101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態：観終わった
ポスト法治主義世界における人間のありか
先鋭化する犯罪、テロとの戦いに人権など邪魔だ。
青少年に悪影響を与える物はことごとく禁止にするべきだ。
汚い景観は全てホログラムで隠蔽してしまえ。
人間が負いたくないリスクと責任はシステムに転嫁してしまおう。
本作は現代社会で萌芽しつつあるこういった数々の極論。
それらがもたらす近未来の可能性、嫌～な予感を見事に映像化した、
優秀なSFアニメだと思います。
特に印象的だったのは本作が法治主義崩壊後の世界に構築された社会だと言うこと。
一定値を越えた犯罪係数が計測されれば、令状なし、裁判なしで投獄、抹殺処分。
社会のために基本的人権は愚か、酒もたばこも敬遠。
酷い人間になると{netabare} 刺激がなさ過ぎて病気になってしまう。{/netabare}
そんな世の中でも折り合いを付けていこうとする人間。
殺戮本能も含めたヒトの野性を奪還しようとする意志。
交錯する価値観から生まれる、社会システムの根幹を揺るがす事件は、
これからの人間の在り方を様々な角度から問いかけてきます。
作画を高評価にしましたが、私は特に、綺麗な外見に揺らぐ違和感の表現が素晴らしかったと思います。
綺麗なホログラム映像に覆われた背景に生じる僅かな揺らぎが示唆する虚構。
人間らしい表情の中に紛れる作り物ならではの無表情。
これらの違和感を視聴者に伝えるためには、精緻に作画し尽くして、
揺らめかせたい所だけ綻ばせる、この上なく面倒臭い作業が必要ですが、本作はそれができています。
CGの発達により十年後にはさらにきめ細かなアニメ作画が出てくると思います。
けれど私は違和感表現を追及する、この変態性すら感じる作画姿勢に対して、
十年後もきっと星★5つ付けるのだと思います。
音楽も秀逸で、初回鑑賞途中で、イヤホン、ヘッドフォン視聴に切り替えたくらい。
主題歌も良曲揃いで特に後期OPアニメで、タバコから蛍光ピンクの紫煙を噴きながら、疾走するシーンなどがスタイリッシュで堪らなく好き。
お気に入りのキャラは征陸（まさおか）智己・執行官。
会議室じゃない現場で男気を見せるタイプの昔気質なおっさん刑事タイプ。
社会システムがいびつに変更されても、こういう熱い堅物はやはり組織には馴染みません。
それどころか{netabare} 親子関係も壊れがち。刑事ドラマのおっさんは100年後も家庭不和なようです……。{/netabare}
蛇足
ところで、本作において、近未来、私が暮らしている北陸地方は、
{netabare} 一面麦畑ｗ食糧供給専用地になっているんですねｗ
人口減と東京超一極集中という未来予測を極論へと大胆に振った映像描写。
突き付けられると複雑な気分になりますｗ
今でこそ北陸新幹線だ何だで旅番組でちやほやされている北陸地方ですが、
100年後は新幹線かがやきが無人の麦畑の中を疾走したりするのでしょうかｗ
シュールな光景ですｗ{/netabare}
