古川憂 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
終わり悪ければ全て悪い——とは思わないが、作品の印象の大部分に関わってくるのは確か
吉元ますめ原作の漫画をアニメーション化した作品。世間知らずの田舎娘である雨宿まちと保護者的存在の熊であるなつの間で繰り広げられるコメディが作品の主格。
個人的な意見としては、コメディ作品はネタそのものよりも、人物造形の側に作品の質が寄りかかっているように思える。「何をやるか」よりも「誰がやるか」が重要なのだ。それ故に、名が知れ渡っているコメディは登場人物の造形が良くできており、本作もその類例として挙げられる。以前「てーきゅう」の評にて、ハイテンポギャグをアニメーションに落とし込むのは難しいという旨を述べたが、本作のようなほのぼのとした雰囲気の作品なら、むしろ相性はかなり良いと言ってもいい。しっかりと二十五分間見せ切ってくれる良作であった。
さて、特筆すべきはやはりアニメオリジナル脚本の部分だろうか。
以下、原作者の公式ブログコメントより抜粋。
『私は脚本をチェックするのは断りました
プロだから、お任せしました
なのでこんなことをいう資格はないですが
ないので原作ファンとして感想を言わせて貰えれば
よしおのあの発言は、ひどいなあ
と思っています』
アニメ版最終話にて、雨宿まちが村おこしの一環としてアイドルコンテストに、半ば強制的に参加させられる。そして強迫観念にも近い田舎コンプレックスにより、仙台の住民に石を投擲される被害妄想を抱いたまちはコンテスト会場から逃げ出すが、まちを参加させた従兄の良夫は、『村の為に巫女を生贄としてささげた古来の寓話があるように、彼女にも村を活性化させるスケープゴートになってもらわねばならない』というような発言をする。
最終的にコンテスト会場に戻ったまちは再び被害妄想に見舞われ、結局村に閉じこもって生きていくことを決意する——という、なんともブラックな落とし方となった。最終話としてシリアスな展開を用意したいという制作側の意図は十二分に理解できるが、原作者の意向からもずれた落としどころを持って不評を買ったのは、失策としかいいようが無い。終わりよければすべて悪い、というわけではなく、本作は良作の部類として評価できるが、作品の印象を悪く残したのは、間違いない。