「君の名は。(アニメ映画)」

総合得点
91.2
感想・評価
2516
棚に入れた
11525
ランキング
39
★★★★★ 4.1 (2516)
物語
4.1
作画
4.5
声優
3.9
音楽
4.2
キャラ
4.0

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ネタバレ

sinnsi さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

【再レビュー・点数変更】素直に楽しめばいい

【物語(+キャラ)評価】
{netabare}「どうして二人はお互いを好きになったの?」と疑問を抱く人がいる。
あらゆる作品上、お互いへの理解を深めるうち、好きになっていたというだけで十分だと思うのだが、それ以上の何かが必要だろうか。

本作に至っては、性別の異なる瀧と三葉は入れ替わるという超現象を体験し、共有している。
周囲の好意的な反応を観察し、可能な限り相手を演じ続け、外面も内面も十分理解するに至り、交換日記というラブレターまで交わしていた。
さらに、お互いを通じてジェンダーが理解できた側面だってあったはずだ。
そこでお互いを好きになる余地があるとすれば、それは同棲や結婚を超越した愛の形だろう。
(また、下記で記載した理由により、適したパートナーとして選別されていたようにも思われる。)

同時にこの入れ替わりでは、3年もの時間軸の入れ替わりまで生じており、
そこでより疑問を抱く人もいるが、なんということはない。素直に楽しめばいいのだ。

単純な話で、1200年周期で衝突する隕石を回避しようとする、宮水の力によって上記の入れ替わりがある一方、
その力の一片である、夢というのは欠陥性のある作用であり、それによって記憶がおぼろげになっていたにすぎない。
また三葉が見ていたのは予知夢であり、瀧はそれに干渉していたのだ。

後にスマホ上のデータが消えたのは、三葉の死を回避できなかったため、世界が整合性を保とうとしたのだろう。
一度バッドエンドを迎えた後、瀧がグッドエンドを迎えようと奮起し、そこで新たなパラレルワールドが生まれたのである。
(宮水の力・夢の欠陥性については、本作の展開・セリフでも再三説明がされている。)

なお、私の過剰解釈により、瀧が三葉から組紐を譲り受けたことがきっかけで、入れ替わりが生じていたのだと思い続けていた時期があったが、それは正ではないだろう。
そう解釈した場合、話の構造が複雑となるか(再々レビューの必要がある)、タイムパラドックスが生じて物語として成立しなくなる。
入れ替わり自体は宮水家の力であり、相手が瀧であったのは、隕石の回避へと至らしめる相手として適切であったからにすぎない。
(それに加え、1200年後も隕石を回避するため、宮水の血を残すパートナーとして適切であったからだろう。)
(組紐においては、御神体への導き・口噛み酒による再入れ替わりの作用があったと解釈する余地はある。)

疑問点を解消していけば、この話はとても愛に満ちあふれた素直な話であり、
巨大なものから抗う愛をも描き、深い設定・世界観をも有しているので、幅広い層が楽しめるだろう。
しかし過去の私がそうであったように、疑問点を解消できないままでいると、話に入り込むことは難しいかもしれない。
そういった人は疑問点について予習をした上、もう一度だけでいいので、ぜひとも観てもらいたい。{/netabare}

【作画評価】
新海誠監督の前作『言の葉の庭』『星を追う子ども』の時点で、作画は十分に完成されているように感じていたが、
それを突き破る完成度を見せつけられ、1秒1秒、その世界へ没頭させられる。

美術背景はより実体感を持たせて自然に仕上がり、どれもプロのカメラマンが気合を入れて撮影した、綺麗な風景写真のように仕上がっている。
それなのに気取ったところはなく、普遍的なアニメのような塗りでもなく、風景写真をより良くしようと、一枚一枚エネルギーが込められている。

キャラデザと作画はとてもかわいらしいのに、萌え系には振り切っておらず、幅広い年齢層が楽しめる仕上がりになっている。
また高度な背景に負けることはなく、一体となってより高度に調和し、動きも非常に丁寧で活力にあふれている。
(キャラデザ・作画監督を担当した安藤雅司氏(ジブリ出身)の尽力もあるようにうかがえる。)

光の処理においても、非常に素晴らしい。
太陽・人工灯・彗星等の光が生じるシーンでは、光が常に計算されて背景とキャラクターに当たっているのだが、
どれも非常にエネルギーを感じられる光で、朝と昼の陽はまるで青春の1ページを切り取ったようなエネルギー感に満ちあふれ、暗所の人工灯・彗星では、陰鬱さと神秘性が際立っている。

本作の作画は、実写とアニメのいいとこ取りをして、極限までに完成度を高めている。
地上波アニメでやろうとすれば、予算や時間の制約から不可能であろう上、新海誠監督と恵まれたスタッフゆえに完成した境地だろう。

~~

↓旧レビュー(2016/09/04投稿・★3.2・サンキュー15) (本レビューは削除の上で再投稿をしたが、プロフィール上ではサンキュー歴が残ってしまうため、これまでサンキューをしてくれた方のために記録)
{netabare}(タイトル「闇鍋」・閲覧84)
本作は、遠い見ず知らずの少年少女の入れ替わり物でありながらも、
その少年少女は同じ時間軸を生きてはいない、タイムリープ物という要素も加わっている。
意外にも、誰もやらなかった盲点だろう。

しかし、それだけであるとも言える。
まず、入れ替わりの要因であると考えられる組紐を付けていた瀧(少年)だが、
これは瀧の時間軸で三年前、入れ替わりによって一方的に面識を持たれていた三葉(少女)から、不気味に受け取った代物なのだ。
この時点で「組紐が先か入れ替わりが先か」という単純明快なタイムパラドックスが起こっており、物語は数々の矛盾への補完がないまま進んでいく。

また、ズレた時間軸の中で三葉は死の運命の中にあり、
入れ替わりができなくなった後、事実を知った瀧は救い出そうと、死の運命より前に入れ替わろうと四苦八苦し、何とか入れ替わったのだが、
これ以降は設定が活きる事もなく、全てを知る瀧は安全圏の中にいるのだから、カタルシスを覚えることはない。
末期には副作用で、お互いが入れ替わり相手に関する記憶を喪失し、それに輪をかけて恋愛要素が絡むのだが、全体的に冗長でいて退屈だ。

ただそれでも、序盤は入れ替わりによる性差・カルチャーギャップ、それに順応しようとする描写は非常にコミカルであった上、
時には場面切り替えで数時間、数日、数年ほどシーンが大きく飛ばされるのも、演出の域にあるほどの見事な物であり、作画も劇場版クオリティを十二分に満たしている。
キャラクター・背景・他有機物は生命感にあふれ、最後のフレームまで生き生きとしていたのだった。
↑旧レビュー(2016/09/04投稿){/netabare}

投稿 : 2019/08/18
閲覧 : 201
サンキュー:

3

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