田中タイキック さんの感想・評価
3.4
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
たった何年前、もう何年前
2015年11月27日 公開
NHKの短編オリジナルテレビアニメ
とある港町に住む佐藤陽菜は仮設住宅で漁師の父と二人暮らし。
陽菜の夢は羽生結弦選手のようなフィギュアスケーターになること。
大会に向けて練習を重ねるある日、小学生の頃に埋めたタイムカプセルが見つかる…。
2分版とか5分版とかあるらしいけど私は25分版を視聴。
復興応援キャンペーンの一環として制作された本作だけど特徴的なのが
「地震」「震災」「津波」「復興」などのワードは劇中で一切触れられていないこと。
運動場に建てられた仮設住宅、テレビの横には位牌があり周囲は更地だらけ。
小学校建て替えのために掘り起こされたタイムカプセルを見て「カプセル、水入っちゃったんだ」と言う主人公。
言葉は必要なくて、日本人なら否が応でもあの日の悲劇に直結していきます。
だけど改めてあの日は辛かったよねーって趣旨の作品ではなくて、
悲しむ時期はもうとっくに過ぎ去っていて、もう忘れてしまうくらい過去の出来事になりつつあるということ。
象徴的なセリフで7年前の母の思い出を見つけた時
「たった7年前なのに忘れたのか」と怒る父と「もう7年前のことだから当たり前じゃん」と言う娘。
大人と子供で時間の流れや現実の受け止め方の違いを印象的に描いていたシーン。
基本的には被災地を舞台にしているって所以外は変わった点は無く
淡々と進む物語に何か強いメッセージ性は無いですが
故に気付かないくらいに変化の小さい日々を懸命に生きる主人公はとても眩しく映り
街を元に戻したいと願って過去に囚われてしまう親父は少し悲しく映る。
過去を見る者、未来を見る者。街を出ていく者、残る者。忘れてしまう者、思い出す者。
そのどちらが良いのかは見てる私は判断しかねたけど、
そもそも良い悪いで語る話ではないのかもしれないけど。
そんなことを少し考え直すような、じんわり暖かくなるようなタッチで描いたお話でした。