「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-(TVアニメ動画)」

総合得点
64.2
感想・評価
205
棚に入れた
911
ランキング
3936
★★★★☆ 3.5 (205)
物語
3.5
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.4
キャラ
3.4

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

飼い主を見守る老猫の物語。新海誠原作の8分×4話のショート、2週目以降涙腺崩壊しました。

就活で苦しんでいる女の子を、飼い猫(老猫)が見守るさまを、優しいタッチで描いた8分×4話のショートアニメです。
新海誠監督が1999年に発表した自主制作モノクロアニメーションを基にしたリメイク。
新海作品特有の雰囲気、作風が、30分程に凝縮されており…泣かせてくれます。

…とりあえず「ネコ好きならば」絶対に損はしない傑作です!(私猫派)

{netabare}『物語』
彼女(就活中の短大生。社会の壁にぶつかり苦しみ、弱っている)と、彼女の飼い猫ダル(彼女が子どもの時に拾った老猫)の物語。
人間の彼女を傍らで見守り続けるダルの視点で、詩的なモノローグが紡がれていく…。

ダルは猫なので、人間の思考や社会関係は理解できない。けれど、いつでも近くに寄り添ってきた猫特有の(だと思わされる)見方や思考がユニークで、(猫なのに)詩的な表現をするのが妙に可笑しかったり。

人間と猫は会話も出来ないし、思考形態も異質な存在だけど、それ故にこそのひたすらに純粋な想いはやさしく、それでも絶対に届かない事が分かるので、たまらなく切ない。
ダルのセリフ(モノローグ)まわしが妙に詩的で美しいのも、この純粋な物語に引き込んでくれる。
全部で30分強しか尺が無いけれど、セリフやシーンのどこを取っても詩的な余韻が素晴らしいです。

…老猫という事で最初からオチは読めるのですが、分かっていても最終話は泣けます。
むしろ初見よりも、2周目以降の方が更に涙こみあげてきた。
「猫ならではの」ささやかだけれど、彼女にとって人生の後押しをしてくれた、まさに「奇跡」
はた目から見て「ダルがきっかけで彼女が立ち直った」のは単なる偶然と相関関係に過ぎないけれど…
けれど。この物語の視聴者は知っている。ダルがいつも彼女を見守っていた事を。
奇跡は決して偶然では無かったことを…。いつも彼女を想い続けたダルだけが彼女を救えたという事を。
…それが分かるのが、ダルのモノローグを知る視聴者だけという事が、たまらなく切ないです。
(いや、彼女が一番分かっているんですが、メタ視点だとダルの思考は分からないので)
これぞ、物語の神髄。アニメションに限らず、これだから物語は良いものです。
…ラストは原作も踏まえると、感動もひとしおでした。
素直に(良かったね)と思える。泣けてきた…。
猫と人間の流れる時間の差も切ない。ダルは彼女を見守り続けて先に逝き、彼女は就活で長い人生これからスタートしていくのです…。
異なる種族の終わりと始まり。普通は交わらない…でもキセキ的に交わるのは、やはり物語の醍醐味だと思う。

…新海作品で苦しんでいる女性の話「言の葉の庭」も素晴らしいのですが、本作の方が更に好きです。
種族の違い故のディスコミュニケーションだからこその純粋に凝縮された物語、完璧です。
30分と言う尺も相まって、余計なノイズを削ぎ落として、純粋に美しい物語に仕上がっている。
意思疎通のできない猫なればこそ描けた文学性だと思いました。
※「イヴの時間」や「planetarian ~ちいさなほしのゆめ~」等の人工知能物も近い魅力があるのですが、一応会話が成立しているし、人間側も人間的な感情移入は不可避。
でも猫はどちらも出来ないのと、内証モノローグの有無により、異なる視点を提供してくれた点が良かったです。


『作画』
新海監督は直接関わらず、予算も少な目ながら、十分に新海作品特有の雰囲気感じさせる。
猫の描写も地味ながら猫をちゃんと知っていると分かる。
背景は地味ですが、猫の限定された視点、という意味ではむしろ良かった。
あと彼女がかなり可愛い。ナチュラルな可愛さは貴重です。

『声優』
「ゼーガペイン」「のうりん!」に続き、浅沼晋太郎さん&花澤香菜さんコンピ。
花澤さんは「言の葉の庭」を彷彿。弱っている女性絶品…
ダルの詩的なモノローグ、浅沼晋太郎さん非常に良かったです。素晴らしい。
平松晶子さんの母親も味わいあり。矢作紗友里さんの友人も良い感じ。
…新海監督まさかの御出演、普通に良かったです。

『音楽』
控えめながら良質。ED「クラムボン」の余韻も素晴らしいです。泣ける…。


『キャラ』
新海作品全般に言えますが、キャラクター自体は地味です。
固有キャラではなく「猫」とか「彼女(就活で悩んでいる短大生)」というように、一般化した方がしっくりくる感じ。
…そこがむしろ新海作品の持ち味かも。新海作品に限れば欠点ではない。
地味とはいえ、ダルと彼女は十分魅力的。

ダル、なんという詩的なセリフ回し…ネコなのに。
一途に彼女を想い続ける、種族が違うからこそ、愛…すらも超越したナニか尊いモノを感じました。
あぁ^~やっぱりネコはかわいいんじゃ~♪
新海監督白ネコもかわいいんじゃ~♪

彼女ちゃん(人類は衰退しましたの私ちゃん的なノリ)、可愛いですねぇ。アニメ的な萌えではない素朴な可愛さが良い。
就活のスーツも、なんだか着せられている感じが…ほほえましいですねぇ。
追い詰められ弱っていくのは見るに忍びなかった…ダルといっしょで良かったですねぇ。

友人(ともか)ちゃんも普通に可愛かったです。これが萌えアニメなら友人ちゃんも主役級だったのに(そういう作品では無いけど)

お母さんも地味ですが、とても良い母親だと思った。{/netabare}

投稿 : 2016/08/25
閲覧 : 373
サンキュー:

30

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