ヤマザキ さんの感想・評価

4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態：観終わった

明らかに傑作なんだけど・・・

オッサンが「ぼっち」で観てきました。平日の午後だというのに案外お客さんが多くてびっくりしました。カップル連れ（死語）は案外少なかったな。女の子同士のグループが目につきました。

で、作品ですが。これは明らかに傑作だと思います。先の読めないストーリー。それも良い方に悪い方にと揺れ続け、最後まで全く気が抜けません。もともと大好きな田中将賀氏のキャラデザ。作画はビックリするくらいキレイ。俳優を使った声優も全く違和感なし。音楽も（実はあまり好みじゃないんだけど）及第点以上。ツッコミを入れるところはほとんどありません。もちろん最後は感動しました。もっとも、泣きはしませんでしたし、まどマギの「叛逆」みたいに腰が抜けたりもしませんでしたけどね。

・・・って、ここが問題なのかもしれません、実は。すごくそつなくまとまっていて本当に非の打ち所がないのですが、それが故にか、すすっーと流れてしまい、後々まで印象に残る作品じゃなくなってしまったような気がするんですよ。あと５年経って、友人に「印象に残るアニメ作品を５つ挙げて」って言われたときに、案外うっかりこの作品を落とすんじゃないかな・・・。

それでその原因をずっと考えていたのですが、もう一つ、「そうなりそうな作品」を見つけました。「心が叫びたがってるんだ」です。あの作品もよくできた作品でしたが、観て１年も経ってないのに案外思い出さないし、さらには周辺でもネットでも、未だに話題になっているという感じではないんですよね。両者の共通点を探していて、一つの結論めいたものに行き着きました。それは、

「キャラが平凡すぎて、感情に訴えかける印象的なエピソードが生み出せてない」

ということなのかもしれません。瀧も三葉も、（美男美女ではありますが）本当に普通の平凡な、さらに言ってしまえば容姿以外には特徴さえほとんどないようなただの高校生。今回こんな騒動に巻き込まれなければ、アニメの主役たり得なかったように思うんですよね。もっとも中の人が瀧だった三葉は、{netabare}彗星激突という非常事態を知り、高校生とは思えないような知略を巡らせて町長他の大人を動かし、最終的に500人以上の人の命を救うわけですが、逆に普段の生活ぶりからではそんな知力があることは想像できなくて、{/netabare}このスーパーマンっぷりにはむしろ少なからぬ唐突感というか、違和感さえ感じましたが…、でも総体的にはやはり平凡すぎるんですよね。この瀧in三葉の活躍だって、理知的で感心するんだけど、感動エピソード、感情に訴えかける話ではないと思います。

私が指摘した点は、時間が限られた映画だからといえばそれまでですが（先述のまどマギの「叛逆」は当てはまりません。あれはテレビシリーズの延長線上にあるものですからね）、これが解決すると、真の意味での「大傑作」になり得たと思います。いっそのこと、この点を補完の上、テレビシリーズで再構成して放映してくれないかな？・・・無理か(^^;;。

あとは、ラストシーンは悪くないんだけど、ちょっとご都合主義的だったかな？{netabare}２人が出会わないまま終わるって選択肢もあったように思うし、それはそれで悪くなかったかもしれません。{/netabare}

まあいろいろ言ってきましたが、新海誠監督もまだ若いですから、次回作以降に期待しましょう。細田守監督とともに宮崎駿監督がいなくなった今の日本のアニメ界をぐいぐいひっぱっていって欲しいですね。期待しています。