R さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
エヴァと世界観や雰囲気が似てるという評価が多く確かにその通りだと思うが、それだけで片付けるのは勿体無い作品。
この作品は今程デジタルアニメーションの製作手法が確立されてなかったゴタゴタの過渡期(2000年代初頭)に作られたものでありながら、全編通じて綿密に練られ演出と劇場版作品かと見まごう程の高い作画レベルが維持されており、製作側の気概がとても伝わってくる作品だと感じた。
キャラデザインは全体的に地味めな方向を向いてはいるが、それは作品の中で2つの種族を描くにあたって人類側をよりリアル志向で描くという作り手のをこだわりが反映された結果であり、実際それがこの作品の世界観によく馴染んでいたように思う。
声優キャストも良いチョイスがなされており、各声優の演技の質もとても高い。主人公と深い関わりを持ったヒロイン達を演じた声優陣の演技は特に光っていたが、周りの大人達を演じた声優達の繊細かつ骨太な演技も良く、両者が互いに引き立て合って相乗効果でこの作品に魂を与えている。
作品のジャンルとしてはSFロボット物を掲げていて、そちらのクオリティも当時のTVアニメとしてかなり高いレベルで描かれていていると思うが、どちらかというとこの作品は、綿密に練られた背景設定から織り成される人間ドラマに目がいく作品ではないかと感じた。視聴者が人間として齢を重ねることで見えてくるものもドラマ部分の演出に組み込まれている為、恐らく同一の視聴者が10代でこの作品を観た時の感想と、20代、30代と歳を重ねてから観た時の感想はかなり異なったものになるではないかと思われる。
全26話の枠で描ききれなかった部分も含めてこの作品の難解な設定とストーリーをエヴァの2番煎じだと断じる人もいるようだが、それだけで片付けるのは勿体なすぎる作品である。
どうしても両作を比べたいというなら「ラーゼフォン」と「エヴァンゲリオン」それぞれのTV版最終話までを初見で視た後の感想が、この作品とエヴァを分かつものになるのではないかと、個人的に思っている。
この作品を最後まで視聴し好きになられたのなら、劇場版は是非とも観ておくことをお奨めします。話数枠の都合でハショられがちだった部分が補完されていて未消化だった所がいろいろスッキリします。