STONE さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
765プロという家族
原作は未プレイ。
アイドルと言うとまず歌とダンスを主体としたライブを思い出すが、本作品はアイドルという
職業を切り口に様々な仕事を見せており、そういう意味ではお仕事ものという側面が強い印象。
まずは初回が目を引いた。
多くのキャラが一度に登場するような作品の場合、初回はどうしてもメンバー紹介のような
要素が必要になるが、深夜番組で見られるドキュメンタリールポのような形式でメンバーを紹介
していく形が面白い。
ここで各メンバーの人となりが判ると同時に、彼女達を抱える765プロの実情、、、仕事には
恵まれていないことや家族的な雰囲気であること、更にそんな中で如月 千早がどことなく
浮いた存在であるが一話の中でうまくまとめられている。まあ千早に関しては何故、いわゆる
シンガーを目指さずにアイドルを目指したんだ?という疑問を持ったりもしたけど。
各メンバーに関しては割とバラエティーに富んだ印象があるものの、極端に際立ったような
キャラはおらず、そういう意味では地に足が着いた印象。
展開としてはトップアイドルを目指す765プロの面々の活躍を描くといった体で、特に前半は
浮上のためのきっかけ作りといった印象。
主役はプロデューサーで、メインヒロインは天海 春香なのだろうが、切り口によっては
春香が主役とも言えそう。このプロデューサーに関しては「それはマネージャーの仕事
じゃないの?」と思うようなことが多々だったが、この世界のプロデューサーというものは
マネージャー業も兼業しているみたい。
プロデューサー、春香という中心的存在こそいるものの、群像劇要素がかなり強く、
お当番回とも言うべき、それぞれをピックアップした回があるのだが、この回もピックアップ
されたメンバーだけでなく、他のメンバーの魅力を引き出したり、成長を促すようなことも
多い。
更に各話で解決する問題とは別に、前半の星井 美希の竜宮小町に対する問題や、後半の
千早の過去からくる問題などの、単話では解決できない問題の予兆も描いており、全体的に
無駄のない構成という印象が強い。
前半後半のいずれも印象的だったのはメンバーの結び付きの強さで、シリアスな問題に対して
全員で解決しようとする展開や、全員参加の遊びや仕事での仲の良さの描写など、この辺は
かなり徹底的に描かれている印象が強い。
ただ最初から団結しているため、他作品でも見られるような主役の力によってバラバラだった
コミュニティが一つにまとまっていくような展開はなく、プロデューサーの敏腕さのような
ものは弱い。まあ、このプロデューサーは皆と共に成長していくプロデューサーのようでそれは
それでいいかなと。
後半になるとそれぞれがアイドルとして人気を得ていく中、前半ほどの時間の共有ができなく
なってくる様が描かれていくが、全体を通じて仲の良さを描いた分、このすれ違いがかなり
寂しさを感じさせるものになっており、これが終盤の春香の問題の伏線にうまいこと繋がって
いる。
この後半では障害の一つとして黒井 崇男率いる961プロの妨害が出てくるが、この辺に
関してはやや荒唐無稽さが増してしまったかなという感があった。
この後半に関してはまず千早の過去からの問題が出てくるが、ここで印象深かったのが春香と
いう存在で、中心的立ち位置ゆえに逆にオーソドックスな個性の設定が地味な印象を与えて
いたが、ここで彼女が765プロの家族的結びつきの象徴だなと改めて思わせてくれる。
終盤に個々のすれ違いが形となって、春香の問題が浮上してくる。
春香の悩みに関しては、765プロが変わっていくことに対する寂しさのような感情的なものが
発端なのだろうが、家族的結びつきが力の源泉である765プロのアイドルの場合、今は上昇期で
皆がうまくいっていても、この先に誰かがつまづくようなことがあった場合、それを支える
場所は必要だったはずで、それをメンバーに気付かせてくれたという点でも春香の危機感は
間違っていなかったような気がする。
ダンスシーンに関して「ラブライブ!」、「アイカツ!」、「プリパラ」など3DCGが主流の
中、手描き作画であることが印象的で、手描きの魅力が堪能できる。
手描きゆえに各話にライブシーンが入るようなことはできず、ここぞというところに
絞り込んでいる感が強いが、ここでは歌とダンスのみがアイドルの仕事ではないという設定に
うまいこと助けられているみたい。
代わりに挿入歌が多用されているが、これが形としてはBGMであるものの、歌詞でキャラの
心情や状況をより表現している点で、ミュージカルのような効果を持たせているみたい。