なる@c さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
大人の子供っぽさ、子供の大人っぽさ
シングルマザーである母を亡くした少年が、衣装デザイナーとして活躍していて豪邸を持っている叔父のもとに引き取られ、自分なりの暮らし方や立ち位置を模索していく心温まるアニメ。
主人公、千尋の母は親の反対を押し切って結婚していたため、親族と絶縁状態にあった。その家庭事情から、千尋は母の死後、叔父である円(まどか)の家に引き取られることに反発した。
しかし、連れられた屋敷の汚さを見て、家事・掃除が得意な千尋は居ても立っても居られなくなり、掃除を始める。その様子を見た円と秘書の篠崎は、千尋をただの「姉の息子」として「保護」するという考えから、衣食住・学費を提供する代わりに屋敷の家事を一任するという「対等」の関係を築くという考えに至り、千尋に提案する。
「保護」ではなく「対等」であるという設定は、千尋の円に対する態度にも表れる。円が部屋を散らかした時や、無断で猫を持ち込んだ時、千尋は歳上である円に対しても厳しく接する。常に礼節を欠いているというわけではないので、スイッチのON/OFFが良いコメディ要素となっている。
シンプルではあるが、良い設定だと思う。
ちなみにタイトルの『少年メイド』とは、円が千尋の作業着を作る際、千尋が男であるにもかかわらずフリルの付いたメイド服を製作して手渡したシーンから来ている。円は男性服より婦人服の方が作っていて楽しいと思っていて、他意はない。今作は女性向けではあるものの、ボーイズラブ的な描写はほとんどない。
また、某サンデー連載執事アニメはバトル、ラブコメ展開が満載で弾けた内容となっていたが、今作の千尋は与えられたメイドという役割をしっかりとこなす。その上で、気負い過ぎたり、自分は本当に必要なのかと自問したりと、他者との関係について考えていく。そのどれもが小学生として当たり前の疑問であり、リアルで好感が持てた。
割とズボラな円たちとしっかりした千尋、その千尋が時折見せる子供としての戸惑いに加え、桂一郎を影で愛する(周囲にバレバレ)美耶子、円がデザインした衣装でステージを行うアイドルグループ・有頂天BOYSの三人など、内容は盛り沢山。一人はお気に入りのキャラが見つかるのではないか。
結構好きな作品だが、イマイチな点が一つだけあった。
音響監督の指示かどうか不明だが、叔父である円の声を担当した島崎信長のテンションが結構高い。確かに円は私生活がズボラで精神的に子供な部分があるが、今作は千尋、同級生の日野、美耶子、有頂天BOYSの最年少である竜児など、元気・陽気なキャラが多いので、もう少し抑えても良かったように思う。
このくらいである。
魅せるべきところをしっかりと魅せるアニメだ。特に、清掃後に綺麗になったものを見る千尋の目の輝きは、見ているこちらの頬を緩ませる。シリアスなアニメを見る際のお供としてどうぞ。