Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
現代日本の七つの大罪と絆が織り成す物語・・・
この作品はオリジナル作品だったみたいですね。
TRIGGERさんと岡田麿里さんが原作担当との事でしたが、何ともTRIGGERさんらしい作風の作品だったと思います。
この物語の主人公は、高校生の阿形勝平・・・彼は「身体の痛みを感じない」特異体質の持ち主・・・
どんなに殴られても蹴られても何も感じないという事は、自己防衛本能が希薄になるという事に直結するようです・・・気が付くと、全てにおいて彼は無気力になっていました。
そんな彼に接近したのが謎の少女である園崎法子でした。
彼女は阿形勝平を含めた複数人にある手術を施したんです。
その手術とは、繋がった人の痛みを等分して共有する「キズナイーバー」システムを組み込むこと・・・
夏休み前に突如手術を施された彼らは、園崎法子から出される課題に回答し続ける事となり・・・物語が動いていきます。
「痛みを等分に共有する」
この言葉を額面通りに解釈すると、一人当たりの負担が軽くなるから、その分精神的・肉体的ダメージも減るんじゃないかな・・・これって良いことなんじゃないのかな・・・
と思えてしまいそうです。
確かに物理ダメージの減少に対する恩恵はあると思います。でも、それを踏まえてもデメリットの方が余りある状況・・・にしかなり得ないとしか思えないんです。
一番厳しいのは精神ダメージです。これまで育ってきた環境や生活の違いから、とある事象に対する痛みの感じ方と感じるポイントは、きっとバラバラだと思うんです。
万人が共通して感じる精神ダメージなら、まだ救いはあると思います。何故ならその痛みには発信する側もされる側も共感できるから・・・
でも心に感じる痛みって、万人が共通して感じる痛みの方が圧倒的に少なく、むしろ個人の利己を害された時に痛みを感じる場合の方が圧倒的に多いと思うんです。
そしてその痛みを共有するという事は、「その人がどこで、何で痛みを感じるか」が、繋がった人達の中でさらけ出される事になるのです。
例えばAさんに対する淡い恋心を抱き続けてきて・・・これは誰にも言えない自分だけの秘密・・・
だけど、Aさんに異性が親しげにちょっかいを出している場面を目撃してしまったとします。
決して心中は穏やかじゃありません・・・場合によっては痛みを感じる事があるかもしれません。
でも一度その痛みを感じてしまったら・・・自分だけの秘密では無くなってしまう危険性を孕んでいるんです。
淡い恋心なら知られてもまだ可愛い方だと思います・・・
でも人間の業の深さ故に感じる痛みだったら・・・ややもすると全否定されてしまうかもしれないんです。
これまでオープンにできなかったが故に悩みとなり・・・状況によってそれが痛みに変化する・・・
そういう意味から人と痛みを共有するのは正に諸刃の剣なんだと思います。
強引に痛みを共有させられた7人は、その痛みとどう向き合うのでしょうか・・・
気になる方は是非本編でご確認下さい。
これで終わってしまったら、痛みを共有した事実しか残らない事になってしまいますが、この作品はこんなところでは終わりません。
痛みを共有した先には何があるの・・・?
そもそも何故勝平は痛みを感じないの・・・?
突然現れた園崎法子は何がしたかったの・・・?
痛みを共有する以外にも、まだこんなに伏線が残されているんです。
物語の進展に伴って全てが明るみになりますが、TRIGGERさんらしさに溢れた
展開だったと思います。
7つの大罪というと「憤怒」「嫉妬」「強欲」などが頭に浮かびますが、今回痛みを共有した仲間が抱える「現代日本の大罪」は「いかにも」と納得できる大罪でした。
阿形 勝平:「愚鈍」→物事や人に執着しない無気力な性格。
高城 千鳥:「独善ウザ」→根本的な解決を他人に任せる偽善的な一面を持つ。
天河 一 :「脳筋DQN」→良く言えば熱血漢、悪く言えば粗暴な性格。
由多 次人:「狡猾リア」→キザな性格で、異性に好かれ同性に嫌われている。
牧 穂乃香:「上から選民」→孤独を好むクールな性格。
新山 仁子:「不思議メンヘラ」→表向きは不思議ちゃんだが実は偽不思議ちゃん。
日染 芳春:「インモラル」→極度のマゾヒストで痛みを感じる度に奇声を上げる。
こうして現代日本における7つの大罪を見てみると、万人が当てはまるとは思えませんが、しっかり特徴がカテゴライズされていると思います。
オープニングテーマは、BOOM BOOM SATELLITESさんの「LAY YOUR HANDS ON ME」
エンディングテーマは、三月のパンタシアさんの「はじまりの速度」
これはエンディングに軍配が上がりました。今度カラオケで挑戦してみよう。
1クール全12話の作品でした。物語の内容的に見応えは十分でしたし、1クールの枠内でしっかり纏まっていたと思います。
彼らはまだ高校生・・・今回得られたモノを大切にして未来に進んで欲しいと思います。
しっかり堪能させて頂きました。