ヤマザキ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
男女7人海物語
・・・と、昭和時代の名ドラマとパチンコを合わせたような名前をつけてみましたが(沈)。
実は観始めるのにかなり抵抗がありました。あにこれのあらすじにこうあります。「海と地上、そのどちらにも人が暮らす世界」・・・。実はこれをみて一瞬萎えちゃったんですよ。その他にもね、「海神様」とか「うろこ様」とか「ぬくみ雪」とか「冬眠」とか・・・。
もちろんアニメはファンタジーですし、現実にないことがあっていいと思います。むしろ実写でできないこともできるんだから、あって然るべきだと思います。でもあまりに「現実離れした設定」は、個人的にはちょっと受け入れがたいんですよね。
もちろん「現実離れした設定」にもいろいろあります。タイムリープしたりとか、魔法少女になったりとか、死んだ後になぜか高校に入学したりとか・・・。でも、こういったのって、個人的なものだったり、あるいは「悪魔の証明」じゃないけれど、検証のしようのないことだったりして、「ああ、そういう人もいるのかもなぁ」とか「別にないとは証明できないしなぁ」と思えば、案外すんなり受け入れられたりもします。実際、SMAPの解散騒動の時に、キムタクがタイムリープしてるんじゃないかとかいう説も出ましたしね。
閑話休題
じゃあ私にとって受け容れがたい「現実離れした設定」ってなにかというと、やはり社会制度だったり風習だったり、そういう自分の日常の常識ではかれない「特異な世界」そのものなんです。だから、ガルパンの「戦車道」はなかなか受け容れられなかったし、この「凪のあすから」の「海と地上、そのどちらにも人が暮らす世界」も、「んんんんん?」というのが実際のところでした。想像力が欠けていると言われればそれまでですが、実体験や実感のないものを並べられると、登場人物の気持ちになりきれないような、そんな心理的な壁を感じちゃうんですよね。
ただ、この作品は2クールあります。長いです。だから、途中から慣れました(^^;;。慣れたらその後は・・・面白かったですねぇ。特に2クール目から、本当に面白かった。人間関係ドロドロ。でも、今は亡きフジテレビの午後1時30分からの東海テレビ制作の昼ドラマみたいなドロドロじゃなくて、「爽やかなドロドロ」。・・・う~ん、例えが悪いなぁ。なんというか、切なさが勝ったが故に、後味が悪くないドロドロ、というか。ああ、なんてボキャブラリーの貧困(TT)。
あと意外だったのは、前半、主人公たちの足を引っ張ってばかりいてモブ臭がそれなりに漂っていた小学生2人が、後半すっかり主要登場人物に成長したこと。これは、なんか嬉しかったですね。そこには、モブから主役級、というだけではなく、幼いショタから大人の考えができる女性へという、二重の成長がみられるわけで、これはまた意外な効果だったと思います。このあたりはストーリー展開の妙でしたね。
作画も美しかったです。このあたりはさすがP.A.WORKS。特に海の中の美しさは特筆ものでした。これを表現したいからわざわざ突飛な設定にしたんじゃないかと勘ぐったくらい。音楽もよかったです。いろいろ好みはあると思いますが、私は前半のOP、EDの方が好きです。
キャラデザインは、最初はちょっと目が大きすぎて抵抗がありましたが、でもよくできていますね。キャラのパーソナリティについてもほぼ満点。欲を言えば、紡があまりに中学生の時から老成していたことがちょっと残念。直情型の光との対照もあったとは思うのですが、もっと若者らしい熱いところを見せて欲しかったです。あと、後半になって復活したまなかが不思議と「めんま@あの花」っぽくなってきたと感じたのは、私だけでしょうか?
というわけで、当初設定が受け容れがたかったことを除けば、まだ観たことのない人にも自信をもって勧められる、ほぼ完璧な作品だったと思います。逆に言えば、唯一の不満点だったあまりに現実感のない設定を、なにかしらにうまく置き換えることでなんとかならなかったのかなぁと、そんな残念に思う気持ちも正直ちょっとだけあります。