ブリキ男 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
人と妖怪に少しずつ歩み寄る夏目の安心を感じた
夏目友人帳の3期に当たる作品です。
友人帳を手にしてから先、多くの妖怪、人との関わりを通して夏目は大きく成長しました。3期では自分から他者に歩み寄る夏目の姿も見られます。
人と人との親密な関係は一朝一夕に成立する事など絶対になく、いくらかの段階を経て成長するものだと私は思っています。非常に無粋で大雑把な概略ですが、1期~3期までの夏目の成長と照らし合わせると、理解の助けになるかも知れませんので、その経緯を以下に示しておきます。
1.人を好きになる(に好かれる)
2.人を思いやる(に思いやられる)
3.お互いの事を知る
4.お互いを頼る様になる
現実は厳しいもので、下手をすると恋人同士とか夫婦とかでも3と4が達成出来ていない事があったり、中には2とか3とかをすっ飛ばしている利害関係の付き合いもあったりします。まぁ、そんな関係はいつだって脆いものです。なので一歩一歩進む夏目の歩みからは、周囲の人たちとの関係を着実に良いもの、強固なものにしていっている印象を受けます。
既に大人になっている人(私も含む)は過ぎ去った自分という過去の遺物を、ある程度は記憶に留めてはいるものの、日常的にはその断片しか意識する事がなく、合理性とかの問題から過去の自分と今の自分を半ば切り離して生活している人が殆どだと思います。
しかし、この様な心持ちを当たり前の事とすると、過去から今に至るまでの自身の思考の変遷を、ひと続きの流れとして認識する事が困難になり、自分より低い年齢の人たちに対する無理解の原因を作る事になります。
連想ゲームの発端に遡る様に、今の自分に至るまでの道のりを省みると、記憶は全きものとなり、自身の未熟であった時間が呆れるほどに長い事を思い出し、他者に対してより寛容に振舞える気がします。夏目の行動を見てイライラする人は過去の自分の姿を見据えてから、もう一度夏目の姿を見てみる事をお勧めします。彼がまっすぐに成長している姿をそこに見出せるのではないでしょうか?
知識や経験の蓄積を経て、幾多の段階を経て、紆余曲折して緩慢に成長してきた今の自分を正しく評価するならば、夏目の成長や人との関係の築き方はもどかしく思えるどころか、堅実かつ順調で、羨ましいくらいと言わざるを得ない凡庸なブリキ男なのでした。