ブリキ男 さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
他者との関係を手探りで確かめる夏目と友人達の心が見えた
これまでの1期、2期、3期と、夏目の成長を描くお話が多かった様に思えましたが、4期では夏目の周りにいる人たちの変化する心情にも多くの時間が割かれ、焦点が当てられています。
1話と2話が的場一門に関するお話なので良くない印象を受ける人もいるかも知れません。活劇多め、静司さんの嫌~な言葉もあります。この人の過去についても語られる時が来るのでしょうか? 5期に期待したいと思います。3話からはいつもの夏目友人帳に戻ります。
{netabare}
3話には「不機嫌なモノノケ庵」のモジャのモデルかも知れない妖怪けまり(カルと呼ばれる妖怪だそうな)が登場。4話では儚げな人の恋と、それを見守りいたわる妖怪のこと、5話では夏目の過去のことが描かれます。どれも心温まるお話でした。
6、7話は名取さんと田沼君が活躍するお話。自分と他者との間にあえて距離を置く名取さん、人に近付きたくても近付けなかったレイコさん、この二人とは違う道を歩もうとする夏目の姿が描かれました。夏目が成長して変わっていく様に、名取さんと田沼君も変わっていきます。人との繋がりが深くなるほど、その人の心にどこまで踏み込んでよいのか、悩み、思いを巡らす事も多くなるものです。夏目と田沼君の心情は似ていますが、素直な言葉を持ってそれを確かめようとする田沼君の優しい気持ちが特に強く伝わってくるお話でした。
8話は的場一門の怖~い感じの眼鏡のおばさん、七瀬さんの過去が少しだけ語られる珍しいお話。少女時代のある妖怪とのつらい別れが祓い屋としてのためらいを捨てる決心を作った模様。妖怪に対する冷徹な態度も、彼女の複雑に絡み合った心の一面に過ぎないのかも知れないと考えさせられる一幕でした。
9話と10話は夏目と名取さんと柊のお話。名取さんへの信頼を強めた夏目の迷いを圧して切り出した「一人ではなく二人だったら何とかなるかも知れない」という言葉に動かされ、夏目の心情を汲み行動する名取さんの姿から、この人もまた、人との出会いを通して成長した人の一人と実感。初期では少なからぬ心の隔たりのあった名取さんと夏目ですが、いまや兄と弟の様な間柄、本当に良いコンビになりました。
終幕近くの場面、長らくの間、人や妖怪との強い関わりを避けてきたであろう名取さんの、自身の内に封じていた心の一端を夏目の言葉の中に見出した様な面持ち、懐かしいものを見る様な、大切なものを見る様な、夏目を見る優しげな眼差しが印象的でした。少しずつ変わっていく自分の主と、その傍にいてくれる夏目に対する、柊の思いやり、感謝の気持ちも伝わってくる良いお話でした。
最終3話は主に夏目の過去についてのお話。子供時代の夏目とそれを見る人たちの心の内が痛々しく描かれており、心を締め付けられます。誰にも理解されずひとりぼっちで生きてきた夏目、遠い日のお父さんとの記憶を心の支えに生きている様な、子供時代のけなげな夏目の姿に泣きそうになってしまいました。でもそんな思い出もまた夏目の優しさの規範となっていったのでしょう。成長した夏目の姿を見て、子供時代の夏目に冷たく当たっていた自分の未熟さを省みる人がいた事も救いでした。
{/netabare}
塔子さんと滋さんとの出会いが、夏目にとって人生の大きな転機となった事は言うまでもありませんが、ニャンコ先生やヒノエ、名取さんや田沼君、西村と北本、笹田さんやタキさん(今期は出番が少なめでしたが)、沢山の人たちが夏目の言う"めまいがするほど温かい日々"を支えているのだと改めて感じさせる第4期でした。
蛇足、1期、2期ではあまり聴けなかったニャンコ先生の寝息について、本物のねこも安心して熟睡している時にあんな音を立てて眠っている事があります。ニャンコ先生の心情の変化もこういった演出で表しているのかも知れません。
5期も楽しみです。