「聲の形(アニメ映画)」

総合得点
88.4
感想・評価
1522
棚に入れた
7499
ランキング
116
★★★★★ 4.1 (1522)
物語
4.2
作画
4.3
声優
4.2
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

大ヒット御礼舞台挨拶にも行ってきました

☆☆☆完成披露上映会鑑賞後レビュー☆☆☆

最近あまり漫画を買わなくなりました
週刊の漫画雑誌や漫画の単行本は
読みたくなった時に漫画喫茶で読んだほうが安く上がるし
ただでさえ物があふれている自室に
これ以上余計な物を置くスペースがないので
本当に価値があると思ったもの以外買わなくなりました

しかし、雑誌に掲載された新人の読み切り作品というやつは
単行本に収録されるとは限らないので
雑誌を買い逃せば下手するともう一生読めなくなっちゃう
だから最近はコレダ!と思った読み切りがある号だけは買って
そのまま手元に永久保存してあります
頻度にして年に2~3回くらいですね

この作品の読み切りが週マガに載ったときは衝撃的でした
これはとんでもない作品が出てきたぞ!と
漫画喫茶を出た私はまったく迷うことなく
その足で週マガを買いに行きました
素晴らしい読みきり作品だと思ったと同時に
この作品は連載することは不可能だし
単行本収録もされないだろうという判断です

その作品が週刊連載されると聞いたときは
続きが読めるという喜びを困惑が上回りました
あのクオリティを週刊連載で維持するのは無理だろうし
読み切りの時点で完璧な作品だったので
そこから評価が下がることはあっても上がることはなく
週刊連載ははっきり言って蛇足だろうなぁと

実際予想した通り週刊連載には読み切りにあったほどの密度はありませんでした
特に中盤の映画製作の話のあたりは
作品のおおもとのテーマから大分ずれてきているのを感じましたし
当時作品の人気にも陰りがあったようです
そこから一気に急展開してフィナーレを迎えたわけですが
やっぱり読み切りと週刊連載とでは求められるものが違うことを痛感させられました

しかし、連載は失敗だったか?と聞かれれば間違いなくNOです
完璧だった読み切り版に比べところどころ粗が目立つようになっただけで
連載版で新たに命を吹き込まれたキャラクター達はとても魅力的だったし
連載版も十分に佳作だったと思います
ただ手放しに絶賛できる程ではなかったというだけの話

原作が完結したことでこの作品の展開もこれで終わりだろうと思っていたところに
今度はアニメ化の報が舞い込んできました

連載が決まったとき以上の困惑でした
もうこの作品は十分に頑張ったと思うし
これ以上引きずってもあとはただ
読み切りを初めて手に取ったときの感動が色褪せていく一方なのだろうと
あまりアニメ化を肯定的に受け入れる気分にはなれませんでした
しかし、やはり一度好きになった作品なので
最後の最後まで見届けたいという一心で完成披露上映会へ行ってきました

結論から言えば完璧でした

連載版はやっぱり全体の尺が長すぎたんですかね?
そこから余分なものを削ぎ落としていったら
読み切り版と同等かそれ以上の質と
129分という十分に見ごたえのあるボリュームを
見事に両立させた作品に仕上がりました

ちなみに映画自主製作のあたりはばっさり無くなっています
やっぱりあれ要らなかったよなぁ・・・

尺を切り詰めていくと起こりがちなのが
キャラクター達の描写不足です
主人公&ヒロインの描写に関しては
まぁしっかり描けていて当然だと思いますが
サブのキャラクターたちも短い時間の中で
長所と短所とがはっきりと描かれていて
とてもリアルで魅力的なキャラクターになっていました

生きたキャラクターづくりをするには
欠点の描写が必要不可欠なものですが
それをやりすぎなくらい踏み込んでやっているのが
この作品の特徴でもあります
人間の醜い部分をかなり強調して見せられているのに
キャラクターがより一層魅力的に見えてくるのは
人間だれしも多かれ少なかれ持っているマイナスの部分が
大変リアルにきわめて丁寧に描かれているからでしょうか
まるで自分の心の奥底にしまい込んである仄暗い情念を
無理やり引きずり出して陳列されているような感覚
そこに描かれているものが自分と無縁ではないとを
いやがおうにも自覚させられてしまうから
その根底の部分に共感できるのだとおもいます

