どらむろ さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
芸術性にエンタメ性も完備した、新海誠監督の集大成にして新境地。説明不足?いやいや、想像の余地あるので長所です♪
新海誠監督による、7作品目の劇場版ファンタジー+恋愛アニメです。上映時間107分。
従来の新海作品の真骨頂たる芸術的な背景作画と繊細な心情描写に加え、楽しさや可愛さも申し分なし。
…私的に、秒速5センチメートルより断然好きです。
従来の新海ファンも、アニメに詳しくない層どちらにもオススメできる傑作です!
※追記、修正。瀧君を滝君と漢字間違いしていた…takarockさんご指摘感謝。
{netabare}『物語』
少年と少女が「入れ替わる」という、一見ありがちなドタバタラブコメ…
なんですが。新海監督の過去作や、「時をかける少女」などの名作のエッセンスを巧みに踏襲しつつ息も付かせぬ疾走感!
まさに、107分間1秒たりとも飽きさせぬ。
…この抜群のテンポは従来の新海作品の泣き所(絶賛する人にとっては完璧に長所なんでしょうけれど)だった「エンタメ的には退屈」素晴らしいのは分かるけれど「面白くはない」欠点を、完璧に払拭!
入れ替わり系ラブコメの王道お約束を踏まえたコメディー(女の子と入れ替わった男の子が、おっぱい揉んでみる♪)含めて、とにかく見ていて楽しいです。
少年が都会(東京)、少女が田舎(糸守町、岐阜県にあるド田舎)という境遇の対比も非常に効果的で、瀧君(東京のリア充男子)の忙しい都会生活、三葉(みつは。「みつば」にあらず)ちゃんの鬱屈した田舎コンプレックスを
瀧君は、漠然とした不安(憧れの先輩美女への恋慕が届かない)
三葉ちゃんは都会への憧れ(糸守の因習や巫女としての己への不満)
「瀧君視点の東京」「三葉ちゃん視点の糸守町」「瀧君(身体は三葉ちゃん)視点の糸守町」「三葉ちゃん(身体は瀧君)視点の東京」この4視点が目まぐるしく入れ替わる!
…ドタバタしつつも新海作品らしい繊細さが健在なのが本作の凄いところ。
普通観ていて混乱必至な4視点が、全く違和感感じさせない。
一見ドタバタしている中でも、絵的にも演出面も完璧な描写により必要最低限の心情や互いの立ち位置がとても分かり易い。
双方にとって入れ替わりは単なる物理的交換にあらず、「ふたりとも異世界転生」しているようなもの。
瀧君にとっての糸森町は神秘的。三葉ちゃんにとっての東京は刺激的で憧れ。
双方の驚きや戸惑いそして次第に未知の入れ替わり相手に引かれていく過程が、とても瑞々しく描かれているのがステキでした。
…奥寺先輩を介して、いつ間にか瀧君と三葉ちゃんの関係性が変容していたのが分かる構図が上手い。
恋は理屈じゃない、想いは知らぬ間に育まれるもの。
三葉ちゃんの涙でそれがハッと分かるシーン良かったです。
口噛み酒…瀧君にとってまだ会えぬ三葉ちゃんは謎の彼女Xかも…
中盤以降物語は急転直下。
ようやくふたりの中で互いの存在が無視できない関係性を結んだ、もういちど逢いたいというのに、ふたりの距離は想像以上に遠かった!
…歴代新海作品の少年少女を阻んできたあらゆる断絶要素が、てんこ盛り!?
(物理的距離、時間軸、現実と幻想?、記憶、そして生と死まで…)
なん…だと…絶望的じゃないか!?
それでも逢いたい!忘れたくない!
ここで前半の伏線も生きていて縁を「結ぶ」糸を手繰り寄せ…それは一途な想いの強さ。
バットエンド回避自体はタイムリープ物のお約束であり、あまり心配してなかったですが。
…本作最大の難関は「記憶」でした。
まるでセカイからの悪意めいて大切な想いを消しにかかる展開に、ハラハラドキドキの連続でした。
それでも。引き裂かれれば引き裂かれる程に、想いは純度を増していく。
ベタですが、恋は障害が大きい程ロマンチックなんですな。
少年少女の純粋で一途な想いが、セカイの法則すらブチ抜いて奇跡を起こす…!
素晴らしい。なんて美しいラブストーリーか!捨て鉢な情熱は若者の特権!
やはり大切なのは、一途に想い続ける理屈抜きの情熱、あぁ^~これぞジュブナイルラブコメの極致だあぁ^~!!!
前半は楽しい&三葉ちゃん萌え(精神的にも、おっぱい的にも)
後半はあまりの断絶感とセカイの悪意に引き裂かれる切なさで涙がジワジワ、心臓バクバクでした。
……最大の心臓に悪いポイントがラストに。
秒速5センチメートルの悪夢ががか…。最後の最後の最後の瞬間まで、背筋に冷や汗が…。
{netabare} よっしゃあああああああああッッッ!ラブコメ大勝利じゃあああああ!!!!{/netabare}
素晴らしいラブコメでした。
まさに新海誠作品の集大成にしてエンタメ性も高く、非の打ち所がない。
…宮水家の巫女の謎とか、三葉父との関係など、色々と未消化の要素はありますが、細かい事はどうでも良くなる勢いありました。
宮水家1200年の存在理由自体が、実はこの瞬間の為にあったのでは?
