Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
出会うことのない二人の出逢いの物語は「ムスビ」が紡いだ奇跡でできていました…
「朝、目が覚めるとなぜか泣いている。」
新海監督ならではの圧倒的な映像美…という言葉では言い尽くせない程、見惚れてしまうような甘美なひと時はこの様な一言から始まります。
東京で暮らす男子高校生…立花瀧と、山深い田舎町育ちの宮水三葉の二人が紡ぐこの物語は、序盤から摩訶不思議な出来事だらけ…
それは奇妙な夢…だときっと誰もが思うでしょう。
そう、これは夢…少女が長年思い描いて、それでも手が届かなかった夢…
もしそんな夢を見ることができたなら、私もきっとその夢を漫喫するでしょう…
そして夢は…やがて必ず覚めます。
極上のひと時から現実に連れ戻された時の様な「やるせなさ」を感じながら普段通りの日常に戻っていく訳ですが…
少女の…夢から覚めた三葉の日常には時間と記憶が「欠落」している事を思い知らされるのですが、この作品の面白さに拍車がかかるのはこれからです。
三葉が夢の「加害者」だとすると、対極に位置する「被害者」が存在する訳ですが、その被害者はもう一人の主人公である立花瀧…
なぜなら瀧も三葉と同じような夢を見て時間と記憶が欠落していたから…
そして二人がお互いの存在と結びつきを受け入れて…物語が動いていきます。
最初は本当に「加害者」と「被害者」の関係だったと思います。
だって夢は見ようとして見れるモノではないから…
それに見ず知らずの人に自分の全てをさらけ出した状態が連続する訳ですから…
でも夢を繰り返し見る度に、お互いの事を少しずつ知っていく瀧と三葉…
夢を繰り返し見たのは、お互いにとって必要だったから…
気が付いてみると二人とも「もう一人の自分」にお互いの存在が昇華していたのですが、振り返ってみるとこれはほんのプロローグにしかすぎませんでした。
全てはこの後に起こった出来事が元凶…
その刃の切っ先の鋭さは何の容赦もなく、触れたもの全てを八つ裂きにしてしまう程の圧倒的な破壊力に成す術が見当たらず、心をへし折るには十分過ぎるくらいの出来事が二人に襲いかかるのです。
二人はその大きなうねりを伴う荒波に翻弄されながらすれ違いを繰り返します。
一生懸命になればなるほど…近づけば近づくほど遠くなっていくお互いの距離…
だって、仕方ないです…
本当は絶対に出会う事がなかった二人なのですから…
でも、それじゃお互いに何度も見た夢の説明がつきません。
何のために夢を見たの…?
何でその夢を見たのが自分だったの…?
お互いにとっての「特別」だからにほかなりません。
だからすれ違い続けちゃダメで、ちゃんと向かい合わなきゃいけないんだ…
絶対に忘れちゃいけないんだ…
それなのに…
何で運命の神様はこんなにも残酷なの…?
何で時間ってこんなにも容赦がないの…?
でも思いました。
奇跡って叶えようと全力で頑張った人に起きるんだということ…
伝統は守り続けなくてはならないモノだということ…
「ムスビ」を大切にしなきゃいけないということ…
自分にしか出来ない事…自分のやるべき事を全うしなきゃいけないこと…
もどかしさを感じるほどのすれ違いを経た先に何があるのか…
気になる方は是非本編でご確認下さい。
一歩踏み出さずにはいられない…そんな気持ちになれる作品だと思いました。
機会を作ってもう一度視聴したい作品になりました。