ostrich さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
もってけ。歌い踊る女子たち。
マクロスシリーズは、なぜか「マクロスプラス」だけをリアルタイムで鑑賞し、
それ以外のシリーズは観たことがなかった。
Wikipediaによるとメカ + アイドル(音楽)+ 恋愛という荒唐無稽なアイデアは、
ファーストシリーズに由来するようだが、当然、そちらは未見。
だが、それがかえって、本作を鑑賞するうえでプラスに作用した気がする。
古参のファンなら基本中の基本であろう、このアイデアがとても新鮮だった。
(思い返すと「プラス」はシリーズの中では亜流だったりするのかもしれない。
あちらは。ハードSFって感じだったので、てっきり、そういうシリーズだと思っていた)
特にラスト付近は、すべての要素がクライマックスに向けて収斂しており、
ここだけでも見る価値があったと思う。
が、正直なところ、あまり見る価値を感じなかった部分もないわけではない。
これは個人的な好みなので、一般的な評価とは多少異なるかもしれないが、
私は本作のメカアクションはちと過多に感じた。
いや、あれが板野サーカスと呼ばれるものの系譜であることは私も知っている。
知っているのだけど、それよりももっと観たいと感じたものが本作にはあった。
それは、魅力的なヒロイン二人のステージシーンだ。
いやはや、なぜに、歌い踊っている女子というのはこれほどまでに魅力的なのか。
もちろん、板野サーカス的アクションもすごいとは思ったが、歌い踊る女子には勝てない。
ときおり、サーカスが女子の邪魔をしているように見えてしまった、
などといっては担当なさったアニメーターの方に失礼が過ぎるというものだが、
そういう瞬間はあった、正直なところ。
ただ、この件は、もしかしたら、キャラクター造形によるところも大きいのかもしれない。
なにしろ、ヒロイン二人と比較したときに、
サーカスの主体である主人公のキャラクターがちと弱い。
いや、設定上はいくぶん重いものを背負っている「ふう」なのだけど、
それがシナリオにあまり絡んでいないのだ。
おそらく、ヒロイン二人に惚れられる程度に、
奥行きがある人物にしなければならないがゆえの設定だとは思うのだが、
劇中であまり活かされていないので、
よくよく考えると、コイツ、なんで惚れられてるんだろう、
と思ってしまう。
鑑賞中は気付かなかったが、
私は「なんだかわからないがモテる男」のサーカスより、
壮絶な過去を背負いながら、それゆえに、
全身全霊で歌い踊る女子たちを見たい、と思ったのかもしれない。
シナリオについて、もう一点。
これは個人的な趣味趣向の問題ではなく、
明らかに本作の傷になる部分だと思うのだが、
本作のシナリオは「偶然」が多すぎる。
キャラクター同士が偶然に出会いまくっているのだ。
鑑賞中、何度も画面に向かって、
「おい! なぜ、おまえはそこにいる!」
とツッコミをいれてしまった。
それも「心の中で」ではなく、声に出して。
もちろん、きちんと必然性を描いている場面もあるし、
良い要素のほうが多い作品ではあるので、
なんとか飲み込んで完走できたが、
歌い踊る女子たちの頑張りがなければ、断念していた可能性さえある。
つくづく、女子にもっていかれた(もっていってもらった)作品だと思う。