退会済のユーザー さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
実験的専制政治
銀英伝に着想を得たとのことだが、最良の専制政治と醜悪な民主共和政という対立構造を使うのではなく、名君ラインハルトを不老不死にしてみたら。というなかなか興味深い発想。舞台の雰囲気としてはアルスラーン戦記や創竜伝のほうが近いかな。
ネットやRPGがらみではない異世界召喚ものって、今となっては逆に新鮮でちょっと懐かしい気分にすらなる。巻き込まれ系ではなく定められていたという点と、舞台設定がよく作りこまれているために世界観に無理がなく受け入れやすい。音楽も安っぽいアニソンには頼らず、古代中国風の世界観を拡張するような壮大なインスト曲で好印象。
異世界召喚ものというと冒険譚を連想しがちだが、どちらかといえば主人公の精神的葛藤と成長に重点が置かれている。他の方も言っている通り序盤は優等生なお嬢さまがしくしくキャーキャーしているだけでイライラが募るが、6,7話あたりでようやく変化のきざしが見られ、話が動き出すと一気に面白くなる。
そこからの主人公の変化はめざましい。自問自答を繰り返しながら様々な人たちとの交流を経て自分という人間を知り、受け入れる。流されるのではなく意志を持って流れる決意をする。
そこに共感できた人にはハマる作品だと思う。
ただ、全体としては4部立てだが構成に難あり。
5話までは導入部でしかないからもう少し簡潔にまとまっていれば…掴みは良いのだから勿体ない。同じように3部も、主人公含めた3人の少女の邂逅とそれ以降が本題なのにそこまでが長すぎる。どちらもそれぞれの状況と心情を丁寧に描写することで話に深みが出るというのはわかるのだけど、ちょっと説明過多な気もした。
それにあくまで主人公は一人という体裁を取っているので、他キャラのエピソードをひとつの独立した物語として受け取れば良いのか、ただの回想なのか(ただの回想にしては尺が長すぎる)、本筋がはっきりせず戸惑ってしまう。
また、1期はキャプションが全くなくてカイキャクとかタイカとかタイホとか作品独自の用語は音だけで聞くと全然イメージがわかずに混乱する。不親切な感は否めない。(2期以降は少し改善されてる)
と、不満はあるにはあるがよくできた世界観でキャラも魅力的だし、台詞もなかなか良い。とても良質なファンタジー作品。
打ち切りっぽいのが実に残念。黒麒麟のその後が気になって仕方なくって…原作読むしかないかしら。