yapix 塩麹塩美 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
グロテスクで美しい聖者たちの行進を見よ
全くをもって優しくない作品である。
極彩色に彩られたキャンパスに紡がれる物語は
重く苦しく苦痛に満ちた尊い聖戦の記録である。
時に激しく時に美しく聖者たちは戦い続ける、
ただ生きるために。
一言でいうと、
クオリティが高い。
絵も音も演出も声優陣も全てが。
作り手側の情熱が伝わってくる作品である。
ただ、観ていて楽しい作品ではない。
視聴者を選ぶ作品と言えるだろう。
特に11話、12話辺りは人によっては観るに堪えない内容となっている(残虐性において)。
だが、この終盤2話こそこの作品の肝である。
執拗に描きこまれる痛みの先に真実があるのだから。
OPとEDについて
{netabare}OP「unravel」
完成度の高いOPである。
何者でもなかった彼が何者かへと変化していく、
その変遷を彩る極彩色な暗闇・・・
その暗闇の先に暗示される未来とは・・・?
FD「聖者たち」
昂ぶった心をクールダウンさせる落ち着いた曲調
繰り返される単調なリズムはまさに「聖者たちの行進」か
淡々と刻まれるその歩調は決して緩むことはなく
いつまでもどこまで続く、延々、延々と・・・
{/netabare}
美しき野獣2匹
{netabare}全開の欲望、
剥き出しの欲望、
他者への配慮を一切欠いた欲望、
そんな欲望を体現したモノだけが放つ輝き。
それをまざまざと見せつける二人の人物、
神代利世と月山習。
趣向は異にするが
「食欲を満たす」という欲望への従順さ
と言うよりも
「食べる」という行為への執着
いや、
執着なんて言葉では表現しえない強い渇望のままに生きる二人。
食べたいときに食べたいだけを喰らい尽くす神代利世
食べたいものを食べたいように味わい尽くす月山習
己の欲望を思うがままに発露し、
誰にはばかることも無く満たす。
なんという美しさ!
何も考えていないのかもしれない。
その満たされた瞬間の先のことなど。
全てを理解したうえで覚悟をもってやっているのかもしれない。
例えどんな危険が待ち受けていようともその至福の時に抗えないことを知るが故に。
いずれにしても眩しいまでに美しい。
常識も善悪も倫理も意味をなさない向こうの世界、
そこの住人のみが到達しえる醜悪な美の体現者が彼らなのである。
{/netabare}
我食べる、ゆえに我あり
{netabare} 生きることとは食べることである。
と言うのは極論だとしても、
食べることとは生きることである。
という主張は正鵠を射ているのではないだろうか。
生命体にとって最優先の命題とは?
それは疑う余地もなく
個としての存続。
だからこそ、生存本能が存在する。
どんな政治信条も宗教的確信も
時には愛さえも
餓えと渇きに打ち負かされる。
生きている限り生きなければならない。
生きいくためには食べねばならない。
つまり食べることは生きることである。
たから、
食べることをオブラートに包んではいけない。
食べることとは、
「他の生命体の命を奪うこと」そのものなのだから。
生きるということは
他の生命を喰らうということなのだから。
{/netabare}
「個」の覚醒
{netabare}彼は優しすぎた。
他者を傷つけることをためらう程に。
他者を傷つけることによって自分自身が傷つくことに耐えられない程に。
だが彼は徹底的に痛めつけられた。
肉体的に。
精神的に。
意外にも、
彼はタフであった。
破壊された端から再生していく肉体。
どんな責め苦にも破壊されない精神。
執拗に執拗に繰り返される拷問の果てに彼は見出す。
「個」を。
自分自身と言う「個」を。
生きたいと願う「個」を。
他者を傷つけ、奪い、喰らってでも生きたいと願う「個」を。
{/netabare}
あの作品との類似性について
{netabare}「寄生獣」のことである。
地球に君臨する万物の霊長たる人類
その人類の上位存在たるモノ(パラサイト・グール)
その上位存在に脅かされる人々の生活・・・
と設定はかなり類似している。
こういう上位存在との対比から人類を見つめ直すという辺りも似通っている。
1期しか観ていないので違いについて語るのは時期尚早であろう。
{/netabare}