「響け!ユーフォニアム2(TVアニメ動画)」

総合得点
89.1
感想・評価
1600
棚に入れた
7175
ランキング
91
★★★★★ 4.3 (1600)
物語
4.2
作画
4.5
声優
4.2
音楽
4.3
キャラ
4.2

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ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

「特別」の物語

学園祭の時に「君は天然色」が流れて嬉しい。大瀧詠一氏の曲はどれも色あせない名曲です。

1期は麗奈という「特別」に憧れた平凡側の久美子が特別になろうとした物語でしたが、2期はその延長と、久美子の周りにある「特別」にも話を広げています。

【吹奏楽部の過去と特別な友情を感じた子の話】
{netabare}

久美子から見れば、入部する前の吹奏楽部のいざこざは、さわってはいけない繊細で特別な過去でしたが、そこに久美子は足を突っ込んでいきます。

鎧塚みぞれ先輩はオーボエの先輩で、無口が響いてよくわからない人。
傘木希美先輩は吹奏楽部の退部事件で退部したフルートの先輩です。一件久美子からは関連性のない二人ですが、傘木先輩の復部を叶えたい久美子は、復部にOKを出さないあすか先輩の理由から、鎧塚先輩側の事情を聞いてしまいます。

真相を傘木先輩に話すわけにもいかず悩む久美子でしたが、二人の先輩は突然に出会ってしまいます。そしてその結末には、鎧塚先輩が傘木先輩に特別な友情を感じていたことが明らかになります。

自分が強く友情を感じていても、相手はそこまでの友情を感じていない事がきっかけでした。自分にとっては特別でも、他人にとっては特別ではない。他者とは完全には分かり合えないですが、自分から歩み寄る努力をすれば、特別に近づくことはできる。

吹奏楽部の特別な過去と、無口な鎧塚先輩と傘木先輩の特別な関係という、特別に見える事の真実を描いていくのがこの作品のテーマと感じた話でした。

{/netabare}

【何でも出来るあすか先輩の真実】
{netabare}
あすか先輩は久美子たち、さらには部員達から、何でも出来て凄い先輩、何を考えているか分からない、ミステリアスで、特別だと思われている人。

でも、彼女にも人並みに悩みがあって。普通とは違う特別な人という、他者のイメージからはかけ離れた問題を抱えています。

久美子にとっては、葵の外からあすか先輩をレッテル張りしたような、心配もしていない態度にイラつきを覚えたのでしょう。ただ、それを口にして「そんな事ないでしょ」といったのはもう吹奏楽部の人間ではない葵が、外部の人間が勝手なこといわないでという気持ちが入っていたのかも。葵は久美子のその言葉を「うん」と肯定します。

葵はあすかが人間でほっとしたと言い残しました。それは葵の中にある圧倒的な劣等感の解消のことなのかもしれません。あすかという「特別」が、自分と同じ「普通」側だったことがわかってどんなに安心したでしょう。「特別」を「普通」に落とす言葉は、「特別」に憧れて普通側につらくあたる久美子に対し、久美子自身は気付かなくても、とても悲しい皮肉めいた言葉と感じました。特別に憧れる人間に、特別が普通になったよという。とても暗い感情がそこにあると思います。

あすかの部屋に久美子が招かれたとき、あすかは自分の親をまるで貸し借りがあるだけの人間のようにみています。そこには、久美子が後に感じる家族への愛がないことが明白でした。家族愛がない冷たさを持ったあすかをみせて、久美子が姉との別れに流した涙には暖かい家族愛がありました。冷めたあすかと、暖かい久美子。後にその暖かさが久美子から伝わって、あすかも少し暖かくなります。

特別だと思っていた人(あすか)からの、「知ってほしかった」という告白。計算づくで動いたという、特別というイメージを取り払う真実。それを聞いて、川沿いであすかのユーフォの音を聞いて。久美子は何を思う?