劇場版で最も株を上げたのは長束君
原作でもギャグっぽい描写は多くありましたが
ちょっとしたアクセント程度にしか感じなかったのが
映画ではまぁ美味しいところをガンガン持っていきます
彼がメインのシーンでは会場中が笑いに包まれていました
重いテーマの作品の中で彼の果たす役割は非常に大きいですねw

もう一人は結絃
ヒロイン役のはやみんが役の性質上
セリフらしいセリフがあまりないこともあって
一番セリフが多かった女性声優は
結絃役の悠木碧だったんじゃないでしょうか
喜怒哀楽の差が激しい役どころでしたが
その演技は見事の一言に尽きます

作画は安定の京アニクオリティ
細かい表情の描写や小物の描写など
細部にわたって行き届いておりました

音楽のみ満点をつけていませんが劇伴はとてもよかったと思いますし
aikoの主題歌も作品によくマッチしていたと思います
でも、お金を出してサントラやシングルを買いたいか?
と聞かれるとそこまでではないんですよね
年間で十数万はアニソン・サントラを購入してますので
割とCDに関しては財布のひもが緩いほうなんじゃないかと思いますが
それでも特にこの作品の曲を購入したいという気は起りませんでしたので
この評価になりました

全体的に原作を知っている人には自信を持ってお勧めできるクオリティです
そして、原作を知らない人には原作からでもアニメからでもいいので
ぜひ触れてもらいたい作品だと思います

なお、私は上映会から帰ってきてすぐ
西屋太志 自選総作監修正集付き前売券をぽちってしまったので
封切り後にまた見に行くことになりそうです
作品を見てから前売り券を買うのはこれが初めてですw
また観てきたら何かしら追記するかもしれません

☆☆☆大ヒット御礼舞台挨拶鑑賞後レビュー☆☆☆

封切り直後あにこれオフでみんなと見に行って
さらに昨日大ヒット御礼舞台挨拶に行ってきました

2回目の視聴の際は
1回目では見落としがちな細部の描写などに注目
3回目の視聴の際は
オフ会で見た後話題に上がっていた点と
舞台挨拶で話題に上がった点に特に注目してみていました

普段はネタバレありでより密度の濃い
終演後舞台挨拶を中心に見に行ってますが
今回残念ながら終演後は落選
第二希望の開演前舞台挨拶が当たったものの
発券してみたら最後列でした・・・
さらにこの回だけは別に見に行かなくても
オンライン中継されているとか
もうほんと踏んだり蹴ったりだなぁ
と思ったのですが
舞台挨拶で聞いた内容をその場ですぐ確認できたのはよかったです

舞台挨拶を聞いたり繰り返し見たことで
いくつか印象が変わった点などがあるので
ネタバレ込みで置いておきます

手話に関して{netabare}

父がお役所勤めで一時期障碍者にかかわる部署にいて
たまにNHKに有識者として呼ばれたりしてました
おかげで小さい頃から障碍者が身近にいる生活をしており
手話教室の生徒兼ボランティアみたいなこともやってました
もう止めて久しいこともあり簡単な挨拶と50音程度しかわかりませんが
一般の人よりは多少手話に触れたことがあるかんじです

今回山田監督の話では
手話のシーンに関しては
将也と佐原は勉強はしたものの使う機会がなかったので
初心者らしく50音を多めに交えて使わせる
結弦は日常的に使っているので
技でも繰り出すようにかっこよく
硝子はコミュニケーションの中心手段なので
細かい心の動きまで伝えられるように
といったように
使い手の習熟度に合わせて手話の監修を入れてもらったそうです

ということで今回は手話の部分をしっかり観察してみました

硝子が将也にだれかメールをしたい相手がいないか?
と聞かれたときに
一度目は「さ」「原」の動きを示し
一瞬佐原が誰だか頭の中でつながらなかった将也を見て
手話が伝わらなかったと判断したのか
「さ」「は」「ら」と50音でもう一度伝えています
手話で心の動きまで伝わるように
というのはこういう部分のことかもしれませんね

そしてもう一つ印象的だったのは
花火大会の別れ際
以前は自分から別れ際に「またね」
を使っていた硝子が
将也の「またね」
に対して「さようなら」と返しています
つまりはもうその時点で決意を固めていたのでしょう・・・
{/netabare}
川井さんに関して{netabare}

