剣道部 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
重厚な人間ドラマ
[文量→中盛り・内容→感想系]
【総括】
喰霊は、今まで手をつけていませんでした。あにこれで評価が高くて気にはなっていたのですが、「グロい」ということでしたので、敬遠していました。
原作を楽しく読破できたので、アニメを観てみようと思えました(なぜか、漫画ならいくらグロくても大丈夫)。
結果として、観て良かったな、と♪ 第1話と終盤以外はそこまでグロいというわけではありませんでした。
【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
アニメ「喰霊」は、原作の0巻という扱いで、原作以前のストーリーが描かれています。一応、黄泉の怨霊化と皆殺しというバッドエンド自体は(原作にあるので)分かった上での視聴でしたが、問題なく楽しめました(原作のラストも分かっているので、アニメがどんなバッドエンドだろうと、色々安心してたのもあります)。
むしろ、原作よりおもしろいかも(汗)
悪霊との戦いを描いたアニメは様々ありますが、喰霊は、バトルアニメというより、丁寧な人間ドラマだった印象です。
神楽のキャラはだいぶ変わっていましたね。原作では最初から、もっと明るくて軽い印象でしたが、それは、黄泉との関わり合いの中で得ることができた性質だったのですね。
紀之のヘタれっぷりも、黄泉を大切に思うからで、それは前半部分で黄泉との深い愛を描いたからこそ伝わるものでした。最終的に紀之は、「何も選択することができなかった」のですが、人間ってそんなもんなかもしれませんね。
アニオリキャラの奈落や冥、トオルやナツキ、一騎や菖蒲なども、主にその死によって、作品に深み(黄泉の行動への説得力)が増しました。
特に第1話では、メインキャラ全員死亡という、衝撃的な展開でしたが、トオルの死には、伏線と対比がみられたと思います。怨霊化した恋人を、自らの手で殺めたトオルと、殺すことのできなかった紀之。二人に待っていたのは、どちらにせよバッドエンド。救いのない現実。辛いですね。究極の二者択一を迫らせといて、両方不正解とか、監督性格悪いでしょ(笑) でも、世の中、「必ず正しい道がある」ことばかりではないので、そういった意味ではリアルで良かったです。
個人的には、ナブーが双子で、しかも若本さんだということに爆笑w あぁ、ロイエンタールw 原作では死に際も描いてもらえないほどのモブなので、制作が遊んだ感じですかね♪
最後に、本作の主人公といえる黄泉ですが、凄く良いキャラとして描かれていました。原作では、なぜ神楽や紀之がそこまで黄泉にこだわるのかが(以前は良い姉だったというだけで)完全に説明不足でしたが、アニメのお陰で原作にも深まりが出ました。このように、互いに補完し合い、評価を高め合える原作とアニメの関係は珍しく、アニメスタッフも原作者も、とても良い仕事をしたのだと思います。
黄泉はある意味、潔癖だったのでしょう。人間、誰だって弱さや醜い心を持っていますが、他人のそれは許せても、自分に対してはそうもいかない。
きっと、黄泉は誰よりも自分が嫌いで、自分を許せなかった。奈落を殺した冥を、はじめは使命感から倒そうとしますが、最後には確かな憎しみをもって殺してしまった。その事に対する良心の呵責と自己正当化の狭間で揺れる心理を、(菖蒲との問答のなかで)指1本の動きで表現するところとか、とても繊細でした。
また、本当の家族を失ってしまった悲しみを埋めてくれた神楽の信頼を裏切ってしまったことが、最終的に三途川に付け入る隙を与えてしまいました。互いに大切に思うからこそ、すれ違う感情。うまく表現できていました。それもこれも、中盤の日常パートを丁寧に描いたからこそだと思います。構成が上手いです。(ただし、黄泉の死に際の「神楽を大切に思う」という言葉は、原作序盤とは噛み合わなくなってきますが、アニメを1つの作品として綺麗に終わらせるためには必要な要素でしたね。)
原作者は単行本の中で、「神楽や黄泉の過去にここまでの細かな設定はなく、アニメスタッフがリードして作ってくれた。アニメスタッフの優秀さに驚くばかり」という趣旨の発言をしています。勿論、謙遜もあるのでしょうが、ここまで原作と違うのに面白かったアニメも珍しいかも。
でも、神楽と黄泉の関係はこれ(アニメ)で終わりではなく、むしろこれから始まるので、アニメだけしか観ていない方は、是非原作も完走してみてはどうでしょうか♪ 原作は主人公が違いますし、作風も、王道のボーイミーツガールものとして、また違った楽しみ方ができますよ♪
{/netabare}
【余談 ~剣道部的、刀の使い方~】
{netabare}
神楽の刀「舞蹴」は通常の太刀なので、抜き打ち(いわゆる居合い抜き)は可能ですが、黄泉の刀「獅子王」は長刀(や野太刀)と呼ばれる長さの刀なので、抜き打ちは(身長が2mくらいないとw)物理的に無理です。そこはちゃんとしていて、黄泉が抜き打ちしているシーンはほぼなかったですね(拍手)。そのへん、適当なアニメも多いんで(というか、アニメ全般において、刀が長すぎ。普通は刀身が60~80㎝くらいだから)。
あと、第3話、道場で神楽が行っていた型は、(居合道は専門外なので多分ですが)、全剣連の制定型2本目「後」の動作で間違いないと思うのですが、その後の流れは制定型ではない気がした。なんかの古流の型を参考にしてるのかな? 詳しく「○○流」まで分からないのが剣道部的に悔しかったw
{/netabare}