どらむろ さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
果物の侍たちが繰り広げる、3分枠のシュール時代劇ギャグ。かなり笑えます。
福岡のCGアニメーションスタジオ「happyproject」 による自主制作アニメ、3分×全13話です。
顔がリンゴとかバナナとかの侍たちが真剣勝負に及ぶ、結構真面目な時代劇…
…からの、果物特有のシュールなオチで笑わせてくれるギャグアニメです。
僅か3分でセリフ無しにも関わらず、状況や心情が手に取るように伝わってくる。
オンリーワンな魅力がある秀作、これかなり面白いです。
{netabare}『物語』
顔が果物な以外は、結構本格派の時代劇。なんとなく黒澤明監督の剣客物っぽい雰囲気。
孤高の剣客・赤林檎侍と、彼を執拗につけ狙う青林檎侍やバナナ侍や甘栗侍たちの死闘…
いや、顔が果物なんですけど!キャラ名からして面白いんですが!
冒頭のナレーションで状況説明後、基本的に一切のセリフが無い。
なのにキャラの行動動機や心情、場の状況は手に取るように分かってしまうのが凄い。
赤りんご侍の孤高さや、剣客の誇りを傷付けられたライバル達の執念、対決に至る流れ、張り詰めた緊張感…
そして、「顔が果物」特有の爆笑オチ。
本人たちは大真面目に真剣勝負しているのに…どうしてこうなった!?
ギャグは「顔がアンパンマンと同じ原理?だから斬られても平気でごさる!」
自滅していく過程が笑えたり、やっぱりお前ら果物じゃねーか!と。
これ一本槍は単調…ではありますが、これだけで十分過ぎる程面白い。
おそらくは、ギャグ設定以外は大真面目に剣客物やっているからこそのシュールさが光っている。
ギャグ抜きにしても、全13話を通して、侍たちの生き様や、紆余曲折の人生模様がしっかりと伝わり、意外にも硬派な時代劇(剣客物)としても成立しちゃっている。
剣客として敗れ続けた青りんご侍が、最終的には新たな生き方見つけていくドラマは不覚にもちょっぴりハートフル。
冒頭の早口ナレーション以外に一切のセリフ無しのアニメーションで、たった3分間なのに。
ナレーションで、時代考証?もしっかりしているのも良い。皆フルーツなのに。
総じて、世界観とシュールギャグが素晴らしい。
(冒頭ナレーション以外は)言語の壁を超えた、アニメーション本来が持つ魅力を備えたショートアニメでした。
『作画』
顔が果物という一見チープなキャラデザ、しかし時代劇としてはかなり力が入った背景描写。
細かい描写に拘った、まさに時代劇。30分以上の時代劇アニメにヒケを取らないばかりか、凌駕している。
剣客物としての殺陣も、張り詰めた静…からの、動のメリハリで、侮れない。
…セリフ無しでほぼ完璧に伝わる、アニメーションとして見事です。オンリーワン。
『声優』
冒頭ナレーションの読み上げっぷり中々。
基本的にセリフなし。
『音楽』
シュールギャグ落ちからのEDが結構真面目な曲で逆に笑える。
一見地味ですが、効果音や剣客物特有の雰囲気を醸し出す音響が優秀。
静と動をダイナミックに動かす作画と相まって、セリフ無しで完璧に状況伝わった。
『キャラ』
どのキャラも、まるでセリフが脳内再生されるかのように心情が分かる。
孤高の剣客・赤りんご侍カッコイイ。強い。正に孤高という表現がピッタリなサムライでした。
…でも顔は赤林檎だけど。
赤りんご侍に敗れ続けて落ちぶれていく青りんご侍も、その人生模様がよくわかる。
ある意味本作で一番人間味溢れるサムライでした。
…顔は青林檎だけど。しょっちゅう斬られて無くしそうになるけど。
アウトローなバナナ侍は、謎多き脅威の種族・バナナ族…
バナナって一番柔らかいんですよねぇ…一番、刃物でサクッといっちゃうんですよねぇ…。
バナナの皮は、まさにシュールギャグの切り札!
甘栗侍は顔が固いから強い…ハズなんですが。
抜刀も固いんじゃ意味ないですねぇ…。
甘栗侍、敵に回すと恐ろしい?が、味方だと頼もし…いや、危ないよ!?
他にもパイナップル侍やらアボガド侍等々、どいつもこいつもフルーツばかり。
モブの茶屋の看板娘が(顔は果物だけど)結構可愛かったり、子どももヤンチャだったり、セリフが無いのに実に生き生きとしていた。{/netabare}