川井役の潘めぐみが
最初に役をもらって原作を読んだときに
どういう風に演じたらいいのかわからなかったとのこと
監督に相談した時に返ってきた
「川井さんは聖母のような女の子なんです」
と言われて自分の印象と真逆で驚いたそうな

聖母の真逆ってことはつまり
彼女が極めて打算的で狡猾に
演技しながら生きているように見えたんでしょうね
私にもそう見えました
硝子いじめにはリスクを避けて直接手は下さず
かついじめる側からも反発の無いよう同調する
事件発覚後は自分は関係ないと主張し
非難されたら泣いてごまかす

少なくとも将也と植野の目には
彼女が裏表のあるブリっ子に映っているので
物語が基本将也の目線で展開されることもあり
物語の読み手にはとても腹黒いように見えてしまうんです

実際はそうではなくて
彼女の態度は演技ではなく
いわば天然なんですね
原作者も彼女に関して
「川井さんは作品内で一切噓をついていない」
と発言しており
つまり彼女は表面を取り繕っているのではなく
本気で自分はいじめ事件の加害者ではないと考えているんです

しかし、彼女が本当に純真無垢なのであれば
打算で行っているよりもよっぽどたちが悪いようにも思います

正当化というのは正常な心の防衛反応です
自分が悪いのではないかという罪悪感がベースにあって
その罪悪感押し殺すために自分は悪くない自分は完璧であると思い込み
重症になってくると自分の中の事実を自分の都合のいいように歪めて
それを自分で信じ込んでしまいます

そんな彼女が泣いて謝罪をするシーンが映画の最後にあります
それは将也への千羽鶴が足りなかったことを詫びて泣いて謝るシーン
これは将也や硝子のしている謝罪とは根本的に性質が違います
彼女は今でも自分のこれまでの言動の全てが正しいと思っていて
自分が過ちを犯したことを謝罪しているのではなく
千羽鶴を集めきれなかった自分の能力不足を詫びているんですね

いじめ事件に関しても
自分はいじめを止めようとしたが
自分の力不足で阻止することができなかった
というのが彼女の中にあるストーリーなのでしょう
そしてそのストーリーを壊されそうになると
泣くことでコミニュケーションの中断を図るのです

そうやって自分の嫌な部分を自分から見えなくしてしまい
自分を「聖母」にしてしまっている彼女は
立派にいじめ事件の加害者であり被害者なのだと思います
{/netabare}
音楽に関して{netabare}

繰り返し鑑賞して思ったのは
劇伴については結構よかったなぁということ
中盤までの劇伴はそこまで印象に残らなかったんですが
後半の喧嘩や飛び降りのシーンの音楽は
非常に印象的な使われ方をしており強く心に残りました
しかしまぁ、サントラを買って聞きたいかと言われるとやっぱりNO
お金を払って聞く価値がないというのではなく
日常的にあんなものを聞いて過ごしていたら
心を病んでしまいそうなのでやっぱり要らないかなという感じです

aikoの曲に関しては聞けば聞くほど違和感が
けみかけさんとも少し話しましたが
恋愛がメインテーマの映画でもないのに
テーマソングが「恋をしたのは」なのはどういうことだろう?と

私の出した結論は
映画としてあの楽曲を使う必要性は全くないけれど
この作品を商業的にプロモーションするために
障碍と恋愛という二つの要素を前面に出す必要があった
ということです

そりゃいじめと自殺未遂の映画ですって言われたら
一般層は裸足で逃げ出しますからね
原作組だけで内々に盛り上がるのではなく
一般層にも受け入れてもらうための作戦として
あの曲とあのPVを使うのは間違っていないかもしれません

しかし、そうやって釣られてきた層が
この映画を見て果たしてどう思うのか?
少なくともカップルで見に来るような恋愛映画ではないです
そういう人たちは君の名は。を見に行った方がいいでしょう
驚かせるのが目的で嘘予告的なものを流すのはアリだと思いますが
この作品はそういうのともちょっと違いますよね・・・

原作のファンでもあるというaikoの起用は悪くなかったと思いますが
もう少し映画の内容にあった曲にしてほしかったところですね
{/netabare}

オフ会も舞台挨拶も前売り使えずで
まだ一枚余っているため最後にもう1回見て
いろいろ思うところをレビューしておこうとおもいます

投稿 : 2016/10/02
閲覧 : 712
サンキュー:

49

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