「甲鉄城のカバネリ(TVアニメ動画)」

総合得点
87.5
感想・評価
2078
棚に入れた
10069
ランキング
150
★★★★☆ 3.8 (2078)
物語
3.5
作画
4.1
声優
3.6
音楽
3.9
キャラ
3.6

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ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

タイトルなし

 「ぽんぽこ」レビューからの抜粋ですね。
 概要は全部あちらに書いていますので、「ぽんぽこ」読了後に読み進めてください。

 次の動画の3:00~3:30くらいまでが参照箇所です。この中に、通常演出の血しぶきとレンズに付着する演出の血しぶきがありますので、探してみてください。暇な人は、演出意図の検討までどうぞ。
 <https://www.youtube.com/watch?v=CcY2f-_z7Sw>

{netabare}
 普通の描き方は、3:17のところの血しぶきですね。
 第四の壁を破っているのは、3:21~3:25のところです。存在していないはずのカメラのレンズに、血しぶきが当たってしまっています。そこにカメラが置いてある(=そこに撮影者がいる)ってことですね。血しぶきの物理的な干渉によって、透明な壁の目視も可能になっています。

 で、ここでの演出意図なんですけど、「ぽんぽこ」レビューで書いてきたメタ的なものではないですよね、たぶん。ここでは、もっと単純なアクションの補完として効果を狙っていたんだと思います。
 血しぶきがレンズに付着したところの後ろの絵は、静止画になっていますよね。3:00~3:30の間で静止画が複数回出てきますので、それぞれと比較してみます。
 具体的には、①3:07の駆け寄りと②3:10の梯子上りと③3:21からの虐殺の比較です。

 これら三つの静止画で必要な動きの量を考えてみると、
①の駆け寄りは、走っているので、そこそこの動きが欲しい。
②の梯子上りは、梯子上りは速さがないし梯子下は停滞しているので、あまり動きはいらない。
③の虐殺は、その激しさをアピールするために、すごく動きが欲しい。
になりますよね。

 この演出量を比較してみると、
①の駆け寄りは、カメラの動きと画面両脇の縦ブレ線がある。
②の梯子上りは、カメラの動きだけ。
③の虐殺は、カメラの動きと画面上下の横ブレ線とレンズに付着した血しぶきの増加がある。
となっています。

 これらから、動きの量と演出量が比例していることが分かりますよね。動きの量が②<①<③となっている中で、②と①で動きの差を出したいし、①と③でも動きの差を出したくて、だから、それぞれに演出を追加していったのでしょう。
 静止画だけだと動きがまったくなくなりますから、迫力が出なくなってしまうんですよね。そこで、まずはカメラの動きを入れて、次にブレ線を追加して、最後に最大限に動きを出す方法として、レンズに付着した血しぶきが増加する様を入れたんだと思います。つまり、アクションの補完ですね。
 逆に言うと、3:17の血しぶきがレンズに当たらないのは、絵自体が動いているからだと思います。絵が動いているんだから、レンズを使っての補完という演出自体がいらないってことです。

 カバネリは動き自体はすごく良いですけど、静止画も結構多いんですよね。頑張るところは頑張って、サボるところはサボるって感じですかね。
 上の①②③のところで、カメラの動きって書きましたけど、フレームワークとしてのカメラの動きと手ブレとしてのカメラの動きがありますよね。②はフレームワークしかなくて、①はちょっとだけ手ブレも入れてて、③は強めに手ブレも入れているって違いです。動きの量とカメラの手ブレ度も比例している。
 で、大体の作品は、静止画で動きを出すときって、フレームワークと手ブレの強弱を中心として、ブレ線や集中線を追加しているって感じだと思います。
 でも、カバネリでは、これらに加えて、レンズという手段も持っているんですね。動きを出す演出の幅が広い。これによって、同じ静止画でも、考え込んでいるときの完全な静止画からすごく動きのあるときの静止画まで、通常よりは多段階の描き分けが出来ているんです。サボるところでも、ただではサボらないぞ!という感じ。

 この姿勢って、個人的には結構大事だと思っています。よく「ぬるぬる動く」っていう表現を見かけますけど、一定程度以上の動きは、あまり効果がないですよね。どんなに動かしても、それを見る人間の目の性能に限界がありますから。
 それなら、動いていないところを如何に動きがあるように見せるかってところに注力した方が、作品全体のボーダーを上げることにつながるような気がします。
 カバネリの動きが良いっていう評価は、もちろん私も同感なんですけど、単に動きが良いってだけじゃなくて、静止画でもサボりすぎないっていうボーダー上げも貢献しているように思えます。


 話を第四の壁に戻します。
 「第四の壁を破る」演出として、コミュニケーションを取る型と映画であることを明示する型とカメラ演出を使う型を紹介しました。
 ただ、「第四の壁を破る」演出がメタ的な効果として出るかどうかを考えてみたときには、これらの型は異なっていると思うんですね。前二者はメタ的な効果が出ますけど、カメラを使う型はあまりメタ的な効果には期待できない。

 クロスロードのカメラ演出を、メタ的に捉えることってないですよね。レンズ汚れやゴーストによって、すごくキラキラしているなっていう程度。
 カバネリのカメラ演出も、メタ的ではないですよね。レンズに増えていく血しぶきをもって、アクション性を高めているのが分かる程度。
 他にも、撮影者の影がフレーム内に映り込んでいるっていうパターンもあるんですけど、これは単純にライティングの失敗というか素人臭さというか、そういうイメージを持っちゃいますよね。メタでやりたいなら、こんな中途半端な方法は取らずに、素直に映画のセットを映す型が選ばれていると思います。

 結局のところ、カメラ演出でメタをやるのって、あんまり向かないと思うんですよね。ですから、カメラを使って第四の壁が破られたときには、カバネリみたいに「別の意図があるんだな」と考えた方が良さそうな気がします。
 この意図を理解させてくれる第9話の30秒間は、とても良い30秒間でした。
{/netabare}

投稿 : 2016/06/18
閲覧 : 336
サンキュー:

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