ようす さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「君に生きるのを、手伝ってほしい。」
製作:京都アニメーション
監督:山田尚子
公開日:2016年9月17日
一足先に試写会へ行ってまいりました。
映画館での試写会ではなかったため、
音響面では設備の整った会場とは言えず、
聞き取りにくい部分があったことが残念。
BGMをもっと味わいたかったよ。
まあ無料で観れたので贅沢は言えませんが…。
120分ほどの作品でした。
結構長く感じた!内容ぎっしりだったのだと思います。
● ストーリー
石田将也(いしだ しょうや)はやんちゃでガキ大将の小学6年生。
ある日、将也のクラスに
耳が聞こえない少女・西宮硝子(にしみや しょうこ)が転校してくる。
障害を持つがゆえの差異が目立つにつれ、
クラスは硝子に対してストレスを抱き、いじめが始まった。
いじめの中心人物として吊るし上げられた将也もまた、
クラスメイト達からいじめを受ける。
硝子は転校することになり、
将也は周りから疎外される日々。
そして高校生になった2人は再会する。
「監督:山田尚子」を頭に入れていたのも
あったからかもしれませんが、
全体的に「女監督らしい作品。」という印象でした。
将也の心理描写とか、
硝子の表情の描き方とか、
ロマンチックな雰囲気とか、
主題歌がaikoなところとか、
女の怖さをよーくわかっているところとか(笑)
男性に媚びていない女性らしさが
この作品を支えている空気だと思います。
≪ 上手い!ポイント①~ストーリーのまとめ方~ ≫
原作は完結しているので、
映画もきちんと完結します。
原作を読んでいないのでわかりませんが、
すべてのエピソードを細かく入れることは不可能だったはず。
簡単に説明できるエピソードは音楽と合わせてテンポよく流すなど、
エピソードの取捨選択やまとめ方が上手かったです。
おかげで原作を読んでいなくても
違和感なくストーリーを追うことができました。
≪ 上手い!ポイント②~さすが早見沙織さん~ ≫
耳が聞こえない少女・硝子を演じるのは早見沙織さん。
耳が聞こえないということは、
うまく言葉を発せられないということでもあります。
これ、すごく難しい役どころだと思うのですが、
さすが早見さん。
見事に演じられておりました。
なんというか、硝子が言葉を発するたびに鳥肌が立つほどに。
意識して聞いていても
早見さんの声なのかどうかよくわかりませんが、
とにかく技術がずば抜けていることは、
よーくわかりました。
この難しい役を演じきった早見さんに拍手です。
≪ 上手い!ポイント③~起伏&迫力~ ≫
硝子との出会いやクラスのいじめのような衝撃的なエピソード。
将也にとって物事が幸せに感じる時間。
2時間の中で単調な雰囲気にならず、
様々なエピソードが観ている人の興味を離しません。
衝撃的だったり、緊張感のあるエピソードも多いです。
もちろん涙が流れてしまうようなシーンも。
そして笑えるシーンも。
途中から涙が流れていた私ですが、
「これはあのシーンで感動した涙なのか、
あのシーンで笑いすぎたからなのか…。」
自分でもわからなくなっていました(笑)
≪ 上手い!ポイント④~永束くんというキャラ~ ≫
第一印象「髪型といい、ツッコミどころありすぎるやろ!」
そんな永束(ながつか)くん。
私が笑いすぎたのはこいつのせいです(笑)
この作品がテーマの割に重たくならないのは、
間違いなく彼のおかげです。
観た人に強い印象を残すキャラでしょうw
≪ 上手い!ポイント⑤~作画~ ≫
さすが京アニ、作画については文句ありません。
特に川や水中など光を使った描写はさすが!
● 自ら命を投げ出すことの罪の重さ
すべてがうまくいく、なんてことはありえない。
死んでしまった方がいいと思うぐらい
苦しい場面に直面したり思い悩んだりすることがある。
だけどその時に本当に死を選んでしまったら、
周りの人たちがどれだけ傷つくか。
私も過去に死を選ぼうとしたことがありました。
小学校1年生の時。
クラスのある女の子が怖くて仕方がなかったのです。
まあ、分類としてはいじめですね。
今となっては「なんだよそれぐらい頑張れ。」と言いたくなりますが、
当時の私にとって日々は本当に絶望でした。
親には何も話していませんでしたが、
でもやはりそれとなく勘づくのでしょうね、
「死ぬ勇気があるんやったら何でもできる。」と
ことあるごとに諭されました。
3年生のクラス替えでいじめっ子と離れたとき、
世界はなんてまぶしくて、こんなにも楽しいものだったのかと思いました。
苦しみがあったからこそ感じられたこれ以上ない幸せ。
あれほど自分が楽しみや幸せをしみじみ感じた時間はなかったなあと今でも思います。
1人では耐えられなかった。
沈んでいる私に手を差し伸べてくれた友達。
たとえひどい仕打ちをさえれようとも自分の心に正直でいた友達。
人のことを忘れっぽい私ですが、
その人たちの名前と言葉とまっすぐな姿は一生忘れないと思います。
観る人によっては登場人物たちの言動は
大袈裟に写るかもしれません。
でもリアルな世界での出来事に置き換えてみると、
すごく共感できます。
ずっと顔を伏せ、耳をふさぎ、他人を否定し続けてきた将也。
クラスメイト達から嫌なことをされても笑顔で返す硝子。
娘がいじめられていると知って将也を憎む母親。
それぞれが人生の中でぶつかる苦しみにもがいている姿は、
同じ苦しみに立ち向かっている人に大きな勇気を与えると思います。
人生において本当に取り返しのつかない過ち。
それは“他人を殺すこと”と“自分を殺すこと”。
どうか安直に死を選ぶことのないよう。
死を選ぶぐらいなら、逃げ出しましょう。
● 音楽
【 主題歌「恋をしたのは」/ aiko 】
なんかもうaikoが主題歌というだけで
アニソンではなくおしゃれな印象ww
aikoは嫌いじゃないんだけど、
aikoの曲はどれも「aiko」って感じで同じに聞えるんだよな。笑
今回も「aiko」って感じの曲でした(笑)
あ、でも作品の雰囲気にはよく合っていました♪
良い選曲だったと思います。
音楽担当は牛尾憲輔さん。
アニメ「ピンポン」の音楽担当もされていたことから、
最近注目していたのでテンションアップ♪
音響面ではあまり浸れませんでしたが(会場の問題で)、
もう一度観るならBGMをちゃんと聴きたい!
● まとめ
きっと原作は見事なストーリー展開で完結していたのでしょうね。
映画化するにあたり
すべてのエピソードを取り入れることはできなかったと思いますが、
大事な部分は落とさずにきれいに作品を描き切りました。
素晴らしいストーリーを作り上げた原作にも、
それをまとめあげてまた1つの作品として作り直した映画化にも、
どちらにも拍手!
長くなったレビューに最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。