狗が身 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
おおマルコよ、豚になるとは情けない。
主人公のマルコは豚の外見をしていてポルコ・ロッソと名乗っているけど、豚になった経緯は全く描かれていない。
観てて思ったんだけど、これって要は、とにかく人間以外の生き物であれば豚じゃなくてもよかったんだろうな~。豚にした方が色々面白そうだから、っていうぐらいの軽い考えからじゃないかな。
マルコって、本質は他のキャラクターが言ってるような格好の良い人間じゃないんだよね。
たぶん、戦争によって次々と仲間が死んでいってしまう現実とか、ファシストに傾いていく自国に嫌気が差して逃亡したんだろうし、良い奴はすぐに死んでしまうという持論から察するにマルコはそんな自分の弱さも分かっていて、だから自ら豚になったんじゃないかな。
豚には人間社会のルールは当てはまらない、というような言い訳で立場とか責任、人間関係といったしがらみをのらりくらりと交わしているけど、その割にはラジオで社会に対してアンテナを張っているし、豚になったといってもほとんど顔だけで、手も足も人間の頃のまま。世捨て人と言えるほど人間社会との繋がりは離れていない。
こういうところに、マルコというキャラクターの弱さが表れているよね。
何年もジーナのところに通い続けていてお互いに気が向いているってどこかで分かってるだろうに、一向に進展させることができていないんだもの。
極端な話、マルコという男は奥手で頑固な人間なんだ。そして豚という姿は自己嫌悪を隠す分厚い面の皮ということ。
そんないい歳した頑固で拗ねた男が奮い立つ理由と言えば、それはやっぱり、生気と希望に満ちた若者との交流による刺激となってくる訳で、ここでカーチスとフィオが重要になってくる。
マルコにとってヒロインは間違いなくジーナなんだけど、マルコに影響を与えるのは彼女ではなく、この2人なんだよな~。
この2人が、すごく良いキャラクターをしてるんだよね。
カーチスは若く、大統領になるという大きな夢をもつ野心家であり、女性への求愛も非常にストレートな行動派という、マルコとは対照的な人物。
フィオからのキスに頬を染め、カーチスからジーナの心意を聞かされて赤面するぐらい初心でシャイなマルコのことだ、カーチスぐらいの男でなければ、マルコを焚き付けることなんて出来なかっただろう。
フィオは自分の仕事に誇りを持っていて、無茶をしがちだけどそれは若さが持つ力だ。
彼女の姿はマルコにとって非常に眩しく、羨ましいものだったに違いない。
物語のオチでは結局、マルコがジーナの下に向かったのかは明確に描かれておらず、マルコが人間の姿に戻ったのかも不明瞭に終わった。(カーチスが最後に驚いていたけど、あの時点で体型までは戻ってなかったから、判断に困るところなんだよね)
でも多分、マルコはあの後も相変わらずジーナのところに通い続けて、もっと年月が経てからようやくあの離れに足を運ぶんだろうな~って僕は思ってる。
そういうの、なんか素敵だよね。