「魔法科高校の劣等生(TVアニメ動画)」

総合得点
85.1
感想・評価
4580
棚に入れた
23525
ランキング
254
★★★★☆ 3.8 (4580)
物語
3.7
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.8

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みかみ(みみかき) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

初期「小説家になろう」の成果として、どう観るか

 「小説家になろう」というサイトの人気作品をここ数年、ちらほらと読んでいるのですが、本作はアニメとして期待してみたというよりは、「小説家になろう」のサイト発の初期の成功作品という位置づけから見ました。
 とても特殊な見方をしているので、他のかたの参考にはまずならないであろうことを申し述べておきます。ちなみに、他人にすすめるかすすめないか、という点から申し上げると、「おすすめしません」。
 以上です。


 下記は、自分メモみたいなもんです。



 さて、「小説家になろう」というサイトは、現在、異世界・転生・俺Tueeeチート主人公もの、という枠組みのものがやたらと人気で、『ログホライゾン』や『無職転生』『盾の勇者の成り上がり』などといった作品が掲載されておりますが、こういった動向はどうやら2011年~2013年あたりにできあがってきた枠組みなんだな、ということを本作を見てよくわかりました。(本作の連載開始は、2008年なので、「小説家になろう」の初期作品)

 異世界要素と、転生要素が本作にはありません。
 しかしながら、本作は、やはりそれでも「小説家になろう」的な要素をいくつも持っているな、ということに感心しました。

 一点目は「俺Tueeeeeeチートキャラ」主人公であるということ。これはほとんど解説いらないと思います。本当に有難うございました、お兄さま強すぎ、頭良すぎ!カッコイイ!!!
 二点目のほうがなるほどな、という感じで、教養的な語りの挿し込まれ方がアマチュア厨二小説ならではの絶妙さがあるということ。『まおゆう』なんかだと、作者の教養全開という感じで、実際に作者さんが相当に教養のある人なわけですが、本作の場合「めちゃくちゃ教養あるという感じではないけど、まあ、自分のあたまでものを考えるタイプの人ではあるのだろうな」ぐらいの雰囲気。そういう人がたまに言うぐらいの「まあ、ご正論おっしゃるとおりですが…。」ぐらいの、てきとうな議論がそこそこ入ってる感じが、すごく「小説家になろう」の小説っぽくてよかったです。完全にエンタテイメントとして洗練させちゃったものって、こういうふうに主人公たちに冗長な演説をさせることを嫌って、物語の構造で回収しようとしすぎる傾向が強く見られるのですが、本作は、そこらへんの物語作法の「プロの方法論」を良くも悪くも中途半端にしか共有してないのですよね。これは、稚拙といえば稚拙なんだけれども、こういったような「プロの方法論」からは出てこないような演説をする仕組みのようなものがネット小説の方法論としてある程度共有されてきた文脈があって、『まおゆう』のような作品も登場できる土台ができたのだと思うので、そう考えるとこの作品をはじめとした、一連の「素人ラノベ」が切り開いた地平というのは偉大だと言わざるをえないな、と関心いたしました。
 あと、一応、三点目としていうと、ファンタジー世界内の設定についての叙述がクソ長いというのも、「小説家になろう」らしい展開だったと思います。昔『AIR』『CLANNAD』のアニメをみて、「ゲームじゃないのに、原作ゲームのまんまの物語展開してるから不自然すぎだろ…これ…」と口をあんぐりとさせた懐かしい記憶がありますが、当時の懐かしい違和感を思い起こさせてくれるものでした。「小説家になろう」もある意味で、ノベルゲーとかと似たようなメディアとしての性質をもっていて、テキスト量がほぼ無制限でOKでとにかく文字数が長くなる傾向があるから、あほみたいにどうでもいい説明が増えるんだよね。歴史小説なんかは今でも解説がやたら長いのはあるけど、中高生向けのラノベだと「200ページ」「300ページ」という本のページ数の制約上の問題から、文字数は絞られているけれども、文字とか展開を絞るということへのこだわりが無い感じも、よくもわるくも「小説家になろう」らしいな、としみじみするものでした。

 *

 さて、これがツボに来る、ドンピシャだという中高生も沢山いるでしょうから、そういう幸せな体験ができた中高生のみなさんについて、どうこう言おうという気は一切持ちあわせておりません。
 ただ、本作の評価自体は、作者の方にはたいへん恐縮ながら、「エンタメ作品として商業的に成り立つレベル」という以上のことは申し上げにくいです。
 ですが、そういう評価以上に「小説家になろう」という、豊穣な土壌を育てる役割を担ったという意味では、日本のサブカルチャー史的には意義のある役割を果たしているなあ、としみじみ感じ入りながら全26話を、観終えた次第です。
 世の中ほんとうに、いろいろな偶然の積み重なりで新しい文化というものが形成されていくのだなあと、いい勉強になりました。
 


 あとちなみに、本作とは直接関係ないですけど、「小説家になろう」の作品でいうと、『無職転生-異世界いったら本気だす』の原作は、後半からの展開はまともに名作といってよいレベルの小説です。『転スラ』『盾の勇者…』とかは、まあ………昔のRPGやってる感じですかね。それ以上はノーコメントで。
 あとはアニメ化される気配ないけど『辺境の老騎士』もいいです

投稿 : 2016/09/05
閲覧 : 293
サンキュー:

8

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