久美子の暖かい気持ちを、人が人を思う気持ちの暖かさをあすかは受け取り、顔に出てしまうほどの、嬉しさ感じてしまった。他者から告白された、あなたを特別に思うという暖かな感情。親との関係が冷えきっていたあすかにとってこの特別な暖かいつながりが必要だったのかもしれません。

そして父親からのメッセージに報われるあすか。本当にここまで困難があって、やめるしかないかもしれない状況を切り抜けてきてからの父親の言葉。
やめなくて良かった。父親の言葉に様々なあすかの中の思いが救われたシーンだと思います。



{/netabare}

【黄前久美子と憧れの姉】
{netabare}
小学生時代の久美子にとってトロンボーンを演奏する姉は憧れの対象で、楽器の色んな事を教えてくれる自慢の姉で、一緒に演奏をしたいと目標にするほどの特別な存在でした。

姉にはいつまでも憧れであってほしかった。かっこ悪い姉はもう見たくない。

だからこそ、自己中心的で他人の行為にいちゃもんを出すようなかっこ悪い姉や、家族会議で駄々をこねるような姉を見たくなかった。そのイライラの爆発が「だったら、(吹奏楽を)続けたかったなんていわないでよ!今になって続けたかったなんていうのずるいよ」でした。

「好きでもない吹奏楽を続けたかった」という態度は、好きで続けている久美子には許せない。ですが、姉の言葉に込められた思いは、好きだった吹奏楽を我慢してやめているので、吹奏楽を思い出すのが嫌だからで。

姉が大学を辞めたいと言い出したのは久美子が「特別」に見えてしまったからかもしれません。関西大会に出場した久美子が、自分の吹奏楽への未練を思い出させます。今やりたいことを出来ている久美子が羨ましくて、どうでもいい大学の日常、講義よりも、ずっと気になっていた事を自分もしたくなる。
ですが、隣の芝生は青く見えるという奴で、本当にやりたいことなら、父親のリスクを背負えという言葉も間違いではないのですよね。

久美子の物語の始まりは特別に見えた姉の演奏だったというつらさ。

久美子にとってかっこいい姉が戻ってくれると良いのですが。

姉に憧れを抱いていた久美子の気持ちも、自分は我慢していたという考えに陥っている姉の気持ちもわかる。

そして、姉は、結局自分のやりたいことをやらないと、後悔が残ると、久美子にうちあけます。

久美子との別れが少し寂しいと、姉は打ち明け、久美子は朝になってようやくいないことを実感します。そして、姉と過ごしてきた日々の記憶、姉が好きだったことを思い出して、寂しくて涙が止まらない。そこに、家族愛の暖かさを感じました。その暖かさがあったからこそ、久美子はあすかにあの告白をできた。

姉にもらった言葉と勇気で、自分の思いをあすかに告白する。どこまでも本音を見せないあすかに繋がりたいと。人とのつながりを冷たく見ていたあすかが、あすか自体が冷えきっていたんだと気づかされました。いつでもあると思っていた暖かさとの別れ、寂しさの寒さをしった久美子は、あすかの一人でなんとかしようとする繋がりの薄さが、寒くて、苦しい。涙が流れて、久美子は苦しいんだと実感します。
そして、あすかに久美子の思いは届いて、あすかは少し暖かくなれました。あすかの嬉しいという言葉に、久美子も繋がりを感じて暖かくなれたでしょうか。

久美子が姉を追いかけて、ユーフォへの思い、吹奏楽への思い、姉への思い、感謝を伝える。
久美子が今まで姉に伝えられなかった本当の思いを伝えられた。子供時代の憧れ的な存在であった姉がいたからこそ、ユーフォを好きになれたと言う告白。久美子の16年の色々な姉への思いがつまった「大好き」が響きました。

蛇足
おかしいな、本当は久美子が嫌いなんです。でも久美子が姉を追いかけるシーンで既に涙が出てきていました。親よりも一番近い所にいる姉妹や兄弟に思いを伝えるって言葉にならない感動を感じます。家族愛じゃなくて、姉妹愛、兄弟愛です。子供時代、一番そばにいて、憧れで、自分の事をよく知っていて、大好きで。そんな思いが全部つまった「大好き」という言葉のように感じました。


{/netabare}

投稿 : 2016/12/22
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