reath さんの感想・評価
4.9
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ちょっと胸を締め付けられる恋愛描写がメインの作品
大きなくくりでいうと、海に住む人間と地上に住む人間の恋を描いた作品。
メインの登場人物は海に住む方の幼馴染4人組で、その四人組の関係変化がこの作品最大の見どころかなと思います。
物語全編を通して恋愛がメインで進むので(しかも三角関係もの)見ている最中色々胸を締め付けられたり、とても切ない気持ちになる作品でした。
主要登場人物全員が恋愛関係で色々悩んだり、葛藤していく話です。
でも変にドロドロしない。皆一途でまっすぐな想いを抱えているため、むしろ真っすぐ過ぎるその思いに胸を締め付けられます。
物語終盤(ラスト3話)になるまで、誰が誰と引っ付くかわからないため、ほぼ全話通してやきもきした気持ちに捕らわれることになります。
そういうちょっと心が抉られる、切なさを許容できるなら、繊細で綿密に描かれたヒューマンドラマが非常に完成度の高い作品になっているので、観て損はないでしょう。
ただ、恋愛関係ものなので、登場人物が振られるとか、恋が実らないという場面も出てくるので、そういうのがキツイと思う人にはちょっと注意したほうが良いかもしれません。
{netabare}
ここからネタバレ感想になりますが、実は物語序盤の5~6話までで、もう誰が誰とくっつくかわかる描写になっています。
特に光とまなか、紡とちさき、ちょっとわかりにくいですが、要とさゆもこの時点でくっつくことが予想できます。
っというのも、序盤ですでにこの二人きりでの描写が非常に多くなるためです。
特にわかりやすいのがまなか。まなかは1話で紡との運命の出会いを果たし、紡に惚れていっているように描かれますが、2話のひー君が自分を探してくれていたことを聞いて、すぐに紡よりも光を選んでます。
まなかにはこの時点で恋愛感情というものを自覚してないので、紡に対してドキドキはしてますが、惚れている訳ではないと思います。
その証拠に3話以降、まなかは紡に対してドキドキしている描写がかなり薄く描かれるようになり、どちらかというと光と一緒に居ることを選ぶ場面が増えてきます。
紡を見るよりも光を見る姿の方が強調されています。
紡ぐを見るときの目は、普通の憧れでほほを染めるのに対して、光を見る目は、涙を潤ませたり、感情がぶわっと湧き出す感じで描かれてます。
もうこの時点でまなかは光を十分気にしており、本人は恋愛の自覚がありませんが、まなかは光にぞっこんなのが分かるようになっています。
光からの描写では紡に気があるように描かれていたり、冬眠の話が出たときに地上の人たちと離れる事や結婚とかいう言葉で、ミスリードを誘っていますが、実際は誰よりも先に光のもとに行くのはまなかですし、冬眠の話は誰が先に目覚めるかわからない。もう会えないかもしれないという理由で光とも離れ離れになるのではと怯えている事が描写から読み取れます。
また、まなかは光に抱きしめられたあとに急に光を意識しだします。そして光の告白前に、すでにうみうしに気持ちを話してます。なぜ告白されたときに拒絶したかは、ちさきと同じ理由で「幼馴染の関係を壊したくなかった」からです。
まなかの気持ちについては、こうして一期で十分描かれているため、2期で気持ちを語る部分が殆どなくても、まなかが光が好きな理由が十分わかるようになっているのです。
一方ちさきの方は、1期終盤までは光のことが一番好きです。ただ、2期に入って紡と共に過ごすうちに、ちさきの中の一番がどんどん紡に傾いていき2期開始前にはもう答えは出ていると思われます。
ただちさきは、幼馴染メンバー4人のなかで一番幼馴染の関係にこだわっていました。一番変化を望まない人間として描かれていました。
ちさきは多分この作品の中で最も切ない存在として描かれています。
ちさきは1期の最後で地上に残ることを選んでしまいます(紡を助けた後に自分も海に飛び込み皆と同じように冬眠する選択もできた)。
その結果、ちさきだけは大学生になり、他の幼馴染は中学生という、幼馴染の中でも浮いた存在になってしまいます。
もう他の幼馴染とは同じ目線で物を見れなくなっており、まなか復活後の幼馴染の集まりでも自分だけが違うということを常に意識してしまい、病院にいくという理由で早々に抜け出してしまいます。
ちさきは大人になっていくに従い、どんどん大切なものをこぼしていってしまいます。そしてこぼした分だけ、紡への想いを強めていっています。
でも幼馴染としてちさきはコレが耐えられません。皆の時間が止まっているのに、自分だけが色々なものを失い、そして色々なものを手に入れていて、いろんなものが変わっていってしまったことが、耐えられません。
だから、光に変わってないと言われたとき、ちさきは救われました。
この光の言葉があったからこそ、ちさきは幼馴染メンバーともう一度向き合うことができたのです。
紡はちさきの心の準備ができるまでずっと待っていました。
この五年間、紡はちさきが自分を好きだということを自覚できていたでしょう。押していれば、ちさきをもっと早い段階で手に入れられたでしょうが、紡は待ってました。
要とも正面からぶつかりあい、要も負けを自覚してながら諦めきれない気持ちをずっと抱えているうちは、紡も抜け駆けしません。
結局光とのやり取りを聞かれてしまったために、そのまま告白へ踏み切りますが、ちさきは幼馴染の関係を大切にしていて変化を望まないあのままの心をもっているため、紡を拒否します。また、ちさきはこの時点ではまなかは紡が好きだと思っているため、まなかの気持ちが戻らないのに抜け駆けはできないと思っています。
