ペガサス さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
月の繭に包まれて静かに眠れ
ガンダム生誕20周年を記念して富野由悠季が総監督として制作した、ガンダムシリーズの終着点。
地上の文明が19世紀頃にまで退化しており、モビルスーツが遺跡から発掘されるという展開には腰を抜かしそうになった。
翻って高度な科学技術を操る月の民との対比は、これまでのシリーズには無い独自性をこの作品に与えている。
宮崎駿は初監督作である「未来少年コナン」にて、科学万能主義の脆弱さを野生児コナンのバイタリティを通して浮き彫りにしたが、
それは富野が科学技術の進歩の上に成り立つ、戦争の道具としてのロボットを描くこととは逆のベクトルを持っていた。
今回のこの作品では科学文明が失われた地上において、それを再び手に入れることが如何に人々を不幸にするかを描くことで、
図らずも宮崎が諸作品で示した文明批判に接近することとなったのは、結局は同じ結論をそこに見出したからだろう。
これまでのガンダムシリーズを負の遺産の黒歴史として内包させることで、
白いモビルスーツというシンボルにより紡がれた過去の物語を、ここに帰結させることに成功した。
最終回の「黄金の秋」は、それら全ての終着点として美しくも深く余韻を残すものとなった。
菅野よう子による素晴らしい音楽が、このアニメに奥深さと広がりを持たせていることを付け加えておく。