明日は明日の風 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
明るく、楽しく、切なく、感動して…青春ものアニメ映画の傑作
秒速5センチメートルの切なさに心揺り動かされ、言の葉の庭の圧倒的なビジュアルで感嘆し、そんな新海監督の大規模公開作品なだけに期待せずにはいられませんでした。始まってみたら興行的に大成功。しかも評価も満足度も高いときたら、興味深々になります。そして見てきました。
えぇ…とんでもなく面白いです。見てよかったと心底思いました。
なんという作品を作ってしまったのでしょうか。ビジュアルは感嘆するほど美しい…。言の葉では雨のシーンと都会のシーン、秒速では風景や桜が印象的ですが、すべて詰まっている感じがしました。特に印象的だったのは光が差し込むシーン。まるで実写のような光の差し込み加減。それと、なめらかな描写。たとえば電光掲示板の流れ方やスマホのスライドといった細かいところまで気を配っているのは新海監督ならではないかと。
それから物語自体もすばらしいです。{netabare}男女がなぜか入れ替わり、お互いに干渉しながら時にはイラつき、嫌な思いもするけど、お互いの良さに触れ、そして互いが何らかの感情を持ってしまったことに気づいたときに入れ替わりの現象は止まってしまう。{/netabare}
この流れでいくと、これまでの新海監督ならここで止まっていたように思います。すごく切ないけど、印象深いくらいで。でもこれは大規模公開の全国発信。ここからの流れがすごく素敵。
{netabare}入れ替わりの相手は時間差があり、実は片方は超自然現象で亡くなっていたことを知り、そのことが分かって何とかしようと必死に追い求めて、奇跡を起こします。その途中、ようやく会えた二人の会話と再びの別れのシーンは泣けます。話に入ってしまうとこみ上げてくるんですね。思い出しただけでもグッと来ます。{/netabare}
そしてラスト。{netabare}奇跡は起こしたものの、互いのことはまったく思い出せなくなります。何かを求めている感情だけが残っているのに。秒速の恐怖(私にはあれはトラウマ級の切なさしかなかったです)が蘇ってくる感じの流れから、あれとは真逆の再びの出会い…また泣けました。{/netabare}
瀧の神木君に三葉の上白石さんの声がとても合っていました。役者さんはすごいな…いや、この二人がすごいのかもしれませんね。それと三葉のキャラデザインは個人的にストライクです。特に髪を切ってちょっと切なくなるところは見事な描写だと思います。ただ、やっぱり映画の尺に省かれて残念な点もありました。{netabare}例えば三葉の家族の事、避難までの最後の流れなどが見たかったです。{/netabare}とはいえ、スゴく良いのは変わりません。
褒めれば褒めるだけ「言いすぎ、絶賛しすぎ」と言われるかもしれませんが、青春もの大好きな自分には、それだけの作品だったということを理解していただければと思います。青春ものが好きな人に、この作品が嫌いという人はいないと思います。見事なほど二人の心情の動きを捉えて、面白いところもあれば、切なくなるようなシーンもあって、見事な結末で閉めます。
青春ものが好きな人はぜひ見に行ってほしい作品です。円盤までまとうとは思わないで、まずは劇場であの景色を見てほしいです。円盤でたら二人の動きとかを観察するようにするといいのではないかと思います。それくらい、劇場で見る価値があると思います。
この作品で新海監督はさらに評価が高まるのでしょうね。たぶん、今年度のアニメ映画部門の賞を総なめにすると思います。ポスト宮崎とか、ポスト細田とか騒がれていますが、新海監督には評価とか気にしないで好きな作品を作ってほしいです。でも周りが許さないんだろうな…。