじめた奴にだって言い分はあるさ」
例えばネット上などでこんな風に付け焼き刃でタブーを破った気になっている、
自称評論家の正論など、本作の原作者やスタッフは
ご飯を噛み過ぎて甘味が出るくらい、咀嚼して消化し切っています。
きっかけは聴覚障害者かもしれませんが、
青春時代に起こりがちな、心のささくれとその再生を描いた、
普遍的な価値を有した逸品でした。
連載コミック全7巻を一本の映画({netabare} 129{/netabare}分)にまとめた本作。
鑑賞時、原作未読だった私にも確かに“総集編感”はありましたし、
如何にも群像劇を、主人公視点にしぼった感もありました。
だから私は鑑賞後、原作の電子書籍版をまとめ買いして、
サブキャラの視点を回収したりしました。
ただ、それは劇場版が物足りなかったからではなく、
劇場版は劇場版で主人公の物語としてしっかり感動できたので、
他の登場人物の気持ち何かも、もっと知りたいと思ったから。
むしろ本作の編集には、
これまで数々の劇場版“総集編”を手がけてきた、京都アニメーションの熟練を感じました。
劇場版に尺を圧縮して押し込む場合、
数回に分けて回収していた伏線を一場面に一気に回収したりして、
折り畳んでいくわけですが、
今回の京アニには尺の都合に追われてる感よりセンスを感じました。
強引になりがちな場面のつなぎでも、
京アニ伝統の足芸などを交える余裕を見せてくれて、クスリとしました。
個人的にはマリアちゃんのマスコット感の強調が癒やしでしたw
だから私は劇場版も漫画もお気に入りにしたいと思います♪