boobooboo さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
今敏の傑作
今敏のアニメの中で今敏作品の特徴を出しているのがこの作品。
今敏の作品は視聴者の混乱をあえて引き出すところに魅力があるのだと思う。混乱と言ってもストーリが混乱するとかではなく現実と夢、過去と現在、日常と非日常を複雑に行き来することによりアニメーションの魅力を引き出そうとするところにある。
現実と夢、過去と現在、日常と非日常とかくと単純な二項対立のようなイメージをいだいてしまうかもしれないが、今敏はそこを単純な対比ではなくメヴィウスの輪のような裏表の関係がいつの間にか逆転してしまうかのような構造を好んでいるようだ。
本作品のテーマは「夢」だが決して単純な夢オチなどではない、アニメと言うある意味ある意味最高にplasticなメディアでまさにシュルレアリズムな世界を作り上げる。
作中で粗大ごみの行列の歌う意味不明な歌はまさに「手術台の上の、こうもり傘とミシンの出会い」の美学へのオマージュ。
他の作品の「千年女優」や「PERFECT BLUE」でもその複雑な世界観を味わうことができるがこの「パプリカ」は更なる混乱をもたらしてくれる。
この作品の欠点を上げるなら今敏の積み上げのある意味まとめ的な仕上がりになっていることだろう。そのおかげでクオリティーの高いものになっていると同時に実験的で革新的な要素が他の作品に比べ少ないように感じられる。