どらむろ さんの感想・評価

4.1
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

マリー脚本＆水島監督の、迷作サイコ「コメディー」？　駄作ながら…ダメ人間動物園的な面白さあり。

水島努監督と岡田麿里さんが組んだ、オリジナルアニメ全12話です。
トラウマを持ち人生に疲れた若者たちが、幻想的な閉鎖集落を舞台に、群像劇を繰り広げる…
ホラー？ミステリー？心理劇？群像劇？
…と、思いきや……
…ドラマ重視あるいはキャラクターに感情移入する大方の視聴者には不評やむなし。

迷作駄作の類でしょう。真面目に物語やテーマ性を期待する視聴者の多くが迷家に迷い込む事でしょう…
でも。私はかなり楽しめました♪正直かなり面白かったです。
ここはあえて少数派であろう、好意的レビューを書いてみる。（客観的に観て駄作なのは承知で）

{netabare}『物語』
「マヨイガ」恐らくは柳田国男の遠野物語に登場する「マヨヒガ」伝説をモチーフにした秘境を舞台に、やたら大人数（30人！しかも1話まるっと自己紹介に費やす）しかも「ほぼ全員まともな奴がいない！」（ここ重要）
とことん人間力に乏しい問題児たちが、この世ならざる魔境に閉じ込められる。
次第に深まる謎。異常事態。ダメ人間たちの狂騒…
物語はミステリーとホラー（…からの、喜劇）の様相を呈しつつ、（ダメダメな）群像劇で混迷を深めていく…。

……結論から言って、大真面目なホラーやミステリーや成長ドラマとしては、かなりダメな作品でした。
ダメな作品ではあるのですが。
1話1話は、面白いです。やたら多い割にインパクトのあるキャラたち（特にらぶぽんさん）の言動、やり取りで…かなり笑えましたｗ

本作の持ち味は、ナナキ村という非現実的な舞台背景で繰り広げられる、人格的におかしい人々の会話劇にあり。
ほんと、良く喋ります。しかも…それがキャラ背景や物語を深める役には立たない無駄話連発なのがある意味スゴイ。

ミステリーとして観ると…ダメ人間だけで人狼やっちゃう感じ？
その危うさが…妙にコミカルなんです。
冷静に見ると、ナナキ村の異常性と狂気に陥っていくダメ集団の危うさ、掘り返される各人のトラウマの恐怖などなど、かなりシリアスや鬱に思えるにも関わらず、どこか間の抜けた雰囲気といいますか、なんか笑える。
ここら辺はマリー脚本でトラウマ群像劇の「М3～ソノ黒キ鋼～」より遥かにエンタメ的には楽しかったです。
…多分専ら水島監督の手腕ですかね。会話劇を面白可笑しく見せてくれる。

…ここら辺は良し悪しではなく、完全に好みの問題でして。
ネットスラングで美少女日常系アニメを「美少女動物園」と揶揄する表現ありますが、本作は正に「ダメ人間動物園」的な可笑しさ。
キャラクターに感情移入しようと「真面目」に観るタイプの人は不愉快かも…
本作は、真面目に観るもんじゃあないです。
…処刑ですショケェェー！な、らぶぽんさんに萌える、サイココメディーなのです！


会話劇が迷走する割に主題は割と分かり易く、OP主題歌「幻想ドライブ」からも何とな～く察せられますが。
それを最終的にうまく纏める事には失敗してしまった感。
でも、私はあえて「うまく纏まらなかった、纏めようとしなかった？」事が、本作ならではの面白みと見ました。
良くも悪くも（いや、9割方悪いんでしょうけど）倫理的な主題構築に失敗している事で、逆に人間らしさを感じるのです。
普通の作品ならば、トラウマとはしっかり向き合って「克服」せねば！となる（マリー脚本のМ3はそうでしたし）
だが、本作はトラウマも自分の一部であり、必ずしも無理に克服しなくてよい考え方。
最終的に、ナナキを去る者と残る者に分かれるラストも、私的に評価してます。
普通の作品ならば、全員が葛藤と成長の末に、ナナキ去るのがハッピーエンドじゃなかろうか。
でも本作は成長を求めていない。ダメ人間たちの何がしかは自分にも当てはまったかも知れない人間的欠点を強調して描かれた姿であり、それが大勢集まりエゴむき出しの迷走した上で、何も成長しない者もいる。
でも、それもまた人間らしさなのかも。

…物語としては、これはダメなんでしょうけれど。
でも私は、そんなダメさも含めて迷家という迷作嫌いじゃなかったです。
キャラ無駄に多過ぎる弊害は大きかったですが、これ程大勢タイプの異なるダメ人間を集めたからこその本作特有の雰囲気であり、また本作は特定キャラの成長てはなく、人間集団の狂気と滑稽さ、でも裏腹の愛おしさをも、ちょっぴり感じるのです。
何も根本的な解決していないかもだけど。
でも、あやふやであっても、彼らの過半数は、三歩進んで二歩下がったワケで…
（出来は非常に悪いとはいえ）人生劇として、決して悪くはなかった（気がする）。
運転手さんと娘さんのエピソードに限れば、少しうるっと来ました。


