狗が身 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
醜く美しい命。
僕にとってジブリ作品は、映像は凄いけどストーリーはあんまり面白くない。という認識なんだけど、本作は例外というか、別格。凄すぎる。
『千と千尋の神隠し』みたいに、ゴチャゴチャした画面の中で細かい動きの多いことがジブリ作品の特長。本作はそれに加えて場面転換に静のショットが多く用いられていて、これがとにかく美しいんだ。ウットリとしてしまうぐらい…。
この作品からは、宮崎氏の「描く!!」という情熱がビシビシ伝わってくる。とんでもない熱量を持った作品だ。
本作はいくつかのテーマを込めて構想・制作されたらしく、確かにそれらテーマをストーリーや映像、キャラクターから感じ取ることができるね。
だけど重要なのはそこではなくて、本作はただひたすらに「テーマを映像に描き起こす」というその一点のみに終始していることなんじゃないかと思う。自然や生き物の美醜をガッツリと描いているのもそういうことだろうし。
例えば、ストーリーの終盤で神秘主義と合理主義の対立が根付いた自然と人間の戦いは、獅子神を討ち取ったことで双方の破滅の危機という予想外の展開を迎える。
アシタカの活躍で最悪の結末は免れたけど、結局問題自体は何一つ解決してはいない。
アシタカというキャラクターは問題を喚起する人物であって、本作のテーマに答えを提示するキャラクターではないんだよね。(アシタカの問いに明確な答えを出した者も、本作にはいない)
こういう問題は、簡単に答えを出してしまうと綺麗事を並べただけの作品になってしまっていたかもしれないし、視聴者一人一人に答えを委ねた本作の結末は、非常に良い終わり方だと思う。
それから、他のジブリ作品と比べてアクション面の凄さも本作の特長の一つだね。
アシタカの殺陣シーンのことも勿論含まれるけど、生き物が血を吐き出したり人の腕が飛んだり、頭が無くなったり…。こういう暴力的なシーンを容赦無く描いているから、具体的で、且つ前述した通り宮崎氏の圧巻の描き込みによって、作品に対してしっかりとリアリティーが感じられる。
本作を観る前と観終わった後だと、本作のキャッチコピーである「生きろ」というたった三文字から感じる重みが全く変わってくる。
これって、凄いことなんじゃないかな~…。