らしたー さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
こはるん声がエロい
マヨイガすごく楽しめました。
終盤になってようやく顔と名前が一致するくらいに大量のキャラクターを登場させ、なんとなくモヤモヤとダラダラと進行しつつ、ぬらっといい加減な着地をする感じが最高です。
この作品の楽しさは、扱うテーマとかお話の完成度とかではたぶんなく、リアリティ希薄な独特の雰囲気と、大人数による猥雑な会話劇にある。というか、それ以外にない。
だいたい開幕みんなで仲良くヒポポタマスの歌を大合唱する人生やり直しツアーってどんなよ。自己紹介のくだりもさることながら、もうなんかあからさまに空気がおかしい。なにこのリアリティのなさ。
冒頭からすでに特殊なシュール&コメディの匂いが色濃く立ち込めており、この独特の雰囲気を楽しめるかが最大の勝負の分かれ目であろう。
ここを気にいるとですね、たとえば処刑ちゃんをあーはいはいらぶぽん乙wwといなす感じとか、マイマイのいちいち素直な反応とか、氷結ハンネ思い出し会議とか、本筋と直接関係ない、ちょっとしたやりとりが本当に楽しくなってくる。ときどき皆が一斉にしゃべったりするんで、話者の特定すら困難なことがあるが、それもまた作品ならではの面白さ。
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広げた風呂敷きれいにたたんだり、張った伏線をあざやかに回収したり、そういうの重視する人にとってはしんどい作品であることは確かであろう。野球のスコアボードで言えば、8回裏まで0行進したあげく9回表で1点入って、最後、選手登録もしてないピッチャーがリリーフで出てきて試合終了みたいな、そんなだもの。観客暴動起こすレベル。
正直シリーズ構成はおいおいってレベルでアレな感じではあるんだけど、なんていうか、そもそも「そこ」じゃないんだと思うよ、マヨイガの魅力は。
第一回人生やり直しツアーを称して、われらがスピードスター先生は「自意識過剰のメンヘラたちのお友達探し」とまで言い切った。言い切りやがりました。わりと冒頭でですよ。
これけっこう肝で、視聴する側も、その程度のじゃれあいを眺めるノリで気軽につきあってあげないといけないんだと思う。そういう意味で人を選ぶ。
商売的なことを言うと、お色気演出レベルをもう二段階くらい上げとけば、ワンチャン視聴者をガッポガッポ導ける道もあったんじゃないかって気もしてる。もう昔のPCエロゲ臭しかしないのねこれ。
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■ナナキについて思うこといろいろ。ラストの展開とか。
{netabare}
人生やり直しツアーを結果的観点で見ると、専門の医師を同行させずに行われるたいへん危険な「トラウマ治療ツアー」である。心的外傷(トラウマ)への対処を、ナナキというバケモノを通じて具現的、荒療治的に表現しようとした試みは、エンタメ領域でそれに挑んだという点も含めてなかなか面白い。
終盤ナナキの説明があったあたりで危惧したのは、心的外傷へのアプローチっていろんなやり方があるはずで、逃げずに排除せずに、「向き合って、受け入れて、克服する」という手法を唯一無二の回答であるかのごとく進行する脚本の行方。このまま終わったらいくらなんでもいかがなものかと、不安に感じていた。
その意味で、ラスト、ナナキ村に残る決断をするグループを描いたことは、実はたいへん評価に値する。というか、絶対にそうであるべき。リオンの「逃げて何が悪いの?」発言は、最低限のバランスで作品を着地させるための、作中屈指の重要ワードだと思う。
もっと言うならば、帰還組一行がすごーく不安な面持ちでトンネルまでの道のりを歩く最終盤のカット。なぜ皆があんな表情をしているかというと、当然あのあとトンネル内で、各人が各様のナナキと対峙し、受け入れる場面があるからである(作中では描かれずに視聴者の想像に委ねられる)。
そこで、やっぱりまだ向き合えず、自分のナナキから逃げ出してしまう者も本来いてしかるべきで、描かれざるトンネルラストバトルからの「帰還組→残留組」という逆流まで描いてたら、私の中の評価はさらに上がったのである。
なぜなら、それを敗北と呼ぶ者は、帰還組の中にも視聴者の中にもいないはずだから。むしろその、他人の傷を思える視点を描いたことこそが、人生やり直しツアー最大の収穫であろう。そこに普遍性と説得性をもたせるために、無駄とも思えるくらいの「他人」を登場させる必要があったはずなのだからね。
みんなで仲良くヒポポタマっちゃったのはご愛嬌か。
あと運転手。ちゃんと財布は返せよー。
{/netabare}