nao さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ずっと飽きない!
2003年の今敏映画。制作マッドハウス。もとは映画「三人の名付け親」からきている。この映画は東京の新宿に住むホームレスたちが捨て子の親を探しながら、自分のコンプレックスや因縁と向き合い自分なりの答えを導いていく話である。日本の特有の「クズ」的な人生を歩んできた人物、犯罪の起こりやすい関係を持った人物によって関係図は成り立っており、そのキャラクターの魅力を最大限に生かす形でストーリー、世界観、背景、アイテムを配置している。その点が秀逸だ。キャラクターも多く、暗い過去のオンパレードであるがシナリオや絵コンテの力がこの映画を支えている。そのキャラクターは、
①おかまの捨て子、元バーの店員
②ギャンブルおやじ
③家で殺人少女
④病院から盗まれた捨て子
⑤病院から子供を盗み、自殺しそうになった元やくざ嫁
⑥その夫のギャンブル男
⑦撃たれたやくざの若頭
⑧リンチ大学生
⑨看護婦の娘、と結婚する医者
⑩教会(配給所)のヤミ司教
⑪刺されたオトン警官
⑫死んだじじい
⑬やばい奴に絡まれるタクシー運転手 等、
である。濃ゆいキャラしかいない。社会のいやな部分すべてを詰め込んだかのような設定である。このキャラ達は設定上必ず面白い話はできるし、その泣かせる身の上話にどうしたって感情移入するのはたやすいため、キャラの面白さに目が行くが、キャラというよりも、どちらかというとこれらをまとめ、日本らしい話の展開で面白さを残しつつ、過激にならず、嫌みのない話になっていることがすごいと思う。安易に変わったキャラを扱うとそのキャラクター単体の面白さはあっても奇抜さだけが目立ちストーリーとかみ合わず、見ていてイライラしてしまいがちだが、それが一切なかった。それというのもキャラだけでなく、背景やアイテム、カットの構図を洗練しクオリティを高く保っていたことにも要因があると思う。キャラの濃さを衣装や背景で目立ち過ぎないよう抑えつつ、しっかりとやり取りで見せていくことで、目に優しい画面作りができていたのではないだろうか。
しかしながら、良い点とも悪い点とも取れる部分があった。キャラが多いことで見せ場のシーンが多かったうえ、そこからの配慮で一つ一つの見せ場が70%くらいの力で見せてるように見えてしまうところだ。大きな見せ場を作ることはこの映画では必要がないとも取れるが、見終わた後、大きな見せ場がないことや、情報量が多いことによって印象が散漫になってしまうところが何とも悲しくかんじた。