明日は明日の風 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
隠れた名作というにはもったいほどの良作
5人の若い女性で編成された部隊で護っている、小規模な砦の物語です。
前半は小規模軍隊の日常です。まるで「けいおん!の軍隊バージョン」と言いたくなるくらい、ゆるい、ゆるい日常です。ところが、ゆるい日常でも伏線が張ってあって、後半に明かされるとともに、感動の終わりに向かっていきます。
ヨーロッパみたいな風景なのに、日本風。そこはキリスト教も神道もない世界。教会なのに絵馬があったり、シスターなのに手を合わせて拝んでいたりと、独特の世界です。{netabare}これにはちゃんとした理由が隠されていて、この世界はすでに大戦争によって世界が一度滅んだ後の世界なのです。砦となっているのは旧日本の学校だったところ。この点はぼかしながら話を進めていますが、容易に想像できるようになっています。{/netabare}この世界観はターンエーガンダムに似たところがあります。こちらのほうがより現実的ではありますが。
それと、ジブリに似た世界観があるかもしれません。特に宮崎駿が作るファンタジーじゃないほうの映画の雰囲気を持っています。
この世界観に、5人の女性たちの物語が重なります。
主人公のカナタ。{netabare}こどものころに助けられた女性兵士のラッパに憧れ、ラッパが吹きたくて軍隊に入隊するという、なかなかアクティブな少女です。最初は下手すぎなんですが、絶対音感の持ち主で、やがて上達していきます。好奇心旺盛で、いろいろ問題も起こしますが、周りを明るくするムードメーカーであり、頑張る、あきらめない性格がまさに主人公向きのキャラになっています。物語の最後、停戦を伝えるために吹いた音は涙ものです。{/netabare}
上司のリオ。{netabare}実は良家の娘。トランペットの名手であった姉のイリアにトランペットを教わったため、一流の腕を持つ。カナタのよき理解者であり、理想的な上司。男っぽい性格ではあるが、実はかわいらしい女性。平和のために敵国王の妃となることを選び、最後の最後に大きな役割を果たします。{/netabare}
小隊長のフェリシア。{netabare}優しい母親みたいな存在ですが、腹黒いところがあったり、決断力があったり、隊長っぽい一面も随所で見せます。以前の戦闘で一人だけ生き残るという経験をしており、心の傷を負っています。{/netabare}
同僚のノエル。{netabare}綾波系の不思議少女。実は天才科学者として名を馳せた。軍に利用され、旧時代の兵器を甦らせてしまい、多くの人を殺したということが悔いとなって生きています。普段は無口で、何を考えているのかわからないこともありますが、たった一つ残っていた戦車の復元に取り組む姿は職人そのもの。たまに可愛く表現されているところも綾波系のいいところ。{/netabare}
同僚のクレハ。{netabare}年下なのに軍に入ったのがクレハより早かったために先輩風を吹くツンデレ系の女の子。戦争孤児ですが、たとえ大ピンチでも軍の規律を護ろうとする律儀な性格。根は優しいという、完全なるツンデレ。{/netabare}
上記の五人に砦の住人、特に教会のユミナや子供たち、伝令のクラウスといった脇のキャラとの絡みがまた面白く、ちょっと切なく、どんどん話しに引き込まれていきます。最後は平和とは何ぞやを考えさせる話が織り込まれていて、「アメイジング・グレイス」の音色で涙腺が緩んでしまいます。
1クールという限られた期間の中で、見事なほど話がまとめられています。話の流れに無駄がありません。なので、見ているうちにいつの間にか終わってしまったという虚脱感があるくらい、きれいに終わっています。いちおう12話ですが、OVAとなっている7.5話、13話も一緒に見ることをお勧めします。7.5話は日常の極み、13話は物語の補完です。
何か見たいな…と迷っておられる方、考えている方にお勧めしたいです。一気に見れますし、見て損は感じない作品です。