※時金さんの考察より
初見では気付きませんでしたが、物語的にそんな運命の必然を確かに感じます。
だとすると、彗星も1200年の神秘的な伝統も…壮大で幻想的な舞台すべてはふたりのラブストーリーの為という、なんというセカイ系か!
いいですねぇ。セカイ系こそが物語の究極だと思うので、好きな解釈です。
おばあちゃんも、亡きお母さんも、覚えていなくとも実はどこかで世界の一部を救っていたのかも?
イヤな大人なお父さんも、お母さんと純粋なラブコメしてたんだなぁ~?と思うと、瀧君と三葉ちゃんの他にも語られぬ物語(ラブコメ)があった(かも)?
そう思うと世界観がグングン広がりますし、お父さんの件も後味良くなりますし。
宮水家や聖地の秘密など、本編では説明不足な点すらも…別に欠点とは思わないです。
むしろ、視聴後にあれこれと想像(妄想ともいう)出来る、1粒で何度もおいしい作品じゃあないですか。
完璧なシナリオではなくツッコミ所多い点も、逆にリピーターを呼んでいる…新世紀エヴァンゲリオンの再来かも。
…色んな意味で、新海誠作品史上、本作が抜きん出て気に入りました。
私が観たかったアニメの理想をほぼ体現しているので。
『作画』
新海マジック健在な上に、田中将賀さんのキャラデザが加わり非の打ちどころ無し。
三葉ちゃんめっちゃかわいい♪おっぱいもえろい…
頻繁に入れ替わっても一切混乱させないのも、感情表現が秀逸。三葉ちゃんの髪型も単純ながら分かり易い。
※「山田君と七人の魔女」は声優の力が大きい、本作は演出の力も多大。
過去作を想起する演出(電車の戸の開閉など)も、過去作と本作を繋いで物語に引き込んでくれる。
精緻な背景描写は、前半のリアリティーが後半の幻想に変わっていく雰囲気素晴らしいです。
現実的なシーンも視点を変えれば異世界となる…これぞアニメーションの魅力か。
『声優』
瀧君を神木隆之介さん、三葉ちゃんを上白石萌音さんと俳優起用ですが、全く遜色ない好演でした。
入れ替わった際の演技がバツグン、一瞬で今精神が誰かが分かる。
神木隆之介さんの女の子版…これはかわいいw
奥寺先輩の長澤まさみさんも俳優ですが年長のステキな女性感満点。
本職声優陣も安定感あり。
注目は「言の葉の庭」のヒロイン・ユキちゃん先生の花澤香菜さん。
これは最高のサプライズなのでは♪
『音楽』
主題歌は主題のシンクロ率高く良曲ではあるのですが、些か好みではないです。
音響も、やや邪魔に感じる面も。
…とはいえ、総合的には十分良かったです。繊細な演出に必要ですし、感動ポイントもバッチリ。
『キャラ』
新海作品はどうもキャラクターが弱い気がするのですが、本作は珍しく良キャラ揃ってました。
宮水三葉(みつばじゃありません、みつは)ちゃんかなり可愛いのはポイント高い。
女子高生で、巫女さんですよ!田舎コンプレックスの巫女さん…雨宿マチちゃん…うっ
入れ替わったらポジティブに東京満喫しちゃう適応力と女子力がすごい。
奥寺先輩と…あれ?こういうのって百合になるのか!?
新海作品最強ヒロインなのでは。
立花瀧くん、入れ替わって三葉ちゃんの胸を揉むのは…でかした!
都会のリア充なのは三葉ちゃんならずともうらやましい…。
彼も新海作品最強の主人公でしょう。諦めない不屈の想いが。
奥寺先輩ステキすぎる。新海作品の年上女性で一番ステキなのでは。
でも彼女がヒロインでなくてよかった…。
しっかり者の妹の四葉(よつは)ちゃんかわいいです。
四葉ちゃんに寝起きで呆れられたい…。
女子高生の口噛み酒で一山当てようという発想…恐ろしい子!
三葉の同級生、テッシーとさやちんもキャラ立ってました。順応力の高さは物語のお約束なので。
あの後テッシー多分めちゃくちゃ怒られた…でも町の英雄なんだし無問題ですよ、多分。
三葉父のトシキは嫌な大人の典型なんですが…実は亡き妻を本気で愛していた、愛ゆえに苦しんだ男。
多分、彼も二葉(妻)と入れ替わりを体験した(のでは?)
想像の域ですが。
娘との関係修復は本編では省かれてますが…そこはあえて想像するのも物語の楽しみ所。
…ユキちゃん先生、パンフレットによると、なんと言の葉の庭のヒロインその人でした!
これは新海ファンには嬉しいですね。{/netabare}