Pered さんの感想・評価
2.7
物語 : 1.5
作画 : 2.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 1.5
状態:観終わった
感想
{netabare}
※原作プレイ済み
【評価点】
・あの「うたわれるもの」の続編
・良質なBGM
・原作
・一部の内容の改良
・不安定な神様(OP曲)
・双子が可愛い
【批判点】
・監督の「原作やってない。大まかな展開だけ把握してる」発言
・終盤までのハク(主人公)の存在価値
・意味の無い改悪が多い
・ストーリー構成のバランスが非常に悪い
・どんどん劣化していく作画
・鬱陶しいレベルの腐女子ネタ
まず原作プレイ済みの視点で一つ述べておくと、「がっかりアニメ」でした。
自分は前作うたわれのアニメから入ってきた者で、前作が中々に面白かったので偽りの仮面の原作を購入した訳です。
ここで原作について触れておきますが、偽りの仮面の原作自体はかなり面白いのでオススメですよ(粗もボチボチありますし、続編の二人の白皇ありきの内容ですが)。
まあ、アニメがご覧の有様なので面白いとか言っても説得力は皆無ですが…。
・監督の「原作やってない。大まかな展開だけ把握してる」発言
思えばこのアニメのおかしな要素って序盤の序盤から見えてたんです。
当初、原作とアニメでギギリ(序盤に登場した虫。原作ではサソリ型、アニメではムカデ型に改変されていた)のデザインが違う問題が浮上していたのですが、私はてっきりCGの問題か何かだと思っていました。
しかし、実際は監督が原作をやってないからこういう問題が発生してる事が分かりました。
ギギリ問題自体は原作とアニメの発売・放送タイミングからこうなってしまったと考えれば仕方なくもないんですが、ギギリ設定画とかやろうと思えば原作側から入手する事できたでしょうに。
この改変だけで収まってくれたらまだ良かったんですけど、アニメ後半になってから改悪の嵐が吹き荒れてて、このアニメって原作の続編「二人の白皇」に繋げると十中八九破綻するんですよ。
改悪の例
{netabare}
・ウズールッシャ遺跡(タタリとの戦闘)のエピソードが完全に削除。
・ネコネが戦犯回避。
・ホノカ(帝のお側の女性)が帝暗殺の容疑者ではなくなってる。
・帝が暗殺されたとはアニメでは一度も語られてない(あくまで崩御したとしか言われてない)。
・ホノカの侍女として雇用されたエントゥアが影も形もない。(原作でアンジュに毒を盛ったのは、ウォシスに茶を渡された何も知らないエントゥア。アニメではオシュトル本人が毒の茶を盛った事になってる)
・ムネチカ以外の八柱将がアンジュ暗殺未遂時点で帝都にいる(原作ではオシュトル、ヴライ、ウォシスしかいない。ライコウ、デコポンポは城門前で足止め、ミカヅチは遅れて登場、それ以外は登場しない)
{/netabare}
ネコネの改変部分を例に少し解説してみましょう。
{netabare}
二人の白皇の公式ページのキャラ説明を見てください。
http://aquaplus.jp/uta/oro/#character
「その裏で、兄の死の責任が自分にあることに苦悩する。」
兄 の 死 の 責 任 が 自 分 に あ る こ と
アニメではネコネのせいでオシュトル死んでねぇよッ!
