101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
文明衝突点としての戦場
田中芳樹氏の小説、及び荒川弘氏の原作コミカライズ作品は未読。
大河ドラマ、戦記物の好感度に関する個人的な尺度として、
戦闘シーンで大軍勢やそれを無双するイケメン戦士を映像表現して
悦に浸っている内はまだまだ二流。
練り上げられた戦術が戦闘シーンに反映されてこそ一流。
という価値観を私は抱いていますが。
本作はさらに各々の軍勢の出自ならではの、
文明の特徴、民族の気質までもが戦場に滲み出ていて唸らされます。
特に戦争前の一話が効いていたと思います。
元々小説には無かったというシーン。
地味との評価もある初回ですが、
{netabare} 奴隷制に立脚した勝ち続きの王国に蔓延する、
社会全体の矛盾、それ故の侮り。
対する排他的一神教の傲慢。{/netabare}
そこをきちんと描いた上で戦に突入したことで、
戦争が単なる英傑たちの個人技のぶつかり合いだけでなく、
互いの政治や文化に綻びた弱点を突っつき合う、
文明の衝突に昇華させることに成功していると思います。
そういう意味で本作は超一流の戦記アニメと言えるでしょう。
実際の歴史から感化されたと思われる要素も多かった本作。
その中でも徳に対する敬意が印象的でした。
名君たらしめるのは武勇や威厳ではなく、
有能な部下に慕われる人徳。
架空の中近東らしきファンタジー世界が舞台ながら、
『三国志演義』の劉備玄徳ら人徳キャラ大好きな
東洋人の琴線に触れる君主論だったと思います。
好きなキャラは軍師ナルサス。
未来の宮廷画家としての実力は未知数ですがw
軍略のみならず、視野の広い政情分析を土台とした政略を含めた
からめ手の数々が本作に深みを与えていたと思います。
この夏、始まる二期も楽しみな作品です♪