おぬごん さんの感想・評価
3.9
物語 : 2.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
新海監督は映像作家としては一流でも、映画監督としては…
『秒速5センチメートル』以降、類まれな映像美で注目を浴びていた新海誠監督の最新作
これまでの新海作品は朝の情報番組とかで取り上げられつつも公開劇場数も多くなく「知る人ぞ知る」感がありました
今作では東宝や角川、JRなどの強力なバックアップの元、300超のスクリーンを得て満を持してスターダムに登壇、といったところです
※以下、この作品についてあまり好意的でない上に私見書き殴りな感想となります
ところでこの作品を見て私は『サマーウォーズ』を思い浮かべました
『サマーウォーズ』は『時をかける少女』で評価を得た細田守監督を「第二の宮﨑駿へ」とメディアが強力にバックアップし、スターダムへとのし上げた作品でした
そしてその内容は、細田監督の過去作である『デジタルモンスター ぼくらのウォーゲーム』を焼き直し、家族愛や青春ラブコメといった大衆ウケするテーマを盛り込んだものでした
「一途に想い続ける男」「男女の運命的なすれ違い」といった新海作品の特徴を、入れ替わりといったポップなギミックやハッピーエンドで大衆向けに彩った本作と重なるところがあると感じたからです
結果的にサマーウォーズは大ヒットし、細田監督は今や(日テレの力もあり)ポスト宮﨑駿最前線なわけですし、サマーウォーズ自体もよくできた作品だったと思います
しかし私の最初の感想は「あれ、『ぼくらのウォーゲーム』の方が良くね?」でした
大枠は『ぼくらの~』の焼き直しなのに大衆ウケする要素を盛り込んで大作に仕立て上げた結果、たった30分でコンパクトにまとまっていた『ぼくらの~』に比べて間延びしているように感じたのです
ですが、それでもサマーウォーズは細田監督らしさを見せつつ、伏線もしっかり回収され、カタルシスのある展開にまとめられていたと思います
だからこそ、細田監督は今も毎年新作を披露する機会を与えられているのでしょう
一方この「君の名は。」ですが、新海監督らしさは先述のように出ているのですが、大作にしようと詰め込まれた要素が全くもってどっちらかっていて、とてもではないですがまとめられていません
伏線の散りばめ方、情報の取捨選択、それらの拾い方がとにかく下手で、最終的に雰囲気と絵の美しさといった「自分の世界」にまとめた、もとい閉じ込めてしまっていたように感じました
何で2人共3年間のズレに気づかないの?
みつは&おばあちゃんと父親の軋轢はどう決着されたの?
みつはのお母さんやおばあちゃんが同じ経験をしていたことがどう活かされたの?
そもそも何で瀧もみつはも母親が出てこないの?
災害描写も心理世界もテロもどきの厨二妄想劇も唐突すぎて取って付けた感出過ぎじゃない?
おそらく新海監督は、上記の要素を上手に描き、ストーリーテーリングに絡める技量を持ちあわせておらず、端からそれらの描写から逃げていたんじゃないかと思っています
結局本作でも極めて美麗で繊細な絵作りと、『秒速~』のような強烈さも青臭さもない薄められた「童貞性」だけが心に残り、その他の部分は箸にも棒にもかかりませんでした
新海監督は優れた映像作家ではあるものの、映画監督としての腕はかなり厳しいのでは、という印象さえ感じてしまいました
勘違いしてほしくないのですが、私は新海誠監督は唯一無二のクリエイターだと思っていますし、だからこそ非常に期待して本作を見たんです
「絵が綺麗だな~」と思って『秒速~』を初めて見た時の、暗い衝撃は忘れられません
だからこそ、本作の上辺の口当たりの良い部分だけをなぞって「名作だ!」「日本アニメの未来だ!」みたいになってる現状に、不安を覚えてしまっているわけです
ひねくれててすみません