STONE さんの感想・評価

4.5
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

これまでの新海作品とは異なる

　一応、ネタバレ分類にしてありますが、ストーリー上のネタバレは更に1階層伏せて
おきます。

　新海 誠監督作品と言うことで、やっぱり作画は素晴らしく、特に本作は彗星などの天文
現象のシーンが多いため、より幻想味が増した感じ。
　新海 誠監督作品は作画の素晴らしさが言及されることが多いが、ことキャラクター
デザインに関しては、個人的には印象が薄い。
　本作はキャラクターデザインに田中 将賀氏を迎えたことで、印象的なキャラクター像を手に
入れた感がある。
　もっともいかにも田中氏らしいのデザインゆえに、いつもの新海作品らしさは幾分薄まった
みたいで、田中氏デザインの作品の多い長井 龍雪監督っぽさは少々感じたり。

　これまでの新海作品はキャラの心理描写によるドラマ性はあるものの、ストーリー自体は
あまりエンターテイメント性があるとは言い難かったが、本作は見事なまでにそれが払拭されて
おり、涙あり笑いあり、ハラハラドキドキといった感じの優れたエンターテイメント作品に
仕上がっている。
　新海監督の過去作品である「言の葉の庭」の雪野 百香里先生が登場したのはちょっと嬉しい
サプライズでした。

　キャスティングに関して、オリジナル劇場公開アニメによくある声優以外のキャスティングが
目立つ。
　個人的には声優以外がキャスティングされることに特に嫌悪感はないが、媒体の違いからか、
浮いて聞こえることが多かったのも事実。
　しかし、本作はそういうこともなく、特に主役の立花 瀧を演じた神木 降之介氏が良かった。
　アニメ声優としては前作にあたる「とある飛空士への追憶」では正直なところ、あまりいい
印象が無かったんだけど、本作はナチュラルかつ、埋もれることがない演技といった感じ。
　あと奥寺 ミキ役の長澤 まさみ氏の好演も印象的。

　ストーリー上の感想はここから。
{netabare}
　序盤の印象は入れ替わりネタのコメディといったもので、入れ替わり自体はもう使い古された
ネタではあるが、単に入れ替わるだけでなく、入れ替わった者同士である瀧と宮永 三葉が
物理的に距離が離れていたり、互いに相手が何者か判らないまま、ノートやスマフォを使って
相手の存在を探っていくといった部分が割と個性的。

　このままハートフルコメディに終始するかと思いきや、中盤以降に様相が一変。
　瀧と三葉の距離は物理的なだけでなく、時間的にも離れていることが判明したり、隕石落下に
より三葉は既に死んでいるなど、SF、ファンタジー要素が強くなる展開。
　ここからはタイムリープ要素が加わる。過去に戻って不幸な結末を回避しようとする展開は
もはや王道と言っても言いようなパターンで、割と最近でも「僕だけがいない街」、
「Re:ゼロから始める異世界生活」、「orange」と何本も名前が上がってしまうが、やはり
どう回避するかに目を奪われてしまうし、この展開の中でこれまでの伏線がドンドン回収されて
いく過程は気持ちのいいもの。

　終盤になって、互いの存在を忘れてしまった瀧と三葉が、それでも相手を探そうとする展開は
新海作品の「秒速5センチメートル」を思い出してしまう。
　「また、同じ展開になったら」と不安にもなったりしたが、今回は違う展開に。
　そういう意味では「秒速・・・」で落ち込んだ気持ちを払拭してくれる作品であるかも。
　まあ、あれはあれでありだと思う結末ではあるが、さすがに今回も同じ展開だとねえ。。。

　1本の劇場公開アニメとしてはちょうどいい長さだと思うが、その内容に対してはもう
ちょっと時間が欲しかったかなという感も。
　ダイジェスト風の描写で終わってしまった入れ替わりの日々も、ていねいに描けば面白い
コメディになりそうだし、村人の避難に関する説得を山場とする三葉と父の関係性も、もっと
深いドラマを作れそうな設定で、1クールアニメ相当のストーリー性、ドラマ性はあるような
内容だったように思える。
　そう言えばOPは劇場公開アニメらしからぬ、テレビアニメチックなものでした。
{/netabare}