「牙-KIBA-(TVアニメ動画)」

総合得点
62.9
感想・評価
87
棚に入れた
645
ランキング
4654
★★★★☆ 3.7 (87)
物語
3.8
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.7

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.5 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ダークファンタジー、スタンドバトル系。日朝とは思えぬ重厚な全51話、見応えはありますが…上級者向けかも。

トレーディングカードゲーム原作ながら、丁寧で重厚なドラマが持ち味の全51話の大作です。
主人公が異世界に行って、その異世界も複数あって、互いに「シャード」というモンスター使役して泥沼のバトルをする。
複数の勢力と欲望渦巻き、二転三転する悲劇的で先を読ませぬストーリー。
鬱展開や闇落ち上等なダークファンタジー、人を選びそうな作品です。
…全51話の割に冗長さ感じさせぬ良作なんですが、気軽に視聴するのは厳しいかも。

ちなみに前番組は「ゾイドジェネシス」そして後番組は「天元突破グレンラガン」
特に人気抜群のグレンラガンに比べ地味ですが、本作も「知る人ぞ知る」隠れた良作です。
…トレーディングカードゲーム原作、促販よりも重厚なドラマ、ある意味「WIXOSS」の先輩かも。

{netabare}『物語』
主人公・ゼットと親友のノアが暮らす世界「カーム」は我々の世界に近いけれど、色々と退廃しているディストピア。
カームの不良少年ゼットが、なりゆきで異世界「シャード世界」に転移、そこは「シャード」というモンスター使役して戦う「シャードキャスター」の世界、ゼットもまたシャードキャスターとなり、複数の世界同士が抗争する戦乱に巻き込まれていく…

バトルはポケモンというよりも、デジモン方式に近い。
スタンドっぽいシャードはオートで勝手に戦う感じ、その間シャードキャスターはライトセーバーみたいな武器で白兵戦やる。
バトルシーンが今一つチープな感じですが、時折気迫を感じる。
…正直、個々のバトルはイマイチ。でもノリと勢いはあるので、何となくのライブ感を楽しむタイプか。

世界が複数あり、シャードキャスターによる「シフティング」という転移術で行き来する。
…とにかく世界・勢力が多く、複数勢力が絶えず戦乱している混沌とした展開多いです。
物語を大きく見ると「ゼットとノアの成長と衝突、葛藤」で、そこに多数の思惑絡んで、泥沼の戦乱が続く感じ。
ゼットの成長が非常に丁寧に描かれるのが本作の特長なんですが…全51話じっくり観ないと劇的には分かり辛い感も。
主人公ゼットよりも、時々のゲスト達のドラマが目まぐるしく展開していく為か、ゼットのドラマなのだと(最後まで観ないと)気付き難いです。
登場人物が狂気や悲劇に陥っていく展開連発な事もあり、意外性はかなりのもの。
お陰で51話ある割に飽きないのですが…終始、諸行無常感ハンパ無い。
最初良い奴でも、闇落ちする人多すぎる…。
とにかく、先が読めぬ意外性が持ち味、意外なキャラが意外な事やらかしたり、意外な末路辿ったり…。
序盤から、ノア編のディストピアの悲劇は、日朝とは思えぬサツバツさに唖然。

序盤は「テンプラー」という世界(主にゼットが拠点とする)で割とゆっくり進展しつつ、「ネオトピア」という絶対規律のディストピア(主にノアがお世話になる)でのノアのドラマを交互に。
ノア編の方が面白いです。
絶対規律の闇を描きつつ、次第に感化されていくノア。
奔放なゼットと、親友同士、生き方の違いが鮮明になっていく過程が切ないです。
…ネオトピアのディストピアっぷりを描きつつも、最終的に絶対規律を全否定するドラマでは無い辺りも面白い。

異世界の一つ「タスク」と「ジーモット」の抗争、「テンプラー」も巻き込まれたり、ジーモットも滅ぼされた王家の姫レベッカと、野心家ヒューで一枚岩でない辺りの勢力関係の混沌さ。
初視聴時、侵略者タスクが悪でレベッカ姫のジーモットは抵抗勢力と思いきや…ジーモットも大概酷かった辺り、本作は「どの陣営も信用ならん」です。

20話でゼットとノアのドラマが交わる辺りからが本番、面白くなってくる。
まあそれ以前もレベッカやノアの悲劇は見所十分なんですが…重すぎる。
トーナメント戦で各陣営も出揃ってくる…キャラや思惑が混沌としている中、ゼットとノアの決別や、ロイアの迷い等のキャラドラマが丁寧。

30話辺りから本格的に各陣営の野望が動き出す。
どの陣営も正義も悪も関係ない感じ、とにかく情勢が混沌としていて先が読めない。
ネオトピアがタスク・ジーモット連合に侵略される攻防戦は熱かった。
別にネオトピアも善とは思えんので、どっち勝っても負けてもどうでも良いのが、なんとも…
どう見てもディストピアな絶対規律が、全面的に悪ではない描かれ方は意外でしたが、悪く見るとカタルシス的に分かりづらい。良く見ると、価値観に多様性感じました。

以降後半ストーリーは加速していき目が離せないものの、ポッと出のキャラが暴れたり野望持ったりヒロインしてたり、忙しない。
…面白い事は面白いし意外性はあるのですが…感情移入するヒマが無いのは欠点。

