STONE さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「死ぬため」から、「生きるため」へ
原作は未プレイ。
「グリザイアの迷宮」
「グリザイアの果実」の続編でありつつ「グリザイアの楽園」のプロローグ的内容で、両者の
橋渡しとなる存在みたい。
「グリザイアの果実」で謎多き人物であった主人公の風見 雄二の過去が描かれるが、これが
かなり悲惨なもので、児童虐待、レイプ、家族内殺人、児童への性的行為など、地上波
ギリギリといった印象。
ここでは雄二の歪んだ家庭が描かれるが、ある意味分かりやすい両親の歪みに隠れて、
風見 一姫もかなり狂気を秘めた人物という印象で、これは彼女の天才性が産んだもの
なのかな?。
彼女自身には罪はないのだろうが、平凡な女の子であったのなら、父もそれにすがること
なく、風見家も平凡な家庭に終始したのかもしれない。
「グリザイアの楽園」
前半は雄二の現在に至るまでを描いたもので、「風見 雄二伝」という意味では、
「グリザイアの迷宮」とこの前半でワンセットという印象。
「グリザイアの迷宮」では一姫が雄二の人格形成に大きな影響を及ぼしていることが
判ったが、ここではヒース・オスロと日下部 麻子という存在がそれぞれ雄二の人格形成に
大きく関与していることが判る。
結構ていねいに雄二という人物を掘り下げていった印象だが、それでもまだ心情の変化などは
描写不足の印象があり、この辺ばかりは尺の関係で致し方ないところ。
そして、後半では「グリザイアの果実」に登場した5人の少女達が拘束された雄二を奪還する
話がメインで、今度は彼女達から救われるという恩返し的展開はなかなかいい。
タナトスの指示があったとはいえ、そこまで凄い能力を持っていたわけでもない少女達が
国家を相手にミッションを遂行する過程はツッコミどころ満載ではあるのだが、B級ハリウッド
映画のような勢いあるアクションが楽しい。
「グリザイアの果実」で雄二が少女達を救うにあたって、心情的なものはともかく、
能力的にはそれを行えるものを持ち合わせていたわけだが、少女達が逆に雄二を救おうという
行為は、能力を持たないがゆえにより決意を感じさせるもので、これまで築かれてきた雄二との
絆を感じさせてくれる。
ここでは個々の魅力がうまいこと発揮されている印象で、松嶋 みちるのいじられ役としての
立ち位置もより顕著になった印象。
更にこれまで雄二に関わってきた他のキャラが加勢する展開は胸を熱くさせてくれる。
この雄二奪還の過程で一姫の生存が明らかになるが、一姫があれぐらいのことでは死なない
だろうと思っていただけに、案の定といった印象。
マイクロバス転落事故の内容を「あれぐらい」と書いてしまうのはかなりの違和感があるの
だが、それでも一姫のキャラの強さを考えると「あれぐらい」になってしまう。
「グリザイアの果実」での少女達を生かすための雄二の行為が、自身が死ぬための行為である
という、なんとも皮肉な行動原理であることが明らかになるが、それゆえに本作における
少女達の行動は単に雄二を奪還するためだけのものではなく、今度は逆に少女達が雄二に生きる
目的を与える行為だったとも言えそう。
恋愛的には特に特定のヒロインとくっつくということもなく、最終的には皆で南国暮らしと
ハーレム状態?で終わるが、まあみんなの雄二ということでいいんじゃないかと。
全体的には視覚的にも精神的にもきつい部分が多めだが、そもそもが鬱的な話であるわけで、
変にぼかすより、ここまで潔くやってくれる方が個人的にはいい。