東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価
3.4
物語 : 2.5
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
後悔が先に立てば苦労はしない
原作:高野苺 別冊マーガレット→月刊アクションにまたがり連載
監督:浜崎博嗣(過去作STEINS;GATE他 )
シリーズディレクター:中山奈緒美
シリーズ構成・脚本:柿原優子(過去作ちはやふる2他)
OP「光の破片」高橋優
ED「未来」コブクロ(映画版主題歌)
制作:トムス
アニメーション制作:テレコム
原作未読、映画未鑑賞
物語の舞台は長野県松本市。
どうでもいいことですけど、シリーズディレクターは映画会社系の作品にたまにクレジットされますけど、アニメメーション制作がテレコムで、制作がトムスとなっており元請となるトムス側の監督責任者なのでしょうか。
シュタゲの浜崎監督、ちはやふるの柿崎さんの脚本というだけでも観る価値は十分にあります。
概要は、高校時代に自殺した友人を救えなかったトラウマを抱えた5人の男女が10年前の過去を変えて友人を救う物語。
基本的に【自殺】という人間の尊厳のなかでは一番重い生死に関わる内容をテーマにしています。
自殺を止める手段として過去改変の設定がありますけど、物語の主軸は主人公とヒロイン達が悩み苦しむ揺れる思春期の心理描写ですので、これをアニメで上手に表現し、原作ファンもアニメから入った方々にも共感を与えることができたか否かで、視聴者の評価は分かれるでしょう。
結論からいえば、脚本、演出ともに、この点は8割達成したのではないかと思います。
ただ、物語の内容が人の心の内面描写が大半で、展開の起伏が平坦ですので1クールでは冗長に感じたのも率直な感想ですしクールの連続物語よりも劇場版の方がより多くの感動を与えることができる作品だとも思います。
さて、ここからは登場人物名を出していきますのでネタバレに注意してください。
{netabare} 物語を再構成すると、菜穂(主人公)、須和 、萩田、あずさ、貴子の5名は翔の死後10年後、弘法山に集い翔を死に追いやったことにそれぞれ自責の念を語り合います。
過去のトラウトを清算したい5名の意見は、過去の自分達に手紙を送り、過去の事実を改変して翔の自殺をとめることで一致します。(第12話)
なお、12話での過去改変設定のカラクリは多くの方々から稚拙だとの批判がありますけど、SF物語ではなのでこれを追求するのは野暮ですし、それよりも過去を変えてでも翔を救いたいという10年越しの彼、彼女らの純粋な思いにこそスポットが当てられるべきです。
脚本の擁護になるかもしれませんけど、重力変位により時間の歪みが生じることは相対論で明らかにされていることですので、SFファンにはありきたりでも荒唐無稽な設定とはいえません。
また、世界線の分岐は諸説あり、現在のところはどれも仮説か妄想の類ですけど、専門家でもない彼等の純粋な想いが妄想を呼んだと思えばさして突っ込む意味もありません。
ゆえに、シュタゲをはじめSFアニメではもっと凝った設定がありますけど、SF設定の世界観で良し悪しが決まるアニメと心理描写がメインのこの作品を比較するのは意味がありません。
少々持ち上げましたけど、この作品から読み取れることは「エゴ」です。
ここからは先はファンの方は読まない方がいいです。
「自殺」とは本人意思で死を選ぶ行為です。
翔が自殺したのも翔の意思ですけど、第三者の立場では自殺は倫理に反することであり、これを止めることはモラルとして当然となります。
この物語が視聴者に感動を与える大きな山は
(1)翔の自殺を後悔している第三者の菜穂達5名
(2)過去を変えて自殺を止めたハッピーエンド。
果たしてそうでしょうか。
第三者視点では他人の死はとても不幸なことと勝手に決めつけていやしませんか。
最終話で明らかされますけど、翔が自殺を選択した直接動機は遺品の携帯に残された母親の遺言です。
翔は友人よりも母親との絆を選択し自殺に至ります。
翔の心の葛藤の真実を菜穂達は理解もせずに、翔を自殺から救うとの大義名分彼、彼女達の後悔とトラウマの清算のためにで、実態は翔の心のなかに土足で踏み込み、母親の死にトラウマを抱えた翔の自我に友情というペルソナを与えて現実逃避をさせ運命を捻じ曲げただけで、翔の心の闇は何も解決されておらず、菜穂他五名がトラウマから救われたいが為の自己満足物語です。
結果として物語では自殺の運命を分岐させることで、母子の絆よりも友情が優った結末ですけど、それが果たして倫理的と言えますか。
母親の立場となって菜穂は、自分が翔の母親と似たような立場となったときに、翔に対して今回ような第三者的な感覚でふるまえますか?多分無理でしょう。人間とは実はとても弱い生き物なんですから。
須和と菜穂の結婚も翔の自殺から生じた運命的な結果でしょう。
穿った見方をすれば、須和が翔の自殺につけいった結果ととも思える展開です。
少女漫画特有の女性主人公への感情移入は、正直、いろいろと後味が悪かったのがこの物語の感想です。
続きが須和視点で映画化されますけど、最終的な評価は次作がどうなのかで決まる含みもありますけど、観に行く気は今のところありません。
全般をとおしては、OPED曲とも作品に合っています。
最後の方では曲目当てで観ていたようなものですから。
翔役の山下さん、菜穂役の花澤さんは役をしっかりと演じきっていました。
少女漫画チックなキャラデザは好き嫌いが分かれますけど、ちはやふるや好きっていいなよ。も抵抗なく観れましたので、可もなく不可もなくです。{/netabare}
以上が評価の根拠です。