nelldrip さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
そこに描くは紛争の現実
ガンダム作品でここまで紛争を無慈悲に描いた作品はかつてあっただろうか。
残念だが他の作品では知らない。
厨二要素全開だったり富野臭が酷かったりといった作品はいくつもあるのだが。
無論それもガンダムだろう。0096は確かに面白いし見どころも多い。
ニュータイプという概念に真っ向から挑んだXも素晴らしい作品だった。
むしろああいった作品がガンダムだと言っても良いのかもしれない。
そういう意味では本作は異端であるかもしれない。
ニュータイプの概念も薄れただパイロット適正がやたらと高い人種、という程度になっている事からも。
しかし本作の良さは単純にガンダム作品としてどうこうというところにはない。
モビルスーツが格好良いなんて浅いところでも勿論ない。
序盤から描かれる紛争の恐怖、無慈悲なまでの殺戮と残虐性を正面から描き切っていた。
コスモ・バビロニアが掲げる正義の旗のもと、クロスボーン・バンガードはフロンティアⅣを襲撃し、人々を恐怖が包み、逃げ惑い、アーサーを始め次々と殺されていく。
人類の粛清を謳うカロッゾが送り込むバグ。それもまた無慈悲なままに避難民を次々と殺していった。
戦争が生む一方的で圧倒的な暴力による破壊と殺戮。
無残に殺されるアンナマリーにビルギット。
悲しむ暇すら無く次の戦いへと繰り出される様はまさに現実なのかもしれない。
更に序盤の市街地戦で子供を盾にしようとする連邦軍
スペースアークで軽視される子供達。
一方でセシリーを助けたい、その一心で奇蹟すら起こしてみせたシーブック
人間が持つ狂気と醜さをここまで描き切ったと同時に、人の想いの強さ、美しさを描いた作品はやはり他のガンダム作品には無いものだった。
戦争とは何か。
力とは何なのか。
コスモ・バビロニアの演説があったからこそ、そう言った強烈なテーマ性を視聴者に叩きつけてみせた、そんな作品を作り上げた事に素直に拍手を贈りたい。そう思える傑作である。