東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 2.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
3名のシナリオライターによる協奏曲
内容は、6人の高校生を中心とした異能力バトル。
全ての原作を読めばもっと楽しめるアニメです。
三名のラノベ作家がユニットを組み原作と脚本を担当した珍しい形をとっています。
ただ珍しいだけではなく、アニメのために脚本を書き下ろしているので、ラノベの薄っぺらさはなく、生みの親と育ての親アンノウンに対する相剋を描いたストーリーもしっかりしているし世界観も斬新。
原作の設定はRewrite以上に複雑に込み入ってますけど、アニメ化にあたり1クールの尺に合わせてスリム化し整理したことが功を奏しました。
それぞれの都市にテーマがあり、
東京のテーマは「そんな世界は壊してしまえ」
千葉のテーマは「どうでもいい世界なんて」
神奈川のテーマは「いつか世界を救うために」
多分、3名の作家が都市ごとに分かれて脚本を担当したのでしょう。
このテーマに沿ってキャラが設定されたことで、どのキャラも立っています。
このアニメの進行では、千種霞の淡々とした態度や雰囲気がキーポイント。
妹の千種明日葉にはシスコン対応(本当は明日葉がブラコンですけど)東京のヤンデレ男子朱雀壱弥には憎まれ口を叩きながらも、実力を認めて陰ではサポートをし、物語進行のスパイスとして良い味を出しています。
神奈川の天河舞姫の並み外れた才能と、次席の凛堂ほたるの絆には特別の物語が存在し、東京、千葉とは距離を置いた独特の存在感があります。
最終回で凛堂ほたるが目覚めるまで神奈川の次席が八重垣青生であったことが明らかになり、また、彼女だけはアンノンの夕浪愛離を母親のように慕い討伐を妨害します。
夕浪愛離にとどめを刺した舞姫も最後まで、愛離と過ごした過去の日々を回想しつつ悩んでいた心理描写が上手かったですね。
特に、9話と10話で高校生6名の世界観を反転させたストーリー展開は楽しかった。
死んだと思われていたカナリヤが壱弥の前に姿を現した9話は思わず引き込まれました。
コードによる幻惑が消滅して価値観が入れ替わったような単純な設定にしなかったところは、0か1かでは推し量れない人間心理の妙をしっかと押さえたシナリオである種の悲劇性をもメッセージに込めたことは俊逸だったと思います。
そして、愛離が注いでいた愛情を受けとめてくれた青生の存在に、アンノンの愛離が望んでいた母性愛を感じた瞬間、舞姫に討たれる覚悟が固まったこととも思います。
そして、人間の求得との愛が実った瞬間でもあったんですね。
いろいろ考えてみると、とても俊逸なストーリー構成でした。
そして、舞姫を熱演した悠木碧さん、アンノンの人間愛を演じた愛離役の能登さん、霞役で物語のスパイスを演じた内田さん、ブラコンツンデレ明日葉を演じた安済知佳さん、お見事でした。
LiSAのOP、ClariSのEDもよかったです。
この作品で惜しいのは多くの方々の指摘を受けている、作画。
推測ですけど、3名の脚本を構成するのに相当スケジュールが食ったのではないでしょうか。
作品のクレジットにシリーズ構成がないのは、3名の意思の一致で構成が決まったものと思います。
複数意見の調整は時間もかかります。まして、脚本3名はアニメ制作は初めてでしょうから、制作作業の俯瞰は無理でしょう。
そこから、監督が絵コンテをつくり原画ですから。
大手のA-1 Picturesだからスケジュール圧迫を乗りきったものの、小さいスタジオなら放送に穴を空けかねない、厳しいスケジュールだったのかも。
シリーズ構成を据えればスケジュール管理に余裕ができ作画のクオリティも維持できたかかもしれまんね。
観る価値は十分にある良作です。