めいろ* さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
虫
スタンダードな展開で勇者が魔王を倒す冒険ファンタジーか、あるいは魔王がやけに可愛いので裏をかいて魔王が勇者を倒すダークファンタジーかと思って視聴し始めたらどちらも違ったという。
見解はどちらも相違となりましたが、意外性はヒットして勇者と魔王が共存する経済系ファンタジーです。
この作品は和洋折衷ならぬ、魔勇折衷とでも言うんでしょうか(?)
本来は混ざり合う事のないもの同士が混ざることを、期待的観点にて”化学反応”と呼んだりします。
本作はその化学反応が非常にマッチした数あるファンタジー作品の中でも随一の作品です。
さて、唐突ですがここで題名に回帰します。
「自分の運命をつかめない存在は虫です。」
これは作中である人物が、農奴だった少女に言い放った言葉です。
どういう意味かな、と思いました。
なんとなく頭の片隅で理解しているようで、明確な答えにならないまま本作が進行して、やがてあの時虫だと言われた少女はこう言いました。
「どんなに安らげる道であっても、
宝物を譲り渡した人間は「虫」になるのです。
私は「虫」を軽蔑します。
私は「虫」にはならない。
私は、私は、人間だから。」
かつて虫だと言われた少女は、遂にその本質を理解して高らかに宣言します。私は虫にはならないと。なぜなら、人間だからと。
もしこのレビューを見てる方がまだ本作を見ていないのであれば、まだその本質を理解することはできません。
本作を見て、文字通り痛感します。少女の気持ちも、決意も、覚悟も何もかも。
そして感じるのではないかと思います。本作品が読者に、視聴者に伝えたかった事、この少女の宣言にすべてが集約していると言っても、本当に過言ではありません。
たったこれだけの宣言で、僕は涙が止まりませんでした。
特に伝えたい事ほど、上手く伝える事が出来ないとはまさに今の僕のことですが、この作品を視聴した当時からもう何年も経った今現在でも、強く印象に残っている作品です。
本格的な経済の巡り、その中で起こる人種、人格の差別。
虫になるということ。
人間であるということ。
自分の人生に干渉してきた作品は、数少ないです。
そんな数少ない作品の1つ。傑作です。