kurosuke40 さんの感想・評価
4.3
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
良い組織について
※昔書いたやつの供養。まとめきれてないです……。
テーマの良さとそれを引き出す演出が素晴らしい作品でした。
監督の言う、誠実ってそういうことなんでしょうね。
この作品の1つの節目は「俺達、良いパーティになってきたよ」の台詞であり、
良いパーティについて酸いも甘いも噛み分けた、良くできた組織論の話ですね。
先に言ってしまうと、良いパーティというのは、
メンバーのそれぞれが性格や体質的に無理をせずに、自分の位置にあった役割を全うできているパーティかなと思う。
一見ハードルが低そうだけど、これは目標が高くなればなるほど、誰も無理してないというのが難しくなる。
組織は組織としての目標を達成できなければならない。
目標が高くなると自身のやりたいことやれることと役割としてやらなければいけないことが乖離していく。
この視点からマナトやメリィの立ち位置を見ると面白い。
前半はマナトパーティの話。
一見マナトはかなり無理をしているように見えるが、実際のところは彼は気質的には全然無理をしていない。
ハルヒロから見れば、組織に足りない役割があって、その穴をマナトが埋めて奔走して、マナト申し訳ねぇ、でもありがとう!なんだけど、
マナトはむしろハルヒロたちに感謝していると言う。
このちぐはぐさの正体は、マナトはいわゆる「自分でやらないといけない病」ってやつで、
マナトは組織のすべての役割は本来自分一人でやらないといけないと考えているから。
基本的に他の誰かがよしなにやっていくれるとは考えていない。
だから、役割の一部を”わざわざ”代わりにやってくれるメンバーには「感謝している」と彼は言う。
例えば、前半のもう一つのテーマに命のやり取りがある。
この一線を越えるにあたって一番負担を受けたのはランタで、
彼がバイスを積むという名目で率先してとどめを刺す役割を担っている。
もしランタがいなければ、マナトがとどめを刺していたでしょうね。
ランタが口が悪いし、空気も読めないけど(根は素直なんだけど)、
ゴブリンを倒した後のマナトの表情を見れば、”代わりに”とどめを刺してくれるランタにはそりゃ感謝しきれないはずです。
マナトの「自分でやらないといけない病」はある意味彼は、他人に任せられない、仲間を信用していないともとれるわけで、
それが「仲間でいてくれることを感謝している」「自分は仲間扱いしてもらえるような人間じゃない気がする」なんでしょうね。
マナトパーティの功罪は、そんなマナトの気質も含めて、
旧市街のゴブリンを数体倒す程度の目的において"良いパーティ"としてまとまってしまったこと。
メンバーそれぞれの気質に無理なく、マナトに比重の多い形で役割分担で固まってしまった。
旧市街のゴブリン程度には良いが、ヒーラーでリーダーでタンク(あと情報収集と書記と女性陣との付き合い)をマナト一人で担っており、
義勇兵としてより強い敵と戦うために必要な、パーティとしての強さ、堅牢さはマナトパーティにはない。
マナトから教えられるのは、良いパーティということとパーティとしての強さは別ベクトルであるということ。
マナトパーティはあまりにも脆い。
もし敵が少しずつ強くなっていけば、組織として強くなる方向に少しずつマナトパーティの役割分担も変わっていっただろうとは思う。
しかし、マナトの死によって、パーティは急激な変化を求めれることになる。
ユメが指摘したとおり、マナトの死によって死んだのはマナトだけでない。
マナトパーティとしての役割分担もおじゃんになった。そのことに気付かないハルヒロたちは、
マナトの立ち位置にメリィを迎え、作戦を立てる。
メリィからしたら神官で前に出るってバカじゃないの?だし、
マナトがいないのに、マナトがいる前提で考えるような作戦なんて「ぐだぐだ」に決まっている。
ハルヒロがユメに気付かされるまで、マナトが死んだ後でもパーティはマナトパーティだった。
そしてOPが変わるタイミング、6話からがハルヒロパーティの話になる。
組織として役割分担が変えていく。
象徴的なのがモグゾーの突っ込みで、
今までランタのなだめ役はハルヒロの役割だった。だが、ハルヒロはリーダーとして色々と考えないといけない。
モグゾーは先に内輪もめ時に怒ったり、こういうところに敏くて、
なだめ役を引き受けようとしたんでしょうね。
再編成にあたって面白いのはメリィの立ち位置で、
メリィは将来のマナトの姿っぽいんですよね。
複数の役割を担うということは1つの役割を全うできないということであり、
そのことに気付き、神官という役割に徹底するようになったマナトという感じです。
彼女の経験から、信念として神官という役割に徹底することを誓っています。
メリィ"が"ハルヒロパーティを受け入れるのは、
ただハルヒロたちと親しくなったためだけじゃなくて、もう一つ条件を満たす必要がある。
それは自身の全うしたい役割を全うさせてくれるかどうかです。
仲間思いで、責任が強いからこそ、彼女は彼女が全うしたい方法で神官の役割を全うできないパーティでは
彼女の信念から下手に愛着を持たないようにしている。
メリィは仲間思いで信念のあるからこそコミュ障に徹しているのでしょうね。
ここらへんは随所にハルヒロの一挙一動を判定評価するメリィさんチェックが見られたり、
(付き合った後に、本当にこの人と付き合っていていいんだろうかと彼氏の一挙一動を観察する彼女さんみたい)
メリィが自身の役割を全うできる場所かどうか判定を下す前に仲間認定されて戸惑うあたりに見て取れるのかなと思います。
役割が固定していない、ハルヒロパーティは彼女にとって天啓でしたね。
後半のハルヒロとランタのやり取りも、
ハルヒロはマナトのやり方を追っていて、彼自身のやり方やランタとの関係性を見れてないことに起因していて、
ここらへんをランタが気付かせてくれたのかなと思います。
一連を通してハルヒロが、マナトの心中内会話でもともと「リーダーめんどい」から「しんどいことなかった?」と
マナトも気遣えるほどになったのは成長したなぁと感じさせるものでした。
他にもたくさんありますが、本当に良いアニメでしたね。個人的にマナト的な考えが強いので、改めないといけないなーと思います。
ご精読ありがとうございました。