「輪るピングドラム(TVアニメ動画)」

総合得点
83.4
感想・評価
2097
棚に入れた
10592
ランキング
325
★★★★☆ 3.8 (2097)
物語
3.8
作画
3.8
声優
3.6
音楽
3.9
キャラ
3.8

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ネタバレ

aucheidac さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

イマージーン!する私たちの生存戦略

あらすじ
一見幸せな暮らしを送る高倉家の3兄妹、冠葉、晶馬、陽毬だったが、陽毬は病で亡くなってしまう。妹の死を悲しむ兄2人の前で、しかし、突然にも陽毬は「生存戦略」の掛け声とともに生き返る。だが、生き返った陽毬の体はプリンセス・オブ・ザ・クリスタルなる、高慢ちきな謎の存在に乗っ取られていた。

生き返った妹の命と引き換えに、プリンセス・オブ・ザ・クリスタルから「ピングドラム」なるものを見つけ出すように指示される冠葉と晶馬は、最初の手がかりとして未来が書かれた謎の日記を持つ、荻野目苹果の素行を調査し始める。



他のレビューには、頭を真っ白にして何も考えずに視聴することを勧める内容が多いですが、あえてそういったトレンド(?)には逆らってみようと思います。
実際、このアニメは今まで見た中でもかなり色々と考えることを強いられる作品でした。
確かに、考えるけれどもどうしても一本筋が通らない、しっくりとくるところまでたどり着けない点が多くありますが、だからこそ面白いのだと個人的にはそう感じます。


僕が見ていて最も頭を悩ませたところ、というか、考えてしまったところ。
それは何度も繰り返し現れる数々のモチーフです。
代表的なところを挙げるなら、
・ペンギン
・りんご
・地下鉄、あるいは地下鉄の路線図
・95という数字
あたりでしょうか。他にもたくさんあると思いますがすぐ思いつくのはこの辺りです。
これらそれぞれがどういう意味を持っているのかまではいちいち書かない(書けない)ですが、日常的な、なんでもないようなものが繰り返し現れ続けることで、何かとても重要なことを教えてくれているように思います。


他にも意味がわからないと言った内容のレビューもよく見かけますが、多分そう感じるのは物語の真偽がはっきりしないところにあると思います。

幽霊を自称し登場する渡瀬眞悧や、死んでいる両親を幻視する冠葉、亡くなった姉の桃果の予言の日記を信じ込む苹果、などキャラクターたちの多くがその言動の真偽を非常に曖昧にしている。他にも「家族」が「家族」じゃなかったり、「家族」じゃないものが「家族」だったり。あるものがなくて、ないものがある。そういう矛盾が螺旋のように渦巻いて、ストーリーを取り巻いている印象を受けました。


ものすごくうがった考え方をしてしまえば、もしかしたらこの物語自体、ピングドラムである苹果の(桃果の)日記に書いてある創作なのではないか、亡くなった陽毬が望んでいた妄想なのではないかという気さえしてくるわけです。

簡単に言うと、一人一人のキャラクターに見えている世界がそれぞれに異なっているわけで、現実的か非現実的かという問題ではなく、その全てが一つ一つのリアルであるのだと思います。突拍子もない設定やモチーフも、実際にそこにあるかどうかではなく、この物語のキャラクター(たち)には「本当に」そういうふうに見えている。

例えば、時籠ゆりの幼い頃の父親との関係の回想では、東京タワーらしき建物が、巨大で重厚な彫刻になっていました。もちろんそんなものが「現実的ではない」ことは確かですが、しかし、ゆりにとってはそれは本物であって、抑圧的で恐怖の対象である父親そのもののシンボルであり、紛れもなく「現実」なのではないかと思うわけです。


先にたくさんのシンボルがあると書きましたが、このアニメではあらゆる物事がシンボルになりうると同時に、圧倒的な現実でもあるという二重性がある。このせいで、意味不明だ、難解だ、となってしまうわけですが、だからこそ面白く、魅力のある作品なのだと思います。

プリンセス・オブ・ザ・クリスタルの決め台詞を借りるならば、キャラクターの過去や感情、考え方、様々なモチーフについてあれこれと「イマージーン!」することで、このアニメを見て、その難解さを乗り越えるための我々の「生存戦略」が始まるのではないでしょうか。

投稿 : 2016/06/05
閲覧 : 530
サンキュー:

10

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