本作のキャラが人格狂っていくケース多い理由も、きちんと終盤に判明。
親しい人含め幾多の悲劇を経験しつつ、それでも本物の強さを捨てずに成長していったゼットが、力に飲まれてしまった親友ノアと対峙していくクライマックスは、全51話の丁寧な積み重ねの賜物、良かったです。
全51話をかけて、多数の勢力と思惑が力に酔って狂っていく様を丁寧に紡ぎつつ、親友同士のドラマとラスボス戦に繋ぐ、ラストの余韻も素晴らしい。見事でした。

総じて、シャードという存在を巡って力に飲まれていく悲劇を、混沌とした先の読めぬドラマで駆け抜けたアニメでした。
全51話、確かな見応えのある力作ではあります。
難なのは、話が混沌とし過ぎている事と、主人公ゼットが状況に対し主体的ではなく、成長やカタルシスが分かり難い。
せっかく育ってきたヒロインや敵役がアッサリ退場していく為か、感情移入の軸が見え辛いです。
…1話1話は先が気になる、全話通しても重厚で見応えある。
ですが、凄く面白いか?と言えば…微妙な気もします。
先が読めないので続き気になるんですが、どこかに感情移入できるワケでも無いので、その時々のライブ感は面白いのですが、一方で延々と迷走している印象も。
でも、その微妙さも含めて、オンリーワンな魅力あり。
51話を(比較的)飽きずに完走させてくれた辺り、やはり凡作では無いと思ったです。
物語評価は4点でも遜色ない良作なんですが…欠点もあるので。


『作画』
キャラデザが地味。初期よりも22話辺りから若干改善されますけど(ロイアは初期より可愛くなってる気が)
バトルが今一つなのが本作の弱み。シャードのデザインはアミルガウル等一部はカッコイイんですが、バトルシーンは単調。
殺陣も単調なんですが、割とその場のノリと勢いでゴリ押しする感じの強引さは嫌いじゃ無いです。

『声優』
キャラ多い中には安定しなかったり、役の兼業も多いです。
ゼットの吉野裕行さんがはまり役、ゼットの奔放さと芯の強さばっちりでした。
ロイアの水樹奈々さんのヒロインっぷり安定感あり。
家中宏さん、井上喜久子さんの狂いっぷりがスゴイ。
井上麻里奈さんは当時新人、悲劇のヒロイン・レベッカ姫の他に複数キャラ演じており、注目かも。
山口勝平さんの珍しい悪党ゲス演技も絶品。
「境界のりんね」のりんね父と桜ちゃんじゃないか!奇しくもヒロインとゲスw
立花慎之介さんと遠藤綾さんも複数キャラ出演、遠藤綾さんの幼女も絶品。

MVPはノアを好演した堀江一眞さん。出演作は少ないけれど、本作のノアとても良かったです。


『音楽』
OPは26話までの「Sanctuary」以降の「儚く強く」共に良曲、テーマも心に響く。どちらかというと前半の方が好み。
EDは前半ラップ調で台無し。
BGMは中々で、作画面での拙さをある程度補っている。でも単調な面も。
…SE(効果音)で頻繁に「カン☆コーン」
放送中の「遊戯王アークファイブ」でも頻発、この頃からカンコーンてあったんですな。

『キャラ』
非常に個性的でキャラは立っており、層も厚いのですが…
とにかく、すぐ死ぬ!とんでもない目に遭う!大抵、とんでもない事になる!
キャラの行く末が全く予断を許さぬのが本作の凄い所。
…ポッと出の新キャラが、感情移入できる前に退場したり、キャラ多過ぎて混沌としてしまう面も。

主人公のゼットは一見粗暴で不器用な少年だけど、最後まで一貫して欲望や力に飲まれる事なく己を貫いた。
51話かけて着実に成長した良主人公…なんですが。
ストーリー自体が混沌とし過ぎていて、彼自身は状況に流されがち。

親友ノアの方が共感し易いです。
ゼットと対称的な優等生が、数々の壮絶な悲劇と絶望の果て、変わっていく。
自分に無いモノを持つゼットへの憧れが、戦乱と力に飲まれていく…親友同士、切ない。
サギリへの優しさや、キーラとの仄かなラブコメの波動、ダイアナとの関係性の変化など、何気に女性陣との絡みも見所でした。

ロイアはメインヒロインとして十分可愛いんですが、やや空気になりがち。
ゼットとラブコメ感が惜しくも足りなかった。

レベッカが本作で一番ヒロインしていた。亡国の姫、逆賊に弄ばれちゃう悲劇性…
健気な幼女サギリちゃんが本作一番の萌え要素。良い子でした…。
ツンデレなキーラ、鉄の女と思いきやノアにデレデレだったダイアナなど、女性陣に印象的キャラ多し。
ゼットの母サラの母親とは思えん狂気もスゴイ、牙はとんでもないアニメだなぁ…。
ミレッドは遅れてきたメインヒロイン。清楚で無垢な囚われのヒロイン良かったんですが、登場が遅すぎた。

悪役はヒューが一番カリスマあった。
レベッカ姫を弄ぶ奸智、でかい野望、秘めた狂気、ネオトピア人民への残虐性、どれもピカイチの名悪党だった。
彼が途中脱落したのは惜しい。

お調子者だが実力者のロベスは本作の鬱とは一人無縁の男、意外と活躍しなかったのは残念。
デュマスさん、序盤は理想的な大人の人格者だったのに…ある意味本作を象徴するキャラ。
老師ジーコは最後まで黒幕か善意か悟らせぬ。
ネオトピアの独裁者ハイラムが土壇場で善性見せたのは、何気に好印象。{/netabare}

投稿 : 2016/08/11
閲覧 : 363
サンキュー:

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