『作画』
キャラデザは好み、キャラ多い割に個性描き分けられていた。
冗長な会話劇の合間のキャラ間の視点変化や細かい仕草など、丁寧です。
ナナキ村やトラウマ描写も中々幻想的かつ迫力あり。


『声優』
脇役も多数演じてこられた新人声優多く、配役良くハマってました。
酒井広大さんはイラっとさせる気弱少年ばっちり、真咲さんの相坂優歌さんも良いヒロインっぷり。桜Trickのコトネちゃんですな。

イチオシはらぶぽんさんの加隈亜衣さん。可憐系や清純派な印象でしたが…「処刑ですショケェェェ！」こんな狂ったキャラもいけるのか！
小湊るう子のイメージががが…らぶぽんさんでますます加隈さんファンに。

神様の飛田展男さんの（一見物静かだが実は）マッドサイエンティストな狂気も絶品。
…マリー作品М3でもマッドな博士役でしたっけ。


『音楽』
OP主題歌「幻想ドライブ」が主題を的確に捉えていて非常に素晴らしい。
素晴らしいんですが…残念ながら本編が全っったく伴わなかった…。精一杯生きてないやんけ…。
もし本編の出来次第では、最終的に涙腺緩んだかも知れない位の良曲です。
怪奇な雰囲気をしっかり演出したBGMも良質。本編は喜劇ですけど。


『キャラ』
滅茶苦茶キャラ多い割に、会話多いのと妙な偽名、個性的（まともじゃない人ばかり）な為か、かなりのキャラ顔と名前が一致しました。
キャラ間での名前呼び合いが多いのも良い。
それでも大半が捨てキャラなんですけど。
男女問わず、非常に印象に残る（面白い）変人多し。女子は可愛く、男子はネタキャラな印象。
主導的立ち位置のキャラ間のバランス絶妙でした。

主人公・光宗は、とことん流され易い主体性の無さと、チョロい上に内容の伴わぬ頼りなさ、真面目に見るとイライラさせられるダメ主人公。
なんですが。そのダメさも含めてかわいいです。
…Angel Beats！（エンジェルビーツ）の直江君を彷彿とさせる背景ですな。
初めてちゃんと認めてくれた真咲さんに懐くのも、わかります。
未熟ではあるも、彼なりに自分が正しいと思った行動を通し、最終的にナナキと折り合えた。
不人気なのは致し方が無いキャラではありますが、光宗君はちゃんと頑張ったと思う。

メインヒロイン格の真咲さん可愛い、光宗君とのオネショタ（そう年は違わないけど）良い♪
可愛いんだけどどこか胡散臭い辺りも含めて。
…ただ、本編のメインとなるストーリーは今一つ。

スピードスターことハヤトは…これがヤンホモか…。百合にしろBLにしろ、ガチ過ぎると萌えられんなぁ。
真咲さんとの修羅場は本作の見所の一つだった。

こはるんさんは裏表の無いステキな人でした…。
数少ない有能でまともそうなお姉さんっぽかったのに…。

事なかれ主義者ダーハラさん、一見まともそうでいて一番ダメな部類の人。
本作のグタグタな雰囲気のかなりの部分、彼のせい。

ヴァルカナさんはダメな部分も大きいが、良い面も多い人物でした。
迷家キャラでは一番、漫画「自殺島」にいそうな過去。
このメンツでは（比較的）良識あった…でも惜しかった、その惜しさ、キャラとしては好きです。
本作の男性キャラでは運転手さんと並び一番好き。

美影は無能な働き者、一番害悪でした。（ニコニコの視聴者からは「発注ミス」さんの称号が）
でも、彼の暴走誰も止められない迷家勢もダメダメですねぇ。

氷結のジャッジネス君（15歳）素晴らしい中二病にして随一のギャグ要員でした。
ここまてダメな子って、アニメでも中々見ませんよ。


マイマイさん面倒な女性ですが赤面の可愛さは随一。可愛いと思えるのはアニメだから、実際いたら非常に厄介そう。
無口系霊能少女リオンちゃんも萌え。意外と本筋には絡めず残念。

名探偵ナンコさん非常に頼れる。本作随一の有能で数少ない常識人。
だが彼女が主流派になれない辺りが迷家らしい。

神様は研究者として悟りの境地に至った、静かな狂気が印象的。
こういうタイプの狂科学者ってあまり見ないです。


…本作МVPは、らぶぽんさん！
「М3～ソノ黒キ鋼～」のヘイトに相当するネタ担当は、彼女で決まりでしょう。
「速攻即決スピード処刑ェェ！」等の狂った迷言多数、まともな人殆どいない本作でもその狂いっぷりは群を抜いてました。
そして、可愛い。地下室発見して「拷問部屋ですね♪（わくわく）」ダメだこの子可愛すぎる！
現実にいたら危険過ぎますが、まあアニメですし。
本作は彼女がいなければ面白さ半減していた。{/netabare}