確かに原作プレイヤーの間ではネコネが戦犯戦犯言われて不憫でした。
じゃあそれなら改変するかと言うと、否。
それを改変してしまったら、次作の主要キャラであるネコネの行動理念に大幅な影響を与え、結果として二人の白皇のストーリーがおかしな事になりかねません。
なんでこんな変えてはいけない部分まで変えてるんでしょうか……。
{/netabare}
一方で評価すべき点も一つ挙げましょう。
それはヴライ将軍関連の描写。
{netabare}
原作では大体がハクの視点なので、ヴライ将軍が重度の脳筋キャラ(ウォシスに説得されてあっさりオシュトルを皇帝暗殺・アンジュ暗殺未遂の犯人と決めつける等)にしか見えず、ボスキャラとしては利用されてる小物感満載でした。
しかし、アニメではオシュトルとの因縁の描写が色々と示唆されており、それによって犯人どうこう以前にオシュトルと決着をつけたい武人としての側面が強くなっています。
これはアニメ版を素直に評価すべきです(が、まあその部分自体はテンプレ感が否めないので、原作・アニメ共々もう一工夫欲しかったところですね)。
{/netabare}
・ストーリー構成のバランスが非常に悪い
まず何より日常回にウェイトを割きすぎです。
原作でもかなり長かった日常回・茶番回でしたが、もっと大胆にカットして中~終盤を重視すべきだったと思います。
(原作では示唆される程度の腐女子描写なのに)事あるごとに飛び出すクドい腐女子描写はテンポ悪いだけでホントいらなかった。
そういう無駄な事はダラダラダラダラと続けるのに、ハクが過去の事を徐々に「夢」という形で思い出していくのは帝の正体明かしまで全部先送りにして、更にはウズールッシャ遺跡のタタリとの戦闘を完全カットするという誰得チョイスをしてくれました。
このアニメのスタッフは、ハクの過去に関わるイベントを圧縮しまくり&放棄して、それなのにくだらない日常と茶番だけは増量って、一体何がしたいんだし……。
他に問題点として挙げたいのは、ハクの存在価値が希薄な事です。
ぶっちゃけ終盤以外ハクの価値が完全に0でした。
「将の器が~」とかなんとかオシュトル達に言われても、説得力皆無ですわ。
ゲームでは特にそうは感じないのは何故か?
それはゲームではプレイヤー=ハクだからです。
物語を進めていくのは自分自身であり、アクションパートでは将となって皆を指揮して困難を乗り越えていきます。
そりゃあただ神様視点で見てるだけのアニメと比べたら、感情移入の度合いが大きく異なってきますよ。
で、ここで問題になってくるのが、ゲームからアニメへ落とし込む上でしっかりとアニメ向きの形にできているかという事。
ようはできてないんですよ、このアニメ。
なんかスタッフが「ハクは普通のおじさんとして描いた」みたいなのをどっかで見たんですけど、いやそれは違うだろと言いたい。
ただの怠け者だったハクが、いかに立派に将としてオシュトルの後継者となるのかを描かないとダメなんですから、尺が限られたアニメで怠け者の部分ばかりを強調するのは悪手極まりない。
ゲームならアクションパートで十分「将としての器」や「ハクの成長」は表現できるんですけどね。
構成やハクの印象付けから言えるのは、このアニメって何を中心に見せたいのかが全然定まってないんです。
それではいくら前半にキャラ出して茶番繰り返しても、後半の怒涛の展開で盛り上がる事なんてできませんよ。
最後の仮面継承~オシュトル演説くらいは盛り上がったやもしれませんが、あそこは盛り上がって当然なので例外。
結局のところ、アニメ版偽りの仮面はがっかりアニメの域を出ない作品でした。
前作が当時としてはかなりのクオリティだった為にハードルが高くなっていた感が否めませんが、それでももうちょっとなんとかできたのではないかと残念に思います。
続編の二人の白皇のアニメ化が叶ったとしても、同じスタッフならば期待しないでしょう。
※追記
あと、原作のテキストをコピペした為に会話がおかしくなってる個所がありました。
ハクが双子を褒美として賜るシーンです。
ニコ動の一挙より
{netabare}
ホノカを見て、帝の正体がミトのじいさんという事に気付くハク
ハク「あぁぁぁぁっ!」
ざわざわ ざわざわ
ハクの大声にざわめく宮廷
オシュトル「ハク殿」
ハク「あ、すまん……つい」
帝がポンポンと軽く拍手
帝「よい、面白い事を言う男よな。大方、余の姿絵でも見たのであろう」
オシュトル「ゴホン」
ハク「え、ああ……そうかもしれません。あははははは…」
何をもって姿絵云々とか帝は言ってるのだろう?
ハクは何か面白い事言ってますか?
原作だと「以前、どこかで会いませんでしたか?」とハクが訊ねた為に宮中がざわめき、それに対して帝が「面白い事を言う男よな。大方、余の姿絵でも見たのであろう」と言ったのです。
アニメでのこれは全く会話になっておらず、どう考えても意味不明ですし、なんで改悪したのか全くもって理解できません。
もうコレだけで脚本がいかに適当な作りをしているのか窺い知れるってもんですよ。
{/netabare}
{/netabare}