ちさきがようやく踏ん切りがついたのは、要がさゆとくっつき、要がちさきを諦めたことが分かり、まなかが光が好きだとわかったことで、初めて紡と結ばれることを認めます。
それまでは、紡と結ばれることよりも幼馴染の関係を大切に思ってたちさきは、幼馴染の他のメンバーが其々の幸せに向かうことが分かってからじゃないと自分の幸せを望めなかったのです。
だから一番恋人してて、紡しかいないちさきが結ばれるのがこんなに遅かったんですよね。
あと要は、幼馴染のなかで一番不遇な存在でしたね。
立ち位置としては美海に非常に近いです。
ちさきの気持ちを知っていながら、ちさきをずっとあきらめきれない存在として描かれてました。
光に対しては、ある種あきらめに似た感情を抱いていたため、平常でいられたでしょうし、光はまなかに対してぞっこんだったので、ちさきも失恋組、要も失恋組というある種構図が出来ていたため、幼馴染時代は結ばれる可能性がなくても安定していました。
しかしそこにダークホースの紡が表れてしまいます。
光には大丈夫だった要も、紡に対してはなんとも言えない感情を持っているでしょう。ちさきはどんどん紡と関係を結んでいきますが、それを見ていた要は紡に対しては突っかかっていきます。
ここで完全に幼馴染のなかのバランスが崩れていきます。
要は、お船引でちさきが、紡を抱いている姿を見て、精神的なダメージを負った状態で冬眠します。
そして目覚めたら、成長した紡とちさき。そしてあまりにも夫婦のような連携のとれた二人を見て、完全に負けを確信します。それでも、ちさきを諦めきれはしないです。
空っぽの心を埋め合わせてくれるのはさゆの存在です。
要は幼馴染時代から、既にちさきは自分を向いてはいないことに気づいていてそれゆえ諦めに似た感情をもっており、他人に対してとても優しい気持ちで接しています。
小学生組であるさゆと美海は、其々中学生という自分たちから見た成熟した大人に対しての憧れに近い恋心を抱いていくようになります。
さゆは特に自分の想い人と同等になるために必死に努力した存在で、要の心の穴を埋められる唯一の存在です。
常にからっぽで報われないできた要がようやく報われた瞬間なのかもしれないですね。
さて、問題の美海です。
美海は光に惚れますが、これもさゆと同じ、小学生が年上の中学生に守ってもらったり優しくしてくれたことであこがれに近い恋心です。
5年間の長い片想い経験と、光と同い年になれたことで、美海は自分の恋が叶う可能性を夢見ていました。
これ、通常ですと小学生が中学生に恋をしても、年齢差から環境の違いで初恋は実らないのが殆どで、年齢差故の諦めに似た感情で初恋がおわるのがリアルな初恋の一般的なパターンだと思います。
でも、美海にとって、光が同い年になってしまったことで自分に可能性があると感じてしまいます。2期の最初の頃は、そういった自分の憧れや夢がかなった瞬間であり、より一層光への想いを深めていった事でしょう。
先にも述べたように、美海は要と似たような境遇です。
光はまなかにぞっこんであり、これはちさきが光にぞっこんだったのとよく似た構図です。
美海にとって不幸だったのは、美海は光と結ばれる可能性があると思い込める状況に置かれてしまったことです。
光がまなかを取り戻していく過程で、自分の恋が実らないものだとどんどん自覚していく美海は、光の姿勢を見ているうちに、自分の恋愛よりも他人の恋愛を応援するようにシフトしていきます。
これは光が、まなかを紡とくっつけようとする流れに同調する感じです。
先に述べたように美海は小学生が中学生に憧れの恋心を抱くのと似た恋の仕方をしています。
なので自分のあこがれの人の恋愛観に同調していく傾向があります。
美海は光が好きだったのと同様、小学生時代からまなかのことが大好きでした。まなかにも憧れています。
だからまなかが人を好きになる気持ちを失っていると知った瞬間、まなかを救いたいという願いが非常に強くなります。
そしてまなかを救うことに必死になります。
美海の構図は、小さい時に助け支えてくれた大好きなお兄ちゃんとお姉ちゃんを救う事に似ています。
ただ恋愛感情は確かなもので、まなかが光を大好きだという感情と非常に似ている感情をもっています。
裏を返せば、まなかは美海と同じくらい強い感情で光の事が好きです。
美海にはまなかの光が好きだという感情の強さがわかるため、自分から降りる決断をします。
ただ、自分が一番好きな人と結ばれなかったとしても、失恋が辛くても、大好きだという感情は儚く尊く大切なものです。
その感情をもった美海だったからこそ、お女子様の感情を引き出し、海神さまの後悔の念を浄化できました。
最終場面で、光とまなかは結ばれたような終わり方をしてますが、その部分ははっきりと描かれませんでした。
これは美海派への配慮でしょう。
自分は光xまなか派なので、まあ、もっと二人の関係描いてほしかったなぁとは思うものの、ちさきも、要も、結ばれた後の事ははっきり描かずに終わってるので、そういう作品の締め方で全然いいと思います。
さて、長々とここまで書いてきたのですが、ぶっちゃけ自分の一番好きな話は
光xまなか
要xちさき
紡x?
さゆx?
美海x美海に告白した同級生の幼馴染(名前忘れた)
という幼馴染は幼馴染と、結ばれる王道的な展開がすきでした(笑)
変な三角関係なんていらなかったんや!(本末転倒)
いや、この作品もちろん好きですけどね!
{/netabare}