あんにゅい さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
超能力社会にて
とある科学のレールガンはとある魔術のインデックスのスピンオフ作品らしいのですが、特にインデックスを見ておかなければ楽しめないということはなく、レールガンだけ見ても十分に面白かったです。
レールガンの監督は「とらドラ」「あの花」の長井龍雪さんが手掛けていますね。長井監督信者の私は是非もなく見ました。
物語の特徴は超能力の格差にあります。超能力は強さごとにレベル分けされていて、レベルのヒエラルキーがキャラの内面に葛藤を生み、ドラマを作り出します。
1期では特に佐天さんがすごくいいと思うんです。佐天さんは、超能力格差社会のなかでレベルゼロ、すなわち無能力者である彼女の視点は視聴者にもっとも近いです。
佐天さんが最も能力に対してコンプレックスを抱いていることは明白で、それゆえにレベルアッパーに強い憧れを抱くのですが、最終的には自らの運命を、無能力であることを受け入れます。その瞬間が最も感動的でした。
佐天さんは超能力社会で特別じゃない自分を受け入れ、むしろ無能力だからこそ見える視点で自分の役割を見出すんですが、これってなかなかできない決断というか選択の切り替えですよね。やっぱり天才とか才能には憧れますが、それは自分に無いものだから隣の芝は青いではないですけど輝いて見えてしまうものです。そういったないものねだりをグッと押さえて、自らの足元のできることにコミットする佐天さんの決意に至る過程を見ていると、なんとも胸に迫るものがありました。
主人公の御坂美琴と黒子の微妙にすれ違う相思相愛関係は素敵ですね。変態な黒子が呼ぶお姉さまの響きには、尊敬と愛欲が入り交じっていて独特な雰囲気があります。
一方通行気味の黒子の愛情表現は表現すればするほど、美琴のガードを固くしているような気がしますが、たまに美琴もデレます。デレるというか素直に感謝したりする場合があります。そんな時、黒子は感動したのちに興奮して事を大げさにしてしまうので、美琴はなかなか素直な感情が言いづらいのでしょうね。美琴のデレがそうして希少になればなるほど価値は上がっていきます。だからか、素直な時の美琴の笑顔にはしびれますね。
黒子と美琴のそうした呼吸のあった関係は、実は黒子の献身あってこそのように思います。美琴は一人で抱え込み、周りに迷惑をかけないように一人で突っ走る傾向があります。それにレベルファイブなので人から妬まれたり敬遠される存在でもあるので、基本的に孤立しがちな存在です。にもかかわらず傲慢にならない美琴を黒子は「優しすぎる」と見抜いています。美琴が強すぎる力に捕らわれて間違った道に行かないように、またヒエラルキーの頂上にいるにもかかわらず優しさを忘れていない崇高さに惹かれて、黒子は献身的にサポートし、強烈な愛情を向けています。レールガン全編にわたるこうした黒子の活躍がとても素敵でした。
とある科学のレールガン、超能力社会という特殊な環境で抱えるキャラたちの葛藤や思い、関係性が見事でした。付け加えておくと、バトルの作画や音楽もとてもよかったです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。それでは。