reath さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
AIRは実はハッピーエンド。AIRはあくまで1000年の宿命を終わらせる話であり、住人と観鈴の物語とはまた別の話なのである。
自分は遠い昔(10数年前)に原作をプレイしました。
その時は物語の意味を理解できておらず、ただただ悲しい作品だと思っていました。
当時、精神がとても擦り減った思いをしたので、その後アニメ化されても敬遠して今まで見てこなかった経緯があります。
最近になって、記憶もあいまいになり、まとめてアニメを見る機会があったので改めてAIRに触れようと思い、最後まで視聴しながら考察サイトを巡っていたら、新たな発見や理解がどんどん深まりこの作品のとらえ方がかなり変わりました。
自己解釈ですが
結論からいうと、AIRはハッピーエンドです。
そしてAIRはエンディングを迎えて、初めて住人と観鈴と晴子の物語が始まります。
{netabare}AIRという作品は、観鈴の死という最後を遂げることで終わってしまうため、とても悲しい物語だという印象を与えます。
ですが、そもそもAIRという作品は観鈴の物語じゃありません。
観鈴でも、住人でも、晴子の物語でもありません。
AIRのテーマは「宿命」です。
地球の始まりから連綿と受け継がれる「星の記憶」を受け継ぐ「翼人」。
その「翼人」の最後である「神奈」は「翼人」の「宿命」として、「幸せな記憶」で幕を閉じなければいけませんでした。ですが「呪い」によって不幸な運命に捕らわれしまい、1000年間、その輪廻によって生まれ変わった人達に不幸な運命を強要してしまいます。
AIRという作品は、その生まれ変わりがこの過酷な「運命」の尻拭いをさせられてしまうお話なのです。
これは個人単位ではなく、1000年にわたる長い時間の仲の物語なのです。
本来は神奈が「翼人」として幸せな記憶を持ったまま人生を終えなければなりませんでした。それができなかったため、「翼人」が引き継ぐ「星の記憶」を人間の体で受けなければならなくなってしまいました。
人間は「星の記憶」を持つには器が小さく、記憶の継承が終わる前に死んでしまうのです。
例え記憶の継承に成功しても、その重みに耐えられず死んでしまいます。
また「幸せな記憶」を残して人生を終えるという使命があるため、綺麗に死ぬことが求められているのです
なので、観鈴は最初から現世で将来を夢見ることはできません。
「普通の女の子」として生まれ変わってからでないと、人並みの人生を得られないのです。
観鈴は、住人からもらった命で記憶の継承を成功させ、晴子とつかんだ幸せで、幸せな記憶をもって最期を遂げることで、「翼人」としての宿命を果たしました。
観鈴の魂は現世を離れ彼方に飛んでいこうとしますが、そらが観鈴の魂を迎えに行き、二人で過去に転生することで、二人はこの時間軸で、生まれ変わり新たな人生を送ることができるようになります。
往人と観鈴の生まれ変わりは、往人と観鈴が初めて出会ったときに海岸で遊んでいた男の子と女の子です。
最終話で男の子が、「彼らには過酷な日々を。僕たちには始まりを」というセリフを言って幕を下ろしますが。まさにこのセリフがAIRという作品を語っています。
つまりこの二人がこれから歩む人生こそが本当のスタートラインになります。
ここで重要なのは、同じ時間軸で二人が生まれ変わったことです。
ここには晴子をはじめ皆が存在してます。
さらに住人は記憶を継承しています。
観鈴自身は、観鈴のころの記憶を継承してませんが、住人から前世の自分を聞くことはできます。それによって観鈴としての記憶を取り戻すこともできるかもしれません。
観鈴は死んでしまいましたが、観鈴本人は生まれ変わって生きている訳ですから晴子との再開の目もあります。
作中でも、晴子は最後に保育士になりたいといっていましたので、生まれ変わった二人が幼稚園くらいなら再会する可能性は高いでしょう。
つまり、本当の住人と観鈴と晴子の物語はここからが始まりなのです。
AIRはあくまでそこに至るまでの、過去からの「宿命」を清算する物語でしかないのです。
たしかにAIRという作品は、悲劇です。
ですが登場人物視点でいくと、AIRは彼らにとってはあまり関係のない話なのです。
彼らにとって重要なのは生まれ変わってからの物語であって、AIRの住人や観鈴ではないのですから。
晴子も同様です。晴子は観鈴との生活で人として何枚も皮がむけて成長しました。確かに観鈴を失ったショックは大きいでしょうが、観鈴は生まれ変わって生きている訳ですから、再会することでまたドラマが生まれるでしょう。
もしかすると3人は家族同然の仲になり、3人で夏祭りいったりするかもしれませんね。
彼らにとってこれはハッピーエンドなのです。
AIRという作品は悲しみでいっぱいの作品です。
でも最後は、これ以上ないハッピーエンドで終わっているのです